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戯曲『アルルの女』 [本]

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10年前に一度読んだのですが、最近ある演奏会のプログラムで紹介していたあらすじがちょっと違うように思えたので読み直してみました。


そのときの記事は




劇音楽はこちらで取り上げています。




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今回岩波文庫の旧版を入手しました。

前回は新版でした。


櫻田さんの訳は中学生の頃読んだ短編集『風車小屋だより』で馴染みがあります。


他の訳者のものもあります(手元の旺文社文庫は 大久保和郎 さん)が、櫻田さんの訳がいいなあと思います。

岩波文庫はもう絶版で、Amazon ではとんでもない価格で売っていたりします。



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登場人物は原作と戯曲では少し違いがあります。


短編小説では

 主人公ジャン

 父親エステーヴ親方

 母親(名前が触れられていない)

 訪れる男(名前が触れられていない)


戯曲では

 主人公フレデリ

 フレデリの祖父フランセ・ママイ(父親は15年前に他界している)

 母親はローズ・ママイ

 訪れてくる男は馬の番人ミチフィオ

その他に

 フレデリの弟ジャネ(大部分で「ばか」と呼ばれている。白痴と説明があるが今でいう知恵おくれか?)

 使用人で羊飼いのバルタザール

 フレデリの伯父マルク(母親の兄。船乗り)

 フレデリに想いを寄せるヴィヴェット(ルノーばあさんの孫)

 ヴィヴェットの祖母ルノーばあさん

 その他

となっています。


戯曲の方の大筋は


大きな農家の若者フレデリ(20歳)は3ヶ月前にアルルの闘牛場で知り合ったアルルの女と結婚したいと言い出し、祖父と母親、周囲の人たちは困っている。

母親はアルルにいる兄マルクに相手がどんな人物か見極めてくれるように頼む。


訪れてきたヴィヴェットはフレデリが結婚するらしいと聞き心中悲しむが表には出さない。

(でもみんなはこの子と一緒になってくれればと思っている)

母親の兄のマルクはアルルの女の家を訪ねるが酒を振る舞われてすっかり「いい人たちだ」と評価してしまうので、家族はやむをえず結婚を認めようかという話になる。

フレデリは晴れやかな顔。


そんなときミチフィオという男が祖父を訪ねてきて

 「お孫さんが結婚しようとしている相手は俺の情婦だったが、お孫さんと知り合ってからは女の家族からも疎まれている。

  でも今更他の男に嫁げると思っているのか。

  証拠の手紙もある。

  他の男には渡したくない」

と言う。

皆は衝撃を受け、手紙を預かってフレデリを説得する。


その後フレデリは思いを絶ったかのように振る舞う。

ヴィヴェットはフレデリの弟にも背中を押されてフレデリに探りを入れるが、ひどい事を言われて傷つきこの地を去ることにする。


フレデリはずっと表情が死んだよう。

フレデリが諦めきれていないことは母親は気づいている。

このままでは悪い事が起こるに違いないと思いフレデリに結婚を許すと告げる。

祖父は恥じ入って下を向く。

フレデリは内心喜ぶがみんなが絶望的な暗い顔をしているのを見て、あんな女は貰わないと言い出す。

そこにヴィヴェットが登場するとフレデリは「この子のような人がいいんです」と言い、ヴィヴェットに結婚を申し出る。

ヴィヴェットは涙する。


第三幕

聖エロアの祭りの日。家の前庭。

婚約の祝いやお祭りで場には喜びが溢れる。

皆が帰った頃ミチフィオが再び現れ、

 「アルルの女のところに泊まってきた。どうしても諦めきれないからあの女を攫って逃げる」

と告げる。

それを聞いてしまったフレデリは

 ミチフィオを殺し、アルルの女も殺す。一人では死なないぞ。

と言い出すが皆で止める。

遠くではお祭りのファランドールが聞こえる。


その晩。部屋の前。

母親は心配するがフレデリはあの男の顔を見て興奮しただけだと言うが、母親は勘づいている。

寝室の近くに寝るように弟に言いつけ、自分もフレデリの部屋の様子を窺っていたが静かになったので眠る。

しかしフレデリは明け方、ミチフィオがアルルの女を連れて逃げていく様子を見たように思い込み、発作的に蚕室のある上の階に駆け上がる。

母親が気づいて後を追うが、フレデリは扉にかんぬきをかけてしまう。

そして窓が開く音がし、重いものが落ちたような音がする。


こんな感じですが、『風車小屋だより』の方は男が登場するのも一度だけなどシンプルな筋書きでページ数も少ないです。

どちらにも ”アルルの女” は登場しません。


訳者の前書きによれば

作者がアルルに近いフォンヴィエイユの村に滞在中実際に起こった事件だそうです。

短編集として発表したのちヴォードヴィル座に依頼されて書かれました。

音楽はビゼー。初演は成功とは言えなかったそうですが、13年後にオデオン座で再演されて評価されました。

この本の出版(昭和16年)時点で2,500回以上上演されているそうです。


Wikipedia にもありますが、文字数が少ないのであまりよくわからないと思います。


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