「最強の地域医療」 [本]
先月29日の日経新聞「春秋」でこの本のことが取り上げられていました。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO16990580Z20C17A5MM8000/
薬剤師の資格を取られてから思うところあって医学部に入り直し、32歳で医師の資格を取られたという経歴の持ち主です。
入院してみて、病室での生活がいかに患者の体力や精神力を奪うか身にしみたという。
という文章に興味をもって読み始めてみましたが、確かにそういうことも取り上げられていますが、この本で言いたかったことは書名通りで、財政再建団体になってしまった夕張市で感じたこと、やって来たことを通じて今の医療特に地域医療や健康保険、そして患者の取扱というものの問題点を提示し、どうすれば良いのかということが述べられています。
たまたま4月から5月にかけて生まれて初めての入院と手術を経験した後だったので手にしてみました。
P.64
専門的な医療は都市部に集中的に配置して、地方では予防やケアと連携して支える医療機関にしていくべきです。日本の医療は優秀なので十分に対応していけると思いますし、24時間体制や常勤にこだわらなければ十分に医師の派遣ができると思います。
例えば循環器の心臓カテーテルの上手い先生が3人いるとします。
今の発想では3人の先生方を3か所の病院に派遣して「3か所の医療機関の循環器の医師を充実させた」と言っていますが、本当はこの3人の先生を都市部の1か所に集めて24時間体制で稼働させてでも医師たちが交替で休みをとれるようにすることのほうが大切です。
治療を受けている病院でも大学病院は専門的な高度な医療を行い、地域の病院でできることは地域に任せる、という意味のことがディスプレイに流れますが、まさにこういうことを言っているのでしょう。
例えば食事についてみると入院生活では想像したような食事ではなくよく考えられた美味しいものと感じたのですが、これは病院が大学病院だったからだったのかもしれないと思えます。
P.45
私は今までの病院より、むしろ大学病院のほうが高度で専門的な医療に特化していて、ケアが二の次になっているイメージで、生活面での待遇やケアは以前より悪くなると覚悟していました。
しかし大学病院はお世辞抜きで、今まで経験してきた中では看護師さんたちの接遇や手技は一番良かったと思いましたし、目配りや気配りが利いていてプロの仕事だと感じました。
P.129
ある本の中で「今までの医師は死を敗北とする技術職であったが、これからは死を必然と認めて天寿を全うさせるサービス職となること」と表現されていますがその通りだと思います。
村上スキーム―地域医療再生の方程式 夕張/医療/教育 (HS/エイチエス)
- 作者: 村上 智彦
- 出版社/メーカー: エイチエス
- 発売日: 2010/06/29
- メディア: 単行本
医師もそうでない人も永遠に生きることはできない。
いざとなったら治療を望むのか望まないのか、それはそれまでの人生がどうであったかによるのかもしれません。
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