SSブログ

原典版を確認する:"Air" [楽譜]

bz2011_0424_194001AA.jpg

発表会で使う楽譜をどれにするかをまず検討します。
フルート用編曲の「G線上のアリア」、ヴァイオリン用編曲の「G線上のアリア」を使うという手もありますが、今回はフルート二本にピアノという編成にする事にしましたので、オリジナルとほぼ同じの弦楽四重奏用編曲の楽譜を使う事にしました。

まずは先生と合わせたのですが、最後の小節が妙な感じなのです。


Aria_G.jpg

左から全音のスコア、 Schott のヴァイオリンとピアノ用の「G線上のアリア」、fcミュージックの弦楽四重奏用編曲の最後の部分です。
「G線上のアリア」は二度とオクターブ低く編曲されていますので、表面上はその違いはあります。
おやと思ったのはトリルです。

全音のスコアでは [ ] が付けられていますので、これは多分校訂者が付けたものだと思われますが、 [ ] がないものとしてこのままトリルをかけると上の音から始めるとして E-D-E-D という繰返しになってしまいます。これは変です。

聴き慣れた「G線上のアリア」では [ ] なしでトリルが付けられていますから C-H-C-H となります。
おや?半音違いますね。原調に直すと D-C#-D-C# ですが、全音版と全然違います。

弦楽四重奏版はオリジナルのスコアと同じはずですが、 [ ] がないだけで音は同じです。
しかし、この通り演奏すると変なのです。

そこでそもそもはどう書かれているのかを確認するためベーレンライターの「新バッハ全集」の『管弦楽組曲第三番』を取り寄せてみました。


baz2011_0424_193919AA.jpg

それがこの画像ですが、全音版と弦楽四重奏版はトリルの付けられた位置が違うのです。
ベーレンライター版は D を伸ばしてその後で D-C#-D-C# と演奏します。
何でこんな間違いが出来てしまうのでしょうね。

「G線上のアリア」の方はトリルの付けられた位置は全音版や弦楽四重奏用編曲と同じですが、音は正しく書かれています。
「G線上のアリア」として編曲された時、トリルを一つ前の音符から始めるようにしたのですね。

なるほどと思われた方はぜひオリジナル(管弦楽)をお聴きになってみてください。


さて全音版(弦楽四重奏版も同じですが)には実はもう1つ誤りがあります。


air_G.jpg

左が全音版、右がベーレンライターの「新バッハ全集」のものです。
全音版は全く同じ事を繰り返すように書かれていますが、実際の演奏では右のようになっています。
何が違うかと言うと、一番下の Continuo のパートは繰り返した後の2回目には十六分音符の動きがなく、二分音符で伸ばしているのです。


一つ目の違いは実際に音にしてみればすぐ分かる誤りですが、二つ目の方は気が付かないかもしれませんね。
本当は自筆譜(ファクシミリ版)に当たるのが良いのでしょうが、音大の図書館にでも行かなければ見る事が出来ません。
私たち素人のレベルでは「新バッハ全集」や「新モーツァルト全集」に当たれば十分でしょう。
その他の演奏譜ではなるべく URTEXT(原典版)を購入すれば良いでしょう。原典版=自筆譜 というわけではないのですが。

ちなみに J.S.Bach のフルートソナタはベーレンライター版とクイケン版(ブライトコプフ版)を使っています。

nice!(4)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 4

コメント 2

pearl

センニンさま
いつも通われているサロンの会員の者です。以前、フルートマットを作っていただきました。改めて有難うございました。愛用しております♪
さて、バッハの「G線上のアリア」ですが私もぜひ演奏してみたい曲です。
全音版のトリルの違い、よく気付かれましたね!びっくりです。
私はまだ楽譜を見ていなかったので、今後楽譜を購入する際の参考になりました。やっぱり原典版がいいのでしょうね。今まで、フルート用にアレンジされたものを使うことが多かったので、時々「これって、なんか違うよね」と思うこともありました。レッスンの日にちや時間帯が違うのであまりお会いすることがありませんが、ブログや先生からのお話を伺っていて、ぜひセンニンさまと一緒にアンサンブルをやりたいと思いました。私はまだまだ初心者の域を脱していないので、ご迷惑かもしれませんが・・・。先生とは違うセンニンさまのお知恵と知識を是非拝借させて頂きたく、コメントにてお願い申し上げます。
また改めてお願いをする機会を設けたいと思いますので、宜しくお願いいたします。
by pearl (2011-04-28 18:20) 

センニン

pearl さん、こんばんは。
マットをお使いいただいているとの事、ありがとうございます。

この曲、弦楽四重奏版を演奏してみるまでは全然疑っていなかったのですが、演奏してみたら変なので驚いたのです。
最近は全音版を買う事は少ないのですが、山野楽器千葉そごう店にはこれしかなかったのでこんな問題があるとは思わずに買ってしまいました。
J.S.Bach のスコアなら Amazon でもベーレンライター版が買えますので Amazon がお勧めです。
楽器店の店頭ではオイレンブルグ版が手に入りやすいと思います。
新バッハ全集に基づく実用版(演奏譜)ならアカデミア・ミュージックが早いでしょう。

それにしても弦楽四重奏版、編曲者は気が付かなかったのでしょうか?この出版社の楽譜を購入するときは要注意です。

編曲に関しては以前も「『歌の翼』による幻想曲」で一小節の違いがある点に触れましたが、特に著作権が切れている曲に関しては編曲者の見解によって違いがありますし、おなじみの「カルメン」の間奏曲などもフルートが演奏する部分とピアノが担当する部分は編曲によって結構違います。

アンサンブルの件は先生から先日伺いました。臨時のメンバーで発表会で演奏して終わりというのは物足りないと常々思っていました。
お店を練習場所にすると無料ではありませんが、立地の点や譜面台、ピアノなどの設備の面で便利ではないかと思います。
弦楽の人たちのように演奏の質を高めていけると良いですね。
by センニン (2011-04-28 20:57) 

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。