Double Contrabass Flute [楽器]
相原さんからダブルコントラバスが修理のために来ていると言われたので見に行ってきました。
表と裏で、こちらが演奏者側です。
これをお持ちなのは「草加越谷フルートアンサンブル」という団体で、こちらの HP にはこの他にも珍しい楽器が紹介されています。
http://www.geocities.co.jp/soukakoshigayaflute/index.html
歌口です。
楽器は二本ありまして、歌口の形が少々異なります。
上の写真の方は di Medici のコントラバスフルートに似ています。
右手キーです。
足部管に相当する部分です。
キーカップです。
左手親指キーです。
左手キーです。
歌口の向うに右手キーが見えます。
上部の折り返し部分です。
材質はなんと塩ビ管です。
キーはこちらは真鍮に銀メッキ、もう一台は真鍮のようです。
メーカーは J. HOGENHUIS, FLUTES & NOTES というオランダの会社です。
キーパイプなどを支えるのは管体と同じ塩ビのパーツで、取り付けはなんと木ネジです。
バネの取り付けが何とも豪快ですね。
日本では Kotato & Fukushima が金属管を3本作ったそうですが、重くて高価です。
こちらは軽く(といっても 9Kg くらいあるらしいですが)、価格も 30万円程度だそうです。
フルートの仲間ではこれが一番低い楽器ですね。
普通(C足部管付)のフルートの最低音が c1 のド(256Hz)で、この楽器はその3オクターブ下まで出せます。
ピアノの低音部記号下の加線二本のド(C 64Hz)のさらにオクターブ下(32Hz)です。
コントラバスフルートで 16フィート管のパイプオルガンの最低音(32Hz)はカバーできているので、これはそれ以下の 32フィート管のオルガンの最低音が出せる事になります。
ところで人間の耳に聞こえる音は 20Hz - 20kHz とされ、CD はその範囲を超える音をカットしています。
なので 32フィート管のオルガンの最低音(16Hz)は耳には聴こえません。
16Hz どころか 32Hz でも明確な音程を持った音としては認識できないでしょう。
88鍵のピアノの最低音(ラ)は 27.5Hz ですが、これは叩けば音が鳴るのは聴こえます。
しかし実際に耳が音として認識しているのは基音の上に倍音が乗った音で、その倍音を聴いて私たちはもっと低い音が鳴っていると認識しているのです。
倍音を含まない純音で 27.5Hz を鳴らされたら聴き取れる人が一体どれだけいるでしょうか?
オーディオチェック用の CD が市販されていますので下から上まで試す事ができます。
上は年齢にもよりますが、 16Hz 16kHz まで聴こえればたいしたものです。
バスドラムの音などもかなり高い音が倍音として乗っていますので歯切れ良く聴こえますが、倍音をカットしてしまったらモコモコとして聴こえます。
話がちょっと逸れましたが、この楽器を吹いてみましたところ普通のフルートの第一オクターブの G まではすぐ音が出たのですが、それ以下はだめでした。
しかしそれは多分耳には聴こえにくい音域に入っているのです。
ファゴットも基音は聴こえないそうです。
この楽器も倍音を上手くコントロールできれば使いこなせるかもしれません。
2012-09-16 21:25
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コメント(4)
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ダブルコントラバスフルート 興味深く拝見しました。
まるで塩ビ配管のお化けみたいですね。まさか・・・塩ビじゃないでしょうね!
再低音部は音が聞こえない?人間の耳には聞こえない?振動の領域ですか? ^^
by 般若坊 (2012-09-16 22:47)
般若坊 さん、おはようございます。
記事中に記載しましたが、塩ビ管です。
日本のメーカーは金属で作っていますが、高価なうえ重いので一旦搬入したら殆ど据え付けのようなものだそうです。
軽い素材としては例えば木(黒檀やグラナディラなどの重いものは別)、カーボンファイバー、アルミなどが考えられますが、木材を除いては作ってもらうのが難しいでしょうね。
この楽器は横になった歌口の付いた部分とそれに続く部分が円錐状になっていますがそうした部分の加工も技術が必要です。
この楽器用の楽譜はフルートアンサンブル用でも多分ありません。
使用する団体で編曲して使っているようです。
楽器の絶対数が少ないので、もしその楽譜を演奏しようとすると楽器を調達しなければならないのです。
塩ビ管は安価で、耐久性を別にすればこれでも良かろうと思うのですが、キーなど細部の造りをもう少し丁寧にする必要があります。
そうするとコストが上昇しますね。
どうしても必要なところはそれでも注文する(この楽器もメーカーに直接注文されたもの)でしょうが、輸送コストも必要ですね。
いずれにしても作っておいて買い手を待つ、というわけにはいかないでしょうね。
音域についてはおっしゃる通り CD に収録される最低音は耳では感じられず、不気味な振動として感じられます。
しかし、とても微かです。
これが大きな振動として感じられるような音量で再生すると、続くもっと高い音がだんだん絶えられないような音量になってきますので注意が必要です。
ご興味がおありでしたらいくつかの周波数を段階的に収録した CD が市販されていますので、お試しになってみてください。
by センニン (2012-09-17 08:44)
センニンさん ご説明ありがとうございます。文中よく読まずにつまらん事をお尋ねしました。
最近はトロンボーンもカラフルなプラスチックになって、何か物足りない気がします。ブラス楽器はブラスであって欲しいんですよ。
吹奏楽を経験した者として・・・ ^^;
by 般若坊 (2012-09-17 23:32)
般若坊 さん、こんばんは。
Kotato & Fukushima の三本作られた楽器は真鍮製だそうです。
YAMAHA のアルトとバスもそうです。
ところでこのコントラバスフルート、金管楽器で言えば Bass Tuba のさらにオクターブ下です。
とんでもない楽器ですね。
Euphonium や Tuba は一番遠いヴァルヴの先は円錐館ですが、マウスパイプからそこまではとても細いですね。広がり方が急激です。
Bass Tuba は大抵真鍮製ですが、YAMAHA の HP によれば B♭管で 9kg〜 10kg だそうです。
ベルの広がりがないコントラバスフルートといえ、更にオクターブ低いとなると木管楽器としては非常識な重さになるでしょうね。
ケースも相当重いでしょうし、多分お値段も非常識でしょう。
di MEDICI のコントラバスフルートにはキャスター付きのキャリーケースが附属しています。
by センニン (2012-09-18 21:01)