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EMPIRE の香水瓶:オールドバカラ [アート]

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香水やコロンには縁がないので香水瓶にも用はありませんし興味もないのですが、しばらく前の NHK の「美の壷」ではラリックの香水瓶をたくさん紹介していました。

この写真はバカラの "EMPIRE" というシリーズの中の香水瓶です。
現在の香水瓶とは違ってかなり大ぶりです。

取り扱っている千葉そごう 9F の「ベルロワイヤル」の Yさんの解説によりますと現在は抽出技術が進んだので香水瓶も小さなものが普通だがそうでなかった時代はある程度の大きさが必要だったのだそうです。
製作年代は1950年頃、 高さ15.6cm、径は8.5cm です。
60年ほど前のものですから、「オールド」の中では比較的新しい方です。
「骨董」や「アンティーク」と呼ぶには少々新しいですね。


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栓の内側は空洞で、製作当時の空気が閉じ込められています。


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その空洞が実に見事にきれいに作られています。


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全体のプロポーションがまた魅力的です。

まるで中世の貴婦人のようです。
装飾的な髪型の頭部、大きな襟飾り、小さな肩、そんな風に見えないでしょうか?


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その "襟" の部分もあきれるほどきれいで完璧な造形です。


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底部の周囲の金彩もきれいに仕上げられています。

何といっても未使用であろうと思われるほどのコンディションの良さが素晴らしいですね。
現代のバカラはクリスタルガラスの極限の美しさを示すと言っても良いほど洗練されています。
その素材とカットの技術が生み出す煌めきが現代バカラの最大の魅力でしょう。

オールドの魅力は手仕事の素晴らしさかもしれません。
以前何度か取り上げましたが、同じデザインのグラスでも加工方法が現代とは違い、細部まで熟練の職人の腕の確かさが刻み付けられています。

この香水瓶は現代のものとオールドの中間くらいの時代のものです。
時代の割にガラスの色が美しくカットも精妙であるのはこの製品がグレードの高いものである事の証だろうと思います。

栓の内側に美しく閉じ込められた当時の空気に触れてみたいという気持が自然に湧いてきます。
オールドのグラスの別の魅力は口に触れた時プルーストの作品のように思いが遥か昔に飛んで行く事と言っても良いかもしれません。

それほど古いものではないこの香水瓶ですが、この素晴らしい仕上がりにどんな貴婦人がこれを使ったのか、あるいは使わないで飾られていたのか、誰から誰に送られたものなのか、これを所有した人物はどんな人だったのか、その人物にどんな人生や歴史があったのか、などなど想像がいろいろと膨らみます。

理屈抜きに見ほれてしまう、そんなものはそうそうあるものではありません。

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