新訳『夜と霧』 [本]
先日書店であてもなく見ていましたら昔読んだ本が目に入りました。
名著の誉れ高い作品ですが、読んだのは社会人になってから先輩に勧められてだったと思います。
旧訳と並べて置いてあり、今回新訳があることを初めて知りました。
読んでみるとずいぶん読みやすい文章になっていて、優れた翻訳と思えました。
なるほど原著も新版が出ていたのですね。
著者は精神科医という科学者で知的レヴェルも高いのでここに記録された振舞いも、だからなのだろうとつい考えてしまうのですが、そうではなくて、中にも書かれているのですが、これだけの精神の高みを維持できるのはそういう立場にあってさえ稀有なことだと思わなくてはなりません。
収容所で何が行われたかは数々の出版物で知ることができますが、人が中でどういう意識を持ってどういう体験をしたのかを高いレヴェルで記録したものはこれに極まるといって良いでしょう。
今回読んでみて新たに気づいたのは収容所の中の生活をトーマス・マンの『魔の山』の療養所の生活に例えていることですが、なるほどと思いました。
著者が生き延びることができたのは精神科医であったことも大きな理由であるはずですし、多分人柄や中での振舞い(自分を失わなかったこと)も理由であるだろうと思えます。
そして幸運も。
明日は母の通院の日なので朝の更新はお休みします。