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これまで判明した事:『歌の翼』による幻想曲 [楽譜]

いろいろ分かってきたこの曲ですが、ある程度の事が分かりましたのでこの辺でまとめておきます。

その前に疑問点を整理しておきます。
以下小節数は全て ALSO出版の「フルート名曲 300選 vol.1」によります。

疑問点は 68小節目からの休みが何小節であるのかという事です。
 Aグループ:2小節
 Bグループ:3小節
次に 52小節目の最後の音は何であるのかという事。
 1. 第二オクターブの G
 2. 第二オクターブの F#
 3. 第二オクターブの E(これは新たに発見した楽譜の記載です)

まず Aグループに属するのは
・「フルート名曲 31選」(ドレミ楽譜出版社) 衛藤 幸雄 編
・「MFLC講師が選んだ40フルート小品集」(muramatsu)
・「フルート・クラシック名曲アルバム 第1集」(サーベル社)
・『「歌の翼に」幻想曲』(ライブラリ #191 日本フルートクラブ)
・ SOIREES MUSICALES Fantaisies brillantes sur des chansons favorites POUR LA FLUTE avec accompagnement de Piano par HENRY STECKMEST OP.17-1(OFFENBACH)
※52小節目に関しては最後のもの以外全て G 、最後のものが E です。

OFFENBACH版はネットで検索したところ Op.17 の 1 から 5 までが PDF でフルート譜のみ掲載されていたものです。出版年が分かりませんが、国内で入手可能ないずれの譜面より古いのではないかと思います。

表紙の画像です。
表紙.jpg

この他 Hofmeister の 1884 年の目録に
 Steckmest, Henri, Op. 17. Fantaisies de Salon sur des Chansons favorites p. Fl. et Piano. (Mendelssohn, Auf Flügeln des Gesanges. Abt, Schlaf wohl, du süsser Engel du; Gute Nacht du mein herziges Kind.) Offenbach, André Mk 1,50.
と記載がある事が分かりましたが、これは同じものではないかと考えられます。


Bグループに属するのは
・「フルート名曲 300選 vol.1」(ALSO出版) 監修:川崎 優
・「美しきフルートとハープの調べ 極上のひととき ハープ伴奏CD付」(ALSO出版)
※52小節目は F# です。

他にもあるかもしれませんが、確かめられたのは上記の楽譜です。

52小節目に関しては「フルート名曲 300選 vol.1」の巻頭の曲目解説に

 ここの和音は下から "E G B D F#" の9の和音の展開型でフルートが "F#" になっているのです。そしてこれが次の小節の和音 "A C# E G" に気持よく解決されます。ですからこの部分は "G" でなく楽譜通りに "F#" で演奏してください。

とあり川崎氏の見解である事が分かります。ハープ伴奏版は編曲者が分かりませんがおそらく同じでしょう。


依然として疑問なのは休みの小節数です。
ここで参考とする事ができるのはもう少し前の部分、42小節目から 46小節目までの同じ間奏部分です。
ここでのフルートの休みはいずれの楽譜でも3小節で、伴奏は ALSO版の 67小節目から 71小節目と同じです。
つまり間奏の一回目はフルートの休みは3小節で、二回目は2小節のものと3小節のものがあるというわけです。

Finale で作成した譜例をご覧ください。(曲のタイトルが表示されていますが、途中から入力しています。冒頭に一小節の休みを入れてあります)

共通する一回目の間奏部分から始まり、 54小節目まで入力してあります。最後にも一小節の休みを入力しています。

Page1.jpg
Page2_Doremi.jpg
これがドレミ版、

Page2_Also.jpg
こう続くのが ALSO版です。

Page2_Offenbach.jpg
そしてこちらが OFFENBACH 版です。

再生したものを mp3 にしました。


これがドレミ版、


これが ALSO版、


これが OFFENBACH版です。

最も古いと思われる資料では E になっているのです。


そしていずれも一回目の間奏はこうなっているのですが、以前再生を掲載しました二回目の問題の箇所は
DOREMI版が


ALSO版が

です。

一回目と同じにするのが自然だと思えるのです。
これについては先々週の金曜日 ALSO出版に問い合わせました。
回答があったのが1週間後の先週の金曜日でした。
回答によれば
 編曲者が、フルートが入りやすいように加えた
という事でした。

オリジナルは休みは2小節である事がほぼ確実です。
古い資料である OFFENBACHのものでもそうなっています。

しかし演奏のしやすさと言う通り、一小節補ってある方が一回目と同じである事もあり自然に思えてならないのです。そうではないと思われる方は一回目を一小節削って二回目と同じにしてやってみてください。二回目が一小節少ない方が自然であるならば一回目もその方が自然であるはずです。

いかがでしょうか?

これ以上研究するなら代表的な版の出版元であるドレミ楽譜出版社と ALSO出版に底本とした資料は何であるかを問い合わせなければなりませんが、今のところはここまでで一応の決着としたいと思います。

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nyankome

落ち枯れ様でした。
今まで一般的に通用してきた版でも、原典版とはずれがあることが多いです。きっと後世のひとの手が入っているのでしょうね。この頃は、原典に当たってそちらで弾く方が増えてきているように思います。
先日購入したヒラリー・ハーンのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲もそうでした。
ギター曲もセゴビアの手が入っている譜面が多く流布していますが、最近原典版が出版されることが多くなりました。
by nyankome (2010-06-28 23:29) 

ももねこ

 52小節の所、昭和42年版 堀内敬三の
「フルート名曲集」では、F#です。
 つなぎの部分の小節数について:
個人的な話ですが、フルートの発表会で2回ほど
自作の曲を やった事が ありますが、本番で
つなぎの部分 1回目は私が1小節早く飛び出し、
2回目は私が1小節遅れてしまった事があります。
いずれの時も、ピアノは全く慌てず合わせてくれました。
今回のヴァイオリンの発表会では、直前にこの話をして
伴奏者に圧力をかけてしまいました。ごめんなさい。
 どでもいい話してしましました、これもごめんなさい。
by ももねこ (2010-06-29 03:50) 

センニン

nyankome さん、こんばんは。
そうですね。ショパンの楽譜も最も良く使われているものはパデレフスキ版ですね。
ヒラリー・ハーンのチャイコフスキーは買ってあるのですが、まだ聴いていません。
チャイコフスキーと言えばピアノコンチェルトの第二楽章、5小節目からのフルートは以前は 13小節目からのピアノと同じに A♭ E♭ B♭ A♭ と演奏していたように思うのですが、今は A♭ E♭ F A♭ と演奏するようです。
演奏家は必ず原典や手稿譜(ファクシミリ)に当たるはずですが、私達は出版譜が頼りですね。
by センニン (2010-06-29 20:31) 

センニン

ももねこ さん、こんばんは。
堀内敬三版(S33年)、見つけたので注文してみました。
G よりは F# の方が良いように思えますね。
E は耳慣れませんが、考えてみるとこれが誤植や編集者の手による改変である可能性も排除できません。
となると二回目の間奏もその可能性がないとは言えませんね。

by センニン (2010-06-29 20:44) 

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