SSブログ

手稿譜の反映:KV331 [楽譜]

m20160217_4954.jpg

先日東大方面に行ったついでにアカデミアミュージックにも立ち寄ってみました。

クラシックの好きな人なら知らない人がいないであろうモーツァルトの「ピアノソナタ イ長調 KV331」(トルコ行進曲付)ですが、一部しか見つかっていなかった自筆譜に加えて新たに第1、第2楽章の一部が発見されたそうで、Henle の原点版もそれを反映したものが出版されたそうです。

短調だったところが実は長調だったなど、ちょっとびっくりの相違点が明らかになりました。


m20160217_4955.jpg

m20160217_4956.jpg

m20160217_4957.jpg

優雅なるモーツァルト

優雅なるモーツァルト

  • アーティスト: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
  • 出版社/メーカー: ALM RECORDS
  • 発売日: 2015/12/07
  • メディア: CD
この楽譜に依った初の録音がリリースされています。

従来の同社の「原典版」も誤っていたわけですが、その点は新たな版ではさらりとやり過ごしているようです。


m20160217_4949.jpg

こんなクリアファイルがありました。
丸ごとは掲載できませんが、鳥が描かれています。


m20160217_4950.jpg

きれいなイラストが描かれていて、4種類あります。


m20160217_4951.jpg

楽譜は Henle の出版物の中から抜粋したものが印刷されています。 


m20160217_4952.jpg

4枚セットで買うと 1,000円です。
プレゼントなどにも良いですね。






nice!(43)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

保存しなければ:「つばめが来る頃」 [楽譜]

l20160213_4772.jpg

予報通り気温が上がって本当に春のような日になりました。
ただ風が強くて、時折砂埃が飛びました。
明日も同じようなお天気らしいですが、あまり埃が飛ばなければ良いなと思います。

鳥たちの食べ物は本当に乏しいようで、マンリョウがかなり食われています。
丸ごと食われるものだけでなく、皮だけ食われているのが不思議です。
きれいに剥けるのでしょうか。


l20160213_4764.jpg

スイセンにも春の日が降り注ぎます。


l20160213_4769.jpg

l20160213_4767.jpg

tsubame_edited-1.jpg

さて以前この楽譜についてのお問い合わせをいただいたのですが、調べてみるとすでにヴィラスミュージックでは販売していないようで、サイトそのものも見つけにくくなっています。

楽譜は一昨年の暮れに演奏に使用した後どこかに潜っているのですが、このまま行方不明になる危険がありますのでピアノの方にお願いして伴奏用の譜面を一旦戻してもらいました。

Finale で半日かけて入力しました。
ピアノ譜はレイヤーを使い分けなければならず面倒です。

歌詞も入力して、ほぼ完全なバックアップができました。
表紙のイラストがないのが残念ですが、まあ仕方がありません。

市販されている楽譜は合唱用だけのようです。
森さんが録音に使用したこの楽譜、今では貴重品です。

申し訳ありませんが、もしご希望がありましてもこれを譜プリントアウトして差し上げることはできません。
理由は説明の必要はないと思いますが、販売することももちろんできません。

権利者の方から許可が出れば可能ですが、そんなことをするより権利者の方が正式に印刷して販売するのが筋道でしょうね。



明日はまた早く出かけるので朝の更新はお休みします。
午後は森さんのコンサートを聴きます。






nice!(28)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

「皇帝」は K か C か [楽譜]

h20160114_3629.jpg

近頃コンサートでは演奏者自身がマイクを持ってコミュニケーションをとるというスタイルが普通になったようです。

昨年の森さんや東京六人組でもそうでしたし、先日の弦楽四重奏でもそうでした。

 

そうした中で説明があったのがハイドンの「皇帝」です。

Wikipedhia にも

 「皇帝」という副題は第2楽章が「オーストリア国家及び皇帝を賛える歌」の変奏曲である。

 (第一楽章は)GEFDCという音型ではじまるが、これは、Gott erhalte Franz den Kaiser の頭文字となっている

とあります。



h20160114_3630.jpg


演奏会ではヴァイオリンにこの主題を弾かせてその説明をしていました。

Gott erhalte Franz den Kaiser は「神よ、皇帝フランツを守り給え」という意味だそうですが、

G E F D は良いとしても、最後は K のはず。

 

検索しても K は C を意味するとあるだけで、詳しく説明しているものはありません。

 

英語の kaiser は元々はドイツ語だそうで、さらに遡れば ユリウス・カエサル (Julius Caesar) にたどり着きます。

なので C でも良いということであろうと思います。

 

もしかすると元々は C を使っていたのかもしれません。

 

Bach も音名であってそれを主題にした曲があることは以前触れました。

A B C D E F G H をうまく組み合わせてそれらしい言葉にできればそれを使った主題ができるでしょうが、良い言葉、良いメロディーとなると難しいですね。

なお、 Bach は日本語にすると「小川」です。

シューベルトの「美しき水車小屋の娘」の第19曲は「水車職人と小川」(Der Müller und der Bach)ですね。

 




nice!(36)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

プーランク:六重奏曲 FP100 [楽譜]

k20151208_1579.jpg
iPhone6 Plus にて撮影。

今までプーランクにはあまり関心がなかったのですが、先ごろ聴いた 池田昭子クインテット の録音による「ノヴェレッテ」でおやと思いました。
フルートにとってのプーランクはソナタくらいでコンチェルトはないので関心が向くことが比較的少ないのも無理はないところではあります。
「ノヴェレッテ」は原曲はピアノ曲ですが、オペラに対するオペレッタのように "Novel" の小さなもの、つまり短編小説とでもいうような意味ですね。

予備知識なしで聴いた「ノヴェレッテ」は新鮮でした。
強く印象付けられたのはストラヴィンスキーを思わせるフレーズが幾つも出現することで、フランスの作曲家の作品としてはずいぶん異色だなという事でした。

今回調べてみると
 バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)による『春の祭典』(1913年)、『パラード』(1917年、台本:ジャン・コクトー、音楽:エリック・サティ、美術:パブロ・ピカソ)の初演を見て感嘆する。

 1923年にパリで行われたイーゴル・ストラヴィンスキーの『結婚』初演の際の4人のピアニストの一人に予定されていたが、プーランクは病気となり初演には関われなかった(ストラヴィンスキーとは1916年のパリの楽譜店で出会って以来の友人であった)。(Wikipedia)
とあり、強く影響されていることが伺われ、印象は間違いではなかったと確認できました。


k20151208_1578.jpg

そしてこの「六重奏曲」。
「東京六人組」で初めて聴いて強く興味を持ち、楽譜を取り寄せました。
届いてみると演奏用の譜面ではなくスコアでした。これは好都合です。

クラリネットは B♭管が指定されています。
「東京六人組」ではファゴットで演奏されていますが、指定はバソンです。
バソンが使われているのが「レ・ヴァン・フランセ」です。


k20151208_1580.jpg

3枚組の最新盤と以前の録音が収められている CD を取り寄せてみました。
新しい方は 2014年の録音で、古い方は 1998年。
メンバーも少し違いがあって新しい方はホルンがラドヴァン・ヴラトコヴィチ、古い方がアブ・コスターです。

古い方はまだ聴いていませんが新しい方と「東京六人組」ではずいぶん味わいに違いあると感じます。
大きな違いはまず録音と楽器のバランスにあります。

「レ・ヴァン・フランセ」はパユがリーダーであるかのようなバランスで録音されている印象ですが、「東京六人組」では全体が一つの楽器であるかのような響きで収録されています。
本来こうしたアンサンブルでは各楽器は対等であるはずです。
これは録音を担当したディレクターあるいはプロデューサーの考え方の違いなのかもしれません。

バソンとファゴットの音色の違いもとても興味深いです。

ホルンのヴラトコヴィチはもちろん巧いのですが、福川さんの伸び伸びとした力みのない演奏とヴェルヴェットのような音色に強く惹かれてしまいます。ミュートの鋭い音色も心地よく響きます。なんと美しいホルンでしょう。

アンサンブル全体としては男性のみ(みんなおじさん)だからかもしれませんが「レ・ヴァン・フランセ」はアグレッシヴという印象が強いです。ところどころ暴れん坊が顔を出すような印象もあります。悪戯っぽい印象もありますね。
狩猟民族の演奏ですね。

「東京六人組」はとてもうまくバランスが取られていて各楽器の音色も良く、良い意味で日本人のアンサンブルだなあと感じます。全員が若く、女性が主体であることも無関係ではないでしょう。
ピアノの録音はこちらの方が好きです。
フルートがもうちょっと目立っても良いのにとも感じるのですが、そうすると他の楽器も、ということになって、結局このバランスが良いというところに落ち着くのかもしれません。

一言で例えるなら「レ・ヴァン・フランセ」は洋菓子、「東京六人組」は和菓子ですね。
透明な葛で覆われて全体が調和のとれた外形で中に各楽器が透けて見える和菓子と、デコレーションでところどころ飾り立てられているケーキ。


ルーセルの「ディヴェルティスマン」Op.6 も両方に収められています。


最初に触れましたようにプーランクの「ノヴェレッテ」は 池田昭子クインテット で木管五重奏版が聴けます。
録音したマイスターミュージックは管楽器の録音がが多く工藤さんも最近はこちらで録音されています。
マイスターの資格を持つ唯一の日本人の方のレーベルですが、以前も書きましたようにここではワンポイントで録音されています。
それが良い場合もちろん多くあるのですが、多人数の録音にかけては Octavia Records の江崎さんに強みがあるという印象です。


プーランクの「フルートソナタ」 FP164 が「レ・ヴァン・フランセ」の旧録にあります。
フルートは パユ でなくて マテュー・デュフール ですが、じっくり聴いてみようと思います。






nice!(43)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

第二楽章の主題:チャイコフスキー ピアノ協奏曲 第1番 [楽譜]

k20151022_8626.jpg

 

クラシックの中でも最もよく知られている曲のひとつ、Tchaikovsky のピアノ協奏曲第一番です。

以前から誤りではないかと考えられてきたのが第二楽章の最初の提示です。

 

 

k20151022_8621.jpg

 

これがピアノの出だしですが、これ以降他の楽器に出現する音形は皆同じです。

 

 

k20151022_8620.jpg

 

ところがフルートで最初に提示される音形はこうなっています。

この最初の小節の最後の八分音符が書き間違いで、 F ではなくピアノなどと同じ B♭ではないかというので、実際にそのように直して演奏されることがありました。

 

作曲されたのが1874年から1875年、初演が1875年10月です。

 

この作品はその後二回の改訂を経ています。

Wikipedia によれば 1879年の夏および1888年の12月 とのことですが、そのときに間違ったのではないかとも考える向きもあります。

 

 

k20151022_8624.jpg

 

しかし今回入手したこのフルスコアはオリジナルのスコアという大変珍しいものです。

このスコアでは問題のフルートの箇所は現在私たちが馴染んでいる版と同じです。

 

チャイコフスキーがなぜこう書いたのかは謎ですが、書き間違いでないということはほぼ確かと考えなければならないでしょう。

 

 

最初の版と現在の版がどう違うのかを比較するのは興味深いですが、すぐ分かるのは冒頭のピアノです。

 

 

k20151022_8623.jpg

 

ピアノを弾かれる方はアルペジオであることと3拍目の音域が低いことに気付かれるでしょう。

 

録音はラザール・ベルマンがテミルカーノフと1986年に行っているようですが、CD は見つかりません。

録音はないようですが小山実稚恵さんが現在の版との比較演奏をされたことがあるようです。

 

この DOVER のスコアは下部に鉛筆による書き込みなどについてコメントされていて、読み込んでいくと面白そうです。

時間のあるときにゆっくり比べてみたいと思います。

 

 

 

 

にほんブログ村 クラシックブログ フルートへ
にほんブログ村



nice!(34)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

グノー:「私は夢に生きたい」 [楽譜]

k20151021_8616.jpg

 

先日 CD を手に入れたばかりですが、楽譜も見つけましたので入手しました。

アカデミア・ミュージックでは全曲の楽譜はあったのですが、一曲だけのピースはありませんでした。

 

 

k20151021_8617.jpg

 

ソプラノの譜面ですが、フルートでそのままできます。

と言っても声楽特有の音形や装飾などはなぞらない方が良い場合もあります。

オクターブ上げた方が効果が上がる場合もあります。

 

 

CD を聴きながら一通り目を通しました。

短めで親しみやすい旋律なので 12月の本番にも良いのではないかと思います。

 

ピアノがちょっと厄介そうですが、今回は M社長が伴奏をしてくださることになりそうなので大丈夫ではないかと思います。

 

 

k20151021_8618.jpg

 

印刷がちょっと汚いのが難ですが。

 

 PHOTOCOPIE

 INTERDITE

 

と最初のページの左上に印刷してあります。

コピー禁止、ですね。

 

「禁じられた遊び」の原題は "Jeux interdits" 。

直訳なのですね。

 

ラヴェルの「水の戯れ」は "Jeux d'eau"。

これも直訳ですね。





にほんブログ村 クラシックブログ フルートへ
にほんブログ村



nice!(31)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

ストラヴィンスキーの "新曲" [楽譜]

もう最新の情報ではなくなりましたが、最近知りました。
1908年に作曲され、一度演奏されたのみで行方不明になっていたストラヴィンスキーの楽譜が発見されたそうです。
出世作となった「火の鳥」(1910年)より前の作品で、ストラヴィンスキー自身は「最高傑作」としていたそうですが、後年、どういう内容だったかは思い出せないと言っていたそうです。
k20151005_7905.jpg
k20151005_7907.jpg
こちらはもちろんその曲ではありませんが、ストラヴィンスキー自身が指揮した録音です。
「火の鳥」は改訂されたばかりの版が使われています。

今回発見された曲、先日のモーツァルトのようにあまり時間をおかずに録音が出るか出版されるかもしれません。演奏時間は12分ほどとのことです。


ストラヴィンスキー : バレエ音楽 「春の祭典」 (1913年初版) | 「ペトルーシュカ」 (1911年初版) (Stravinsky : Le Sacre Du Printemps | Petrouchka / Les Siecles | Francois-Xavier Roth) [輸入盤・日本語解説付]

ストラヴィンスキー : バレエ音楽 「春の祭典」 (1913年初版) | 「ペトルーシュカ」 (1911年初版) (Stravinsky : Le Sacre Du Printemps | Petrouchka / Les Siecles | Francois-Xavier Roth) [輸入盤・日本語解説付]

  • アーティスト: レ・シエクル,フランソワ=グザヴィエ・ロト,ストラヴィンスキー
  • 出版社/メーカー: Musicales Actes Sud / King International
  • 発売日: 2014/10/20
  • メディア: CD

こちらは初演当時の楽器(1900年頃作られたもの)を使用した録音だそうです。
冒頭からして1900年ビュッフェ・クランポン製のバソンだそうで、興味深いです。
フルートはモイーズだったはずで、同じ楽器を使っているかどうかも興味津々です。

まあ、得てしてこの手の録音は企画第一になりがちなので演奏の質はそれほど期待しないほうが良いと思いますし、そもそも現代の楽器、大編成の響きに慣れてしまっている私達の耳には物足りなく響くのでは、という懸念はあります。

でもちょっと聴いてみたくはあります。


 

にほんブログ村 クラシックブログ フルートへ
にほんブログ村



nice!(35)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

古い曲集二冊 [楽譜]

k20151002_7658.jpg

 

先日相原さんのところでランパルの話になった時、吉田雅夫さんが自身の編曲になる「さくら変奏曲」を、これは難しいよと言ったところランパルは初見でいとも簡単に吹いてしまったというエピソードを聞きました。

 

そういえば昔買った吉田雅夫さんの曲集にあったなと思い引っ張り出してみました。

 

 

k20151002_7659.jpg

 

今の若い人ならやっぱり苦労せずに吹いてしまうだろうなあと思うのです。

 

 

k20151002_7660.jpg

 

昭和37年。

 

 

k20151002_7661.jpg

 

「フルートの名曲」も買いました。

 

 

k20151002_7662.jpg

 

買ったのは多分昭和45年頃でしょう。

その頃はフルートを吹くなど思いも寄らず、多分オクターブを上げ下げしながらリコーダーで吹いていました。

 

 

k20151002_7663.jpg

 

多分同じ頃こんな曲集も買いました。

 

 

k20151002_7667.jpg

 

吉田さんの曲集はピアノ伴奏譜付きですが、こちらはフルートの譜面だけです。

 

 

k20151002_7668.jpg

 

昭和45年。

こちらには証紙は貼られていませんね。

 

 

とても懐かしいです。

 

 

 

明日は母の通院の日なので朝の更新はお休みします。

 

 

 

 

 

にほんブログ村 クラシックブログ フルートへ
にほんブログ村



『魔笛』の1年前に上演された演目 [楽譜]

k20150917_6737.jpg

 

先日『魔笛』のフルート四重奏曲編曲版を取り上げましたが、いろいろ調べる過程で同じシカネーダー一座がその前に上演した演目にもモーツァルトが関わっていたことを初めて知りました。

 

その全曲録音がリリースされていましたが、もう既に廃盤で中古は Amazon でかなり高価で売られています。

 

しかし幸い安く手に入るものを見つけたので取り寄せてみました。

 

ブックレットを読むと、新たに発見された筆写譜にモーツァルトの名が発見された、その興奮が伝わるかのようです。

 

そのうち一曲はモーツァルトの手になるものではないかと以前から言われていたようですが、筆写譜の発見でそれが確定しただけでなく、そのほかにモーツァルトの手になるものがあったというのです。

 

 

歌劇《賢者の石》全曲

マーティン・パールマン/ボストン・バロック

録音 1998年11月 マサチューセッツ  99 ・12・22 (99・8・1)

 

 

ブックレットより抜粋

 

 信憑性に関する議論が決着したわけではないが、筆写譜への記入は歴史的事実であり、その信頼性は高いと思われる。(少なくとも、疑うに足る充分な根拠はない)。いずれにせよ、この発見を通じて明らかになった、重要な史実がある。それは、モーツァルトが晩年にシカネーダーの一座と密接な協力作業を行っていたこと、そして《魔笛》は、孤高の傑作ではなく、シカネーダーのプロデュースするメルヒェン・オペラ・シリーズの一作品にほかならなかった、ということである。《賢者の石》が《魔笛》と相似した、時には瓜ふたつの先行作品であることは、「ディスカッション」と題された付録のCDを聴けば、よくわかる。


 パールマンの復元演奏は、《賢者の石》が意外なほどレベルの高い、われわれにも楽しめる作品であることを明らかにしてくれた。私にとってなにより印象的なのは、これほどのレベルの作品を作曲する能力を、シカネーダーの一座の人々が備えていたことである。こうしたレベルの指揮者や歌手たちが、《魔笛》の初演にも大挙して参加し、晩年のモーツァルトを支えた。モーツァルト最後期の簡素で民衆的な様式は、おそらく、彼らへの友情と共感に発するものであったのだろう。

磯山 雅

 

 

k20150917_6739.jpg

 

指揮者のノート

   その後1991年、ソビエト軍が第二次大戦の末期にドイツから持ち去った手書き楽譜コレクションがロシアから返還されとき、ひとつの新しい手書き楽譜が参照できるようになった。この手書き楽譜を調査したバック教授は、オペラ中のほとんどすべてのナンバーに、作曲者の名前が記されていることを発見したのである。その名前は、楽譜のコピイストたちのひとりによって書かれたもののように思われた。

 大方の驚きを誘ったのは、「モーツァルト作」という言葉が、二重唱1曲だけではなく、第2幕のフィナーレの、思ってもみなかった2つの部分にも出てきたことである。このことは当然ながら、音楽学の世界に、モーツァルトが本当にこれら3つの部分の作曲者であるか否か、という議論と論争を引き起こした。

   筆跡や紙の鑑定を根拠とし、詳しい音楽的・歴足的論証を付した複数の学術論文によって、モーツァルトのこのオペラに対する関与は、立証されたとみてよい。しかし彼の貢献がじっさいどの範囲にまで及んでいたのかを明らかにするためには、もう少し議論を煮詰める必要があるだろう。

 

 とはいえ、オペラ《賢者の石》の意義は、モーツァルトの名を冠した3つの部分をはるかに超えている。オペラの全体が《魔笛》と密接に結びついており、この傑作に、新しい光を投げかけるのである。両作品が、同じメルヒェン・オペラの系列に属しているからばかりではない。《賢者の石》が《魔笛》に与えた音楽的影響はひとつの啓示であって、モーツァルトの作曲プロセスに分け入るための、貴重な一歩を可能にしてくれるのである。ことは、純音楽的なことにとどまらない。このオペラは、最後から2年目という困難な時期にモーツァルトがどんな生活をしていたのかの一端を、明るみに出す助けとなる。私たちはモーツァルトを一匹狼の天才とみなしがちであるが、じっさいには彼は、作曲仲間のサークルで、共同作業をしていた。こうした新しいモーツァルト像を獲得するのは、なんと魅力的なことであろう。

 (マーチン・パールマン、 磯山 雅 訳)

〔ブックレットより〕

 

 

k20150917_6735.jpg

 

しかしこちらの書籍を読むと、モーツァルトの真筆であるかという重要な点に関してはまだ疑問の余地があると現在では考えられているようです。

 

『モーツァルト』西川 尚生

音楽之友社 2005年10月10日 第一刷

 

 《賢者の石》は《魔笛》と同じシカネーダー一座が、《魔笛》のおよそ一年前に初演したジングシュピールであり、モーツァルトがその中の二重唱曲(K625/592a)の作曲に協力したことは、従来から知られていた。ところが、1996年にハンブルクの国立図書館で《賢者の石》の新たな筆写総譜が発見されたことで、事情は変わってきた。この楽譜には、件の二重唱曲だけでなく、他の二曲の二重唱曲(第二幕フィナーレの《ニャオ!ニャオ!》と《行け、哀れな青年よ》)にも、作曲者としてモーツァルトの名が記されていたのである。またその他の作曲者名がいくつかの楽曲に書かれており、そこから《賢者の石》が複数の人物による合作オペラであり、モーツァルトのほか、少なくとも四人のシカネーダー一座のメンバーが作曲にかかわった可能性が出てきた。この四人とは、座長シカネーダー、ベネディクト・シャック、フランツ・クサヴァー・ゲルル(1764 - 1827)、ヨハン・バプティスト・ヘンネベルク(1768 - 1822)である。

 発見者であるD・バックは新たに確認された二曲の二重唱曲をモーツァルトの真作と断定し、この「未知の作品の発見」は1997年の発表と同時にセンセーションをまき起こしたが、残念ながら、モーツァルト学者たち(とくに手稿譜研究の専門家たち)は二曲の真正性について、懐疑的であるようだ。たとえば、ヴィーンの写譜師研究の第一人者エッジは、問題のハンブルク筆写譜がモーツァルト没後間もない1790年代半ばに、シカネーダー一座のメンバーだったカスパール・ヴァイスの写譜工房で作成され、ヴァイス自身が写譜に加わった「由緒正しい」楽譜であることを認めつつも、そこに書かれた作曲者名は信用に足るものではない、と述べている。たしかに、この楽譜には従来から知られていた二重唱曲(K625/592a)に作曲者としてモーツァルトの名が書かれてはいるが、生涯編で述べたように、この曲は厳密にいえばモーツァルトの真作ではなく、モーツァルトがオーケストレーションを担当した作品(もしくは一部を作曲した作品)にすぎない。おそらく旋律を作曲したのはベネディクト・シャックであるが、その点については、楽譜には何も書かれていないのである。またこの楽譜のなかに、作曲者名が書かれていない楽曲が多い点も不自然であろう。もし写譜師が作曲者名のたしかな情報をもっていたなら、すべての曲に作曲者名が書かれたはずだからである。一部の曲にしか作曲者名が書いていないということは、それらが信頼のおけない資料や伝聞に基づいたものであることを示唆しているといえよう。要するに、二曲の二重唱曲がまったくの偽作か、K625/592aと同様、モーツァルトがオーケストレーションのみを担当した作品である可能性も、じゅうぶんに考えられるのである。

 このように二重唱曲の真正性は不透明であるが、この「《賢者の石》問題」でより重要なのは、《賢者の石》が翌年の《魔笛》ときわめて似かよった作品だということであろう。両曲ともクリストフ・マルティン・ヴィーラントが編んだメルヒェン集『ジンニスタン、あるいは妖精・魔鬼譚精選』から題材をとり、シカネーダーが台本を書いたお伽話オペラないし魔法オペラであり、登場人物の設定にも共通点が多い。

 

 ここ数十年の間、《魔笛》はもっぱらフリーメイソン・オペラとして解釈されてきたが、《賢者の石》の発見をきっかけにして、近年はむしろ、《魔笛》をヴィーン民衆劇のお伽話オペラの系譜の中でとらえようとする傾向が、強まっているように思われる。

( P.217)

 

ただここでは

「まったくの偽作」か「オーケストレーションのみを担当した可能性もじゅうぶんに考えられるのである」

としていて、慎重な表現をとっています。

 

ブックレットでは

   筆跡や紙の鑑定を根拠とし、詳しい音楽的・歴足的論証を付した複数の学術論文によって、モーツァルトのこのオペラに対する関与は、立証されたとみてよい。

としていましたが、この点についてはこの本では詳しく述べられていません。

 

 

なお、当初から知られていた二重唱の《ニャオ!ニャオ!》というのは、一人が魔法で猫の姿にされてしまって鳴き声でデュエットするというのですから、当時相当人気があったであろうことは想像できます。

 

『魔笛』は当時大変な人気で、あらゆる編曲が出現して街中が魔笛の中の曲でいっぱいだったそうです。

同じネタ本から三つの台本が作られたそうですが、最初のものについてはどうかわかりませんが二作目以降は大ヒットとメガヒットといったところだったのでしょう。

 

 

どうであるかという点については素人の手には余りますが、あったらいいなとか発見されてほしいという気持ちはモーツァルトに関わる人全てが持っている気持ちでしょうね。

 

 

明日は早く出るので朝の更新はお休みします。

 

 

 

 

 

にほんブログ村 クラシックブログ フルートへ
にほんブログ村



nice!(22)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

貴重なパンフレットも [楽譜]

k20150917_6733.jpg

 

古書店を巡るということはあまりしませんが、昔はぶらぶら歩いたり新聞広告を見て問い合わせしたりすることはありました。

 

古本に限りませんが、お目当てのもの以外を見るのも楽しみの一つなのです。

 

現物を見て買いたいのですが、最近は Amazon であったり古書店のネットワークあたりで探すことが殆どです。

 

そんな中先日購入したジュリアス・ベーカーの初来日のプログラムはたまたま検索で見つけたのですが、その書店は実店舗はなくてネットのみとのことでした。

 

 

そちらから昨日カタログが送られてきました。

書籍(音楽関係が多い)や楽譜(フルート用の作品もあり)の他演奏会プログラムやレコードまで大量の商品が掲載されています。

演奏会プログラムではベルリン・フィルの初来日のものや辻久子、巌本真理、ミッシャ・エルマン、ダビッド・オイストラフ、井口基成、サンソン・フランソワ、レフ・オボーリン、ピアティゴルスキー、アイザック・スターン、カラヤンとN響の演奏会、「夕鶴」初演、安川加寿子、諏訪根自子、三浦環、セゴヴィア、ラフマニノフ、ジンバリスト、クライスラー、ルービンシュタイン、ヴァン・クライバーンなどなど、とても書ききれませんが、目も眩むような名前が、それも初来日の演奏会のプログラムなどが宝の山のように並んでいます。

 

その中にあるフルーティストの初来日の演奏会のものを見つけました。

HP には掲載されていませんが、最近売れたものは SOLD OUT と表示されて掲載されているのに、情報が出てきません。

カタログは最新版なのでまだ HP に載せていないのかもしれません。

メールで問い合わせしてみました。

 

購入できましたら、またご紹介します。

 

 

 

 

にほんブログ村 クラシックブログ フルートへ
にほんブログ村



この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。