よく取材されている:『航空自衛隊航空中央音楽隊ノート』シリーズ [本]
吹奏楽出身者としては最近の吹奏楽の隆盛は現役だった時代の想像を超えていて嬉しい限りなのですが、小説やアニメも当時は考えられなかったほど世に出ています。
しかし随分前に『楽隊のうさぎ』という小説を読んだところ特別良い印象はなかったので数々の作品が平積みになっていても遠目で見るのみだったのですが、先日東京オリンピックの記録映画を観たことで自衛隊の音楽隊について少し興味が湧いたところにこのシリーズが目に入りました。
著者の名前に馴染みはありませんし、表紙も趣味ではなかったのですが中をパラパラと拾い読みしてみて1巻目を手に取りました。
これは三冊目で完結編なのですが、読み始めてみると面白く、続けて三冊読みました。
著者は硬派の作品を世に出してきたそうなのですが、こちらは若い女性が主人公でかなりドジで鈍感という設定ですが、愛すべきキャラクターに設定されていて、音楽隊の同僚や先輩後輩もしっかりとした造形がされていてただのラブコメではありません。
自衛隊の音楽隊が今は音大出身者の進路の一つであることもこれを読んで知りましたり、自衛隊員としての訓練もこなさなければならないことや昇進しないと定年まで勤めることも出来ないことなど興味深く読みました。
音大出身者で占められているのなら演奏水準が高いのは当然ですね。
著者が楽器の経験がおありなのかどうかはわかりませんが、楽器や演奏に関わる部分では違和感のある描写はなく、経験がないのだとするとかなり綿密に取材をされたのだろうと思われます。
本番前や録音に臨む気持ちの描写もリアリティがあります。
それは例えば次のような部分でも感じられます。
練習量が足りなくてもダメ。やりすぎて、一番集中力があって気持ちが乗るタイミングを過ぎてしまってもダメ。ぴたりとハマると、本番で最高の演奏ができる。そのための、練習のさじ加減が難しい。(P.49)
全くその通りなんですよ。
あとがきによればこの作品で描かれた演奏会や録音は実際にあったものであるので、例えば CD ではこの作品に登場する曲目が聴けるのだそうです。
聴けるなら、と思ったのですが残念ながら応募期間は過ぎていました。
演奏会は今度の土曜日です。
どんな演奏会かと思ってちょっと調べましたら、曲目などはありませんでしたが入場無料ということはわかりました。
そうなのですね。
続きが読みたいと思ったのですが、三巻で完結のようです。
CD でも聴きましょうかね。