柿右衞門と柿右衞門窯 [アート]
以前十四代さんがお書きになった本を大変興味深く読みました。
襲名とは実際に戸籍上の名前を「柿右衞門」に変更するのだという事など知らない事ばかりでした。
この作品は二代前にあたる十二代さんのものです。
地肌の白の色あい、釉薬の滑らかな光沢、染付の濃淡の素晴らしさ、柿の赤。
そして何とも手に馴染みそうな柔らかな形と蓋の可愛らしいつまみ。
共箱も付いています。
柿右衞門さんは後からは箱書はしてくれないそうですので、これは当初から付属している箱ですね。
見ているとだんだん欲しくなる一品です。
ところで面白い事におなじ千葉そごうの 7F の美術品も扱うフロアに現代の陶磁器類を扱うコーナーがあります。
そこに並べられていたのが柿右衞門窯と書かれた同じようなペアの湯呑です。
こちらはガラス越しですので条件が良くありませんが、同じモティーフです。
一見同じようですが、蓋のつまみに始まってその膨らみや本体のシェイプなど細かい部分がずいぶん違って、全体としてずいぶん違う印象を与えます。
極めつけは絵付です。
これを見てずいぶん違うと感じるか、どちらでも変わらないと感じるか、それは見る人の目の肥え方によるでしょう。
お値段は 6千円ほどしか違いません。
私はこれは半値でもいりません。
本当に違うものですね。
十二代の坂田柿右衛門の湯呑み茶碗、いいですね。柿右衛門はやはり十二代に限ります。私も十二代の作が一番好きです。
呉須の染付に朱色の柿の実、渋いです。
最近では代用呉須ばかりで味気ないものとなりました。
“柿右衛門の赤”とはよく言われますが、赤ではなく朱と云ったほうが適してるとおもいます。
呉須に映える“柿の赤”、柿右衛門はどれだけ発色に苦労を重ねたことなのでしょうか。
写実の赤ではなく、呉須に対する“柿の赤”が柿右衛門の特徴でしょうね。
目で見るのではなく心で見た“柿の赤”が、柿右衛門の“アカ”でしょう。
それにしても綺麗な湯呑茶碗ですね。
「せんにん」さんが欲しくなるのも当然でしょうか?
陶磁器に目の肥えた人にしか分からない“柿右衛門のアカ”素敵です。
以前より、バカラなどのガラス器もしばしばお目にかかりますが、
この様な心の糧になる作品を、陶磁器に限らずまた見せてほしいですね。
次は何がお目にかかれるのか楽しみにしております。
by 夢旅人 (2011-06-27 22:04)
夢旅人 さん、こんばんは。
絵のうまさでは十三代さんが評価が高いようですし、濁手の再現に情熱を注いだのも十三代さんだそうです。
しかし、私も十二代さんが好きですね。
この赤、実際の柿の色ではありませんし、おっしゃる通り「赤」でないのかもしれません。
しかしこれが良いのですね。
この作品はもっと高い値が付けられても不思議ではないのですが、このお店では安く仕入れられたらそれなりのお値段を付ける良心的な商売をされています。
ワイングラスを始めとしたバカラの製品もいくつか買っていますが、いつも「飲まないのに?」と言われています。
しかし目のごちそう、心の喜びなのですね。
美しいものを手にする事の喜び、職人の技の見事さに対する敬服の念、そうしたものがわかる人でありたいものですね。
by センニン (2011-06-27 23:22)