真相はわからない:ES細胞の混入 [本]
もう10年も経つのかと思いました。
単行本が出た当時手に取ったものの読みませんでしたが、今回文庫化されて並んでいたので読んでみました。
研究の内容などについてはコメントできる立場にないのですが、この事件については ES細胞が混入されたということで調査委員会の結論も出て決着しています。
本人は意図的な混入を強く否定しているとのことですし細胞を培養しているときに長期間無人になることがあって誰でも部屋に入ることができたということが判明しているのですが、犯罪捜査ではないのでそれ以上の追求はできないようです。
しかも重要な当事者が亡くなってしまっています。
「未熟な」研究者であったとされ、採用についても異例な扱いで研究内容も一部の関係者しか知らないとか後から考えれば「なぜ?」と思うようなことばかりです。
理研も予算を獲得しなければならないとか iPS細胞を上回る成果であるとか、部外者が今読むと日本のトップクラスの頭脳集団であるはずなのに何故だろうと思ってしまいます。
この本では触れられていないのですが、別の研究チームの Tチームリーダーがあるとき語った「あんなに可愛くなければ」という言葉が記憶に残っています。
亡くなった S氏は論文も専門誌に何本も掲載されている優秀な科学者です。
それがあの論文に関しては掲載されるように論文を手直しした(元の論文がそもそも稚拙であって、これ以前に他紙に三度も断られている)とでも言いたくなるような振舞についてもなぜ?というほかありません。
元データや実験ノートに当たらなかったことについては W氏などについてもそれなりに理由はあったようです。
「STAP細胞はありま〜す」という発言が印象に残っていますが、もし本人が ES細胞が混入されていることを知らなかったのであれば彼女も被害者と言えなくもないのですが、それはもうわからないことです。
もし誰かが混入したのだとすれば論文に記載された方法で STAP細胞を作ることは不可能(追試ができなくてやがてこのような事態になる)ということになるなのですからそれは陰謀でしょう。
永遠にわからないのかもしれません。
読み終わったタイミングでこんな本を見たので買ってしまいました。
身悶えはどうでもいいのですが、「日本植物学会賞特別賞受賞作」に期待しました。
この著者の作品は以前『船を編む』を読みました。
確か本屋大賞受賞作です。
悪くはなかったという印象です。
おりしも今『三省堂国語辞典』の新版が出たようで、NHKの番組でも辞書の編纂について取り上げていましたが、辞書に収録された言葉やその意味、用例はいうまでもありませんが "正しい" ものというお墨付きを与えたものではありません。
言葉は生き物と言われますが、使い方は変わります。
新しい辞書には今どう使われているかが載っているのです。
ある人に言葉の使い方について指摘したところ「辞書A と B と C に載っている」から間違っていないと反論されたのですが、まあ考えが足りませんね。その A B C についても学生が使うようなありきたりの辞書でしたし。
読んでみようと思ったのは巻末にこのような用語解説があったからで、物語が化学的にどう描かれているかに興味を持ったからです。
泳動槽はまさに一冊目の事件で問題になったデータに関わる部分で登場します。
PCR は今お馴染みです。
でも物語が読み応えあるものなのかどうかは読んでみないとわかりません。
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