『孤独のアンサンブル』 [演奏会]
書店の音楽関係の棚を見ていて目に入りました。
NHK BS1 で昨年放送され、今年の一月にも何度目かの再放送があったそうです。
コンサートが開けなくなったこの情勢の中で日本の第一線で活躍する音楽家の皆さんがどう過ごされているのかを取材して三つのプログラムとして放送されたその番組制作のドキュメントです。
1回目の放送では七人、2回目の放送では八人、3回目の放送はその中から十三人(十五名のうち二人はスケジュールの都合などで参加出来ず)が取り上げられています。
本を読み終わると演奏を視聴したくなりました。
幸い本と同時にブルーレイディスクが発売されていました。
ディスクにはアンサンブルの演奏を収録した CD もついています。
各回の内容は次の通りです。
吉野さんは本でも触れられていましたが「花のワルツ」の旋律ぞ全部一人で演奏されています。
ハープの部分も含めてです。
それがみんなでアンサイブルしたいという気持ちが強く感じられる内容で、そのためか第三部でも取り上げられることになりました。
神田さんと梶川さんがご夫婦であるとは知りませんでした。
この回は出演者が七組八名です。
最初の曲から客席を使った演奏です。
編曲も全てオリジナルで世界初演、各曲を合わせるのも多分収録日が初めてのはずです。
編曲も短期間で仕上げなければならなかったにもかかわらず素晴らしい出来です。
この少し前(2020.7.6)にエンニオ・モリコーネが亡くなっていますが、他の著作権が生きている曲を含めて編曲の許可を取るのも大変だった事でしょう。
(池田さんはオーボエとイングリッシュホルン持替)
(梶川さんはフルートとピッコロ持替)
(梶川さんはフルートとピッコロ持替)
(池田さんはオーボエとイングリッシュホルン持替)
(梶川さんはフルートとピッコロ持替)
収録:めぐろパーシモンホール
この中で思わず涙ぐんでしまったのが「花のワルツ」です。
演奏前に楽屋で矢部さんが吉野さんに(一人で全部を演奏していたのを視て)感動しました」とおっしゃっていましたが、それは多分この日集まった演奏家の方々全員の想いだったでしょう。
だからこそこの曲が全員でのアンサンブルとして取り上げられたのでしょう。
13人で、楽器は15本。最後の「キエフの大きな門」と同じ一番の大編成です。
そのためか演奏も表情豊かで素晴らしい仕上がりでした。
特典映像で2曲が特別編集バージョンとして再度収録されています。
演奏はもちろん同じですが、映像と響きが異なります。
「エニグマ」は随分昔に聴いただけなのですっかり忘れてしまっていますが、このコンサートマスター三人による演奏はとても素晴らしいですね。
音楽が光の粒子となって立ち昇るようで、異なる色の光が溶け合ってとても美しい祈りの光が降り注ぎます。
「キエフの大きな門」は響きに厚みが出て素晴らしい仕上がりになっています。
推測ですが放送後手直しの欲求が生じて作られたバージョンなのではないかと思います。
取材から放送まで時間がありませんでしたからそうであっても不思議ではありません。
2回目までの放送はそれぞれがご自宅で一人で演奏していて収録スペースも限られていますしありのままの現状をと言う狙いは達成されていたのだろうと思います。
カメラは演奏中の目の表情を捉えています。
テンポが動くところなど、その曲のリーダーの意向を他の演奏者は確認します。
楽器を演奏する者にとってはそうした点もとても興味深いです。
とにかく、とてもおすすめの映像です。
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