吹き比べて録音 [楽器]
録音は客観的なので練習だけでなく楽器を比較するときにも役に立ちます。
今回は頭部管を比べてみることにしました。
手前から黒珊瑚(深海松)、象牙二本、夜光貝です。
それに総象牙の頭部管。
楽器は FMCフルートマスターズのイニシャルモデルで、その頭部感との違いを聴きます。
素材が違うだけでなく、歌口のカットに違いがあることがご覧いただけるでしょうか?
ざっと印象をまとめておきますと、総象牙を除いて一番お値段が高い夜光貝は汎用性が高く、高音域も低音域も吹きやすくて反応も良く、音量もあって一本だけ持ってみようとするときは第一の選択肢になります。
黒珊瑚は独特の倍音を持っていてそれが大きな魅力になっています。
音量は夜光貝に一歩譲る印象ですが、吹きにくいと感じることはありません。
象牙は、まずリップだけが象牙の二本のうち上の写真の左側、象牙を輪切りにした形で材料を取ったタイプでちょうど歌口のところが中心ですが、もう一本と比べて歌口が小さめで丸いため、象牙という素材の特徴がよく表れています。
少しトラヴェルソ寄りのイメージです。
もう一本の方(上の写真の真ん中)はもう一本とは違って材料の取り方が長さ方向ですが、その違いもあるのかもしれませんが歌口が少し大きく四角に近い形であるため普通の頭部管と持ち替えてもすぐ慣れるという印象です。
象牙らしさはもう一本に少し譲る印象ですが、バロックなどだけでなくそれ以降の作品でも現代的な響きでないものを求めるときは一番の選択肢になりそうです。
高音域の、角が取れていながら芯がしっかりしいて艶のある音は他では得られないものです。
総象牙の頭部管は象牙という素材の素晴らしさを十全に味わうことができるもので、その柔らかな響きは他の素材では決して得られないものです。
歌口のカットに少し手を加えた結果吹きやすさが格段に向上し、響きを損うことなく音量も驚くほど増加しました。
その点から言えばこの個体は特別良くできたものであると言って良いかと思います。
この大きさの頭部管を作るめには、中心部は使えないのでほぼ太ももほどの大きさの象牙が必要だそうで、頭部管ほどの長さのものでもその部分は真っ直ぐでなくてはならないので少なくとも1mはなくてはならないそうで、ネットオークションで見られるものでも40万円から50万円ほどもするようです。
加工途中で割れてしまうこともあるそうですし、特に歌口は削りすぎてしまうと取り返しがつきませんので製作にあたっては慎重の上にも慎重を期さなければならないそうです。
一番左の頭部管の歌口のアップです。
下側の角が少しカットされています。
真ん中の頭部管です。
総象牙です。
上下のショルダー部がやや大きめにカットされています。
吹奏感はこのカットだけで決まるものではありませんので、見た目でどんな音がするかを正確に判断することはできません。
実際に試してみて、できれば録音してみることですが、難しい場合は他の人に聴いてもらうのが良いかもしれません。
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