歌劇『タンホイザー』:ドレスデン版 [CD]
ワーグナーの洗礼を受けたのは高校時代でしたね。
序曲を演奏しました。オケではありませんが。
レコードは確かカラヤンの廉価盤(セラフィム。EMI の廉価レーベル)でしたね。
フィルハーモニア管だったと思います。
序曲集でしたが、主要な曲は収録されていて、当時はそれらにどっぷりと漬かっていたものでした。
しかし後年カラヤンとベルリン・フィルの録音(EMI)を聴きますとこのタンホイザーだけが聴き慣れたものと違うのでした。
今はこの録音はワーナーレーベルになっているようですが、先日の新聞記事によりますと SONY が EMI を傘下に収めたそうですので現在 EMI レーベルで発売されているものは SONY レーベルから販売されるかもしれません。
正式な名称は『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』(Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg)ですが、その違和感は版の違いによるものであることが解説を読んでわかったのでした。
フィルハーモニア管での録音はドレスデン盤、ベルリン・フィルによるものはパリ版と呼ばれます。
カラヤンはパリ版を好んだようです。
Wikipedia から引用しますと
■1845年のドレスデン初演では
不評を買った
ので
上演後早速改訂に取りかかり、1847年に書き直した。
この第2稿が今日「ドレスデン版」として上演されるものである。
■1859年にパリを再訪した際、ナポレオン3世から『タンホイザー』上演の勅命が降りた
ので
台本をフランス語に訳
し、
音楽にも改訂を施した。
主な改訂内容は、第1幕冒頭のヴェーヌスベルクの部分を改訂して「バッカナール」と称するバレエ音楽をつけ加えたこと、および第2幕の歌合戦の場面からヴァルターのアリアを削除したことである。
(中略)
この際に使用された版が狭義の意味での「パリ版」であるが、これは今日ではほとんど演奏されない。
■1875年のウィーン上演に際しては、序曲から切れ目なしに第1幕のバッカナールへ移行する形(序曲の289小節からバッカナールに入る)をとるようにした。
これが今日、いわゆる「パリ版」として定着しているものである。厳密にはこれは「ウィーン版」と称されるべきで、実際に新全集版では「ウィーン版」として先の「パリ版」と区別が行われている。
カラヤンとベルリン・フィル盤ではこのパリ版は
Tannhäuser And The Contest Of Song On The Wartburg:
歌劇《タンホイザー》: バッカナールとヴェヌスベルクの音楽
と表記されています。
しかしカラヤンの “ドレスデン版” を聴きたいという人は多いようで、ネットでもそれがないかと探している人を見かけます。
私もそうなのですが、いろいろ探してみてようやく見つけたのが今回の CD でした。
レーベルは EMI で、カラヤンが EMI に残した録音全曲をまとめた(リマスターも施された) CD 全集の中の一枚でした。
ブックレットはワンセットに一冊しか付属しないはずですからこれにはないので録音時期などのデータはわからないのですが、少し古い時期かなと思われます。マスターテープのものと思われるヒスノイズも目立ちます。
よく知られた曲が収録されていますが、「ワルキューレ」がないですね。
懐かしいスコアを引っ張り出します。
ご存知の方には説明の必要はありませんが、この曲はトロンボーン奏者にとっては晴れ舞台ですね。
執拗な弦の音型の上に鳴り響くトロンボーンは吹きやすい音域で聴く人にも演奏する人にも精神を浄化するとでも言いたい爽快感(カタルシス)、達成感とでもいうようなものがあります。
ドレスデン版の最後の盛り上がりが一層そうした印象をもたらします。
だからドレスデン版を聴きたいのです。
楽器編成はそれほど複雑ではなく和声も同様ですが、スコアを読みながら聴くとオーケストレーションやシンプルな音の組み合わせがもたらす響きがどうしてこんなにも素晴らしいのか畏敬の念に打たれるといっても良いほどです。
ワーグナーが30歳で作曲に取り掛かり、32歳で完成されたこの曲。
ヒットラーがワーグナーを好んだことはよく知られていてそれゆえに今でもワーグナーの音楽を嫌悪する人たちも存在します。
「ワルキューレの騎行」は映画『地獄の黙示録』に使われましたのでご存知の方は多いはずですが、実に効果的な使い方でした。
『タンホイザー』のこの高揚感や戦闘をイメージさせる「ワルキューレ」は確かにヒットラーが好みそうかなとは思えます。
待望のセカンドアルバム:東京六人組 [CD]
最近よく借りる練習場所である音楽室には小さなグランドピアノがあります。
調律が必要であることは先日取り上げましたが、スタッフの方に伝えておいたところ、一月に調律が予定されていると教えてくれました。
まあ私はピアノはたまにいじるだけなので別に良いのですが、先日ふたコマ借りられた時に久しぶりに楽譜を置いて弾いてみました。
といっても正式に習ったことはないので人に聴かせられるようなものではないのですが、若い頃自己流で弾けるようになった曲もあります。
しかし、もう指がすっかり忘れています。
すっかり忘れています。
難しい曲は飛ばすのですが、こうして普段弾かない楽器を弾いていると、初めて楽器というものに触れた頃の新鮮な感覚が蘇ってきます。
管楽器や弦楽器と違って叩けば一応まともな音がするピアノ。
自分の指先から聞き覚えのある “音楽” が生まれることの喜びは今まで曲がりなりにも楽器を続けているその原点だなあと改めて感じました。
さて退院したその日に立ち寄った山野楽器で CD を見ていますと、待っていた新譜が並んでいました。
最初の CD を聴いて実演を聞きに行くことになった「東京六人組」。
市川で聴いたその演奏は CD そのままではありませんが、堪能できました。
二枚目の発売に先立って既に演奏会は開かれていますが、また是非聴きたいものだと思っています。
編曲の妙も聴きものです。
じっくり聴けるのは車の中ですので、これから iPhone に収めて明日から聴くことにします。
上野由恵さん新譜 [CD]
muramatsu に行くと CD のコーナーもチェックするのですが、「東京六人組」の上野さんの新譜が並んでいました。
曲目は馴染みのあるものが多いですが、「パリの散歩道」と「白い恋人たち」がちょっと珍しいでしょうか。
「パリの散歩道」は作曲者 ゲイリー・ムーア のライヴアルバムからのバージョンをフィギュアスケートの羽生選手が使用したそうです。
「白い恋人たち」は フランシス・レイ のアコーディオンの演奏のイメージが強いのでシンプルなメロディーをフルートでどう聴かせるのかがポイントでしょう。アレンジ次第ですね。
コルトーの前にコルトーなく、コルトーの後にコルトーなし [CD]
必要があって図書館で何枚かショパンの CD を借りました。
コルトーはメインではなかったのですが、じっくり聴いたことがなかったので借りてみました。
コルトー、ティボー、カザルスといえば最高のトリオです。
ジャック・ティボー、はマルグリット・ロンとともに創設(1943年)したロン=ティボー国際コンクール(ヴァイオリンとピアノだけ)でも有名ですし、アルフレッド・コルトーはオーギュスト・マンジョと共にエコール・ノルマル音楽院を設立しています。
エコール・ノルマルは工藤さんが教えている音楽院としてフルート吹きにはおなじみです。
この CD は SP からの復刻ですのでスクラッチノイズはたくさん入っています。
しかしこれを聴き始めてワルツ第1番が進んでいくと、まるで古い演奏という感じがしなくてこうあってほしいというショパンのワルツに対して持っているイメージ通りに演奏されていることに深い驚きを覚えました。
ポリーニのような完璧な技巧を持っているわけではありませんが、SP でもわかるそのダイナミクスの変化とタッチの変化による表情はまさに歌です。
心情が伝わる演奏というのはこういう演奏をいうのです。
評価しない向きにはこんなにルバートをきかせた演奏はショパンではないと言われているようですが、先日読んだ音楽家の病気を取り上げた本からも伺えるように、ショパンは決して楽譜どおりではなかったようなのです。
楽譜は不完全な手段ですのでもしコルトーが演奏したスタイルをそのまま記そうとしたら極めて演奏しづらいものになってしまうはずです。
演奏が再現芸術である所以ですし、まさに才能が現れる作業でもあります。
この「音楽」を聴いてしまうと、きっちり楽譜通りに弾いたと思われる演奏がつまらなく思えてしまいます。
Wikipedia には弟子の名前として ディヌ・リパッティ、クララ・ハスキル、遠山慶子、エリック・ハイドシェックの名が挙げられていますが、なるほどと思える顔ぶれです。
スタイルは違いますがこれにベネデッティ=ミケランジェリ、リヒテル、ポリーニを加えれば評価するピアニストが揃ってしまいます。
遠山さんは聴いたことがないので今度聴いてみようかと思います。
今までコルートーをじっくり聴かなかったことでずいぶん時間を無駄にしてしまったように思えてきました。
ショパン : ワルツ集&バラード集(グランドマスター・シリーズ・エクストラ -GR編-)
- アーティスト: コルトー(アルフレッド),ショパン
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2001/02/21
- メディア: CD
次は他の曲も聴いてみましょう。
でも、バラードやポロネーズは今の所ポリーニから離れられません。
これが原点:J.-P. Rampal '75 [CD]
午前中ははっきりしないお天気で降ったり止んだりでした。
練習場所の花も雨に打たれたようです。
こちらは別の場所のランタナです。
我が家のランタナもこの色だったのですが、変わってしまいました。
こんな色のもあります。
ハイビスカスも我が家のとは少し違うようです。
さて帰りにショッピングセンターの CD 店に立ち寄ってみました。
ここではあまり買うことはないのですが、廉価版の中にランパルの古い録音があったので懐かしくなり買ってみました。
昭和五十年の録音ですね。
昔 LP で買ってよく聴いたものです。
同じような内容で企画ものの LP も出ていました。
矢代 秋雄さんの編曲した曲集も大切にしていました。
久しぶりに聴きましたが、やっぱりこれだなと思いました。
圧倒的な鳴り、素晴らしい音色。
ランパルは金の Louis Lot を ’80年のマリナーとの録音を最後にしまいこんでしまいます。
初来日の演奏会のプログラムにも ヘインズとロットを持ってきていると書いてありますので、この時代はまだ使っているはずです。
私たちが何より魅入られたのはその「音楽」でした。
この表現、ひとつひとつのフレーズに感情が豊かに表現されています。
最近先生に言われて少し吹き方を変えました。
先日は山野楽器の Flute World で象牙の頭部管を吹いて、それがまだ不十分だったと痛感しました。
この演奏を忘れずにこれからも精進したいと思います。
帰宅するとホトトギスが開いていました。
工藤さんもいよいよ Bach の無伴奏チェロ [CD]
最近あまり CD を買っていないのですが、山野楽器に行ったところ新譜のコーナーにこれが並んでいました。
工藤さんは今までにも無伴奏曲を録音されていますが、いよいよ大曲になって来ました。
マイゼンの楽譜にもありました通りフルートの無伴奏パルティータとの関連も指摘されていますが、多分それは正しいのでしょう。
次に4番以降がリリースされるはずです。
まだ聴いていませんが、音質にも期待できそうです。
録音場所を見てちょっとびっくりです。
旭市 館山市 の南総文化会館のホールのようです。
使用楽器は Haynes の 14k, #3000 と YAMAHA の18k の Bijou とあります。
どちらだろうかと考えながら聴くのも興味深いですね。
バロックヴァイオリンとハープシコード [CD]
次の日曜に伊藤ハープシコード工房さんで恒例の演奏会が行われます。
バロックヴァイオリンとハープシコードでバッハのヴァイオリンソナタ演奏会が企画され、その前半3曲が今回演奏されます。
第一番 ロ短調 BWV1014、第二番 イ長調 BWV1015、第三番 ホ長調 BWV1006(無伴奏パルティータ)の予定です。
演奏はヴバロックヴァイオリンの宮崎蓉子さんとハープシコードの大村千秋さんです。
原曲を聴こう [CD]
アルルの女のメヌエットといえばフルートの曲では最もよく知られていると言って良いと思います。
この曲に憧れてフルートを始める人は多いでしょう。
『アルルの女』の第二組曲に入っていますが、ビゼーが編んだのは第一組曲で、第二組曲は友人のギローが編み、その時ビゼーの『美しきパースの娘』から持ってきたというところまでは割合知られていると思います。
しかし『美しきパースの娘』は国内では CD は出ていないようで、やっと探したのが EMI の録音です。
指揮はジョルジュ・プレートル。
主要なキャストはジューン・アンダーソン(1952 - )、アルフレード・クラウス(1927 - 1999)、ジノ・キリコ(1955 - )、ジョゼ・ヴァン・ダム(1940 - )。
録音は良く、クラウスの歌唱はとても素晴らしいですね。
以前も取り上げましたが、「アルルの女」はオペラではなく劇なのでその音楽はいわゆる劇伴です。
その録音も多くはありませんが出ていて、このホグウッドあたりが比較的知られているのではないかと思います。
この CD を慌てて買ってしまうと「メヌエット」は収録されていませんのでご注意ください。
『美しきパースの娘』の第三幕の4曲目の二重唱が「メヌエット」の原曲です。
Wikipedia には第二幕とありますが、誤りです。
自分用にそれらをまとめた CD を作ります。
ついでに「ハバネラ」の原曲も入れます。
フルート吹きが聴きたくなる CD の出来上がりです。
↑この CD はとんでもないお値段になっているので今はちょっと買えませんね。
ボローニャの音 [CD]
- アーティスト: ペンニーノ,ファルヴォ,タリアフェッリ,ラマ,マリオ,クルティス,カプア,カルディロ,デンツァ,トスティ
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2010/09/22
- メディア: CD
格が違う:東京六人組 [CD]
聴きました。
アンサンブルの名前は「フランス六人組」から取っているそうです。
なるほど。
でも、ロシアにしろフランスにしろあちらは皆作曲家の集団です。
他に何か、と思ってしまいますが、まあ、しょうがないですね。
さて、聴いた印象です。
いやあ、これは素晴らしいですね。
曲目もスリリングで手に汗握るというと大げさですが、どれとは言えませんが最近聴いた五重奏とは格が違うという印象です。
アンサンブルとしての完成度が素晴らしく、心おきなく鑑賞できると言えるレヴェルです。
選曲も良いです。
その五重奏でもの足りなく感じていた点が全くありません。
五重奏の方は耳に馴染みのある曲が揃っていますし、プーランクのノヴェレッテなどとても面白くて良いのですが、総合的にこちらの方が上と言わざるを得ません。
各々の音色も技量も素晴らしく、難曲をいとも簡単にこなしているように聴かせます。
特筆すべきは N響の福川さんですね。
ブックレットやジャケットの写真を見ると、なんとベルが木製です。
検索してみると楽器はアレキサンダー1103MBLHGで、なんと楽器のできる宮大工さんに作ってもらったのだそうです。
福川さんはソロアルバムを二枚出されているそうですが、ピアノはこのアンサンブルのメンバーでもある三浦友理枝さん
クラリネットは音色に限って言えば私の好みとは違うのですが、検索してみるとビュッフェ・クランポンの RC であるようです。
私の好みはライスター(使用楽器はヴーリッツァー)なので、これは仕方がないですね。
聴いていてぶっ飛んでしまうのは期待の「ボレロ」。
スネアは使いませんが、キーを叩いたりしてリズムを刻みます。
フルートはピッコロ、オーボエはコーラングレなど普通に持ち替えられる楽器もありますが、ここではトロンボーンも登場します。
これは誰が演奏しているのかと言いますと、なんとホルンの福川さんです。
アダプターを使ってホルンのマウスピースで吹いているそうです。
いやこれは脱帽ですね。
編曲では当然ピアノも登場しますが、三浦さんは管楽器的なニュアンスをうまく出しています。
チェレスタも登場しますので、多分三浦さんの持ち(?)替えでしょう。
ダブルリードの楽器がサックスのように吹く様も聴きものです。
通常使わないヴィブラートをたっぷり効かせて、ニヤリとさせられます。
ただ、福川さんのトロンボーン持ち替えはやはり本職とはちょっと違うのかなと思えるところもありますが、それはちょっと意地の悪い感想でしょう。
スネアのリズムは手の空いたメンバーが担当しているのだと思いますが、やはり皆さん本職ではないな、と思ってしまうところもありますが、それはひとまず脇に置いて拍手を送りましょう。
編曲に関して言えば、最後はホルンに戻るのでなくてトロンボーンでやってほしかった、とだけ言っておきます。
もう一言。
このメンバー(ピアノはなしですが)であの五重奏の CD の曲目をやってみてほしいです。
去る二日にサントリーホールで公演があったようです。
生で聴きたいですね。
ところでこの CD、構造がちょっと変わっていて、すぐ開けることができませんでした。