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自筆譜ファクシミリ:Mozart "REQUIEM" [楽譜]

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以前の記事で触れました注文していた楽譜はこれです。



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ベーレンライターから出版された、究極の自筆譜ファクシミリです。



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楽譜の分野(書誌学)では一般にコピーと言っているものをファクシミリと言います。


綴りは facsimile で、Wikipedia によればラテン語の "fac simile"(似せて作る)《 facere(為す)+simile(同一)》から来ているそうです。


 


普通ファクシミリと言うと事務機器の一つ FAX を指しますが、同じく Wikipedia によれば本来は(英語表記を省略したものとしては)facs あるいは facs. とすべきであって、”FAX” は富士ゼロックスの登録商標が一般に広まったものとのことです。


「エレクトーン」(電子オルガン)や「ピアニカ」(鍵盤ハーモニカ)と同じですね。


「セロテープ」(セロハンテープ)「ホッチキス」(ステープラー)など、こうしたものはたくさんあります。



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モーツァルトのサイン。
解説によれば、ジュスマイヤーが書き入れたものです。
モーツァルトの筆跡と確認されているものとは確かに違います。
792 (1792?)というのは多分補筆完成した年ですね。
1791年 12月にモーツァルトが亡くなり、1793年12月には依頼主が自作としてその亡き妻の追悼のために演奏していますが、1973年の1月に(筆写譜によって)モーツァルト未亡人のために演奏されたという説もあるようです。


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表題。


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この特別なファクシミリは従来のものとどう違うかと言いますと、使われている紙の状態までできるだけ原本に近く再現されていることです。


もちろん、傷んだ状態まで再現しているわけではなく、印刷されたこの紙は破れたり擦れたりはしていません。



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絶筆となった「ラクリモサ(涙の日)」です。


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その部分です。

補筆したジュスマイヤーの手になる部分はインクの色が違っています。




研究者が自筆譜に当たるのはまさにこうしたものまで知りたいからですが、貴重な自筆譜には誰もがアクセスできるわけではありません。


そういうニーズに応えるのがファクシミリですが、普通はこのように紙の状態まで再現する必要はありません。


これだけ手をかければお値段が高くなるのは当然です。



以前も触れましたが、モーツァルトはこの小節までの全てを完成していたわけではありません。


http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2013-03-06

 

“ファクシミリ” を手にしたのはこの曲だけです。

私にとって特別な曲だから、とだけ言っておきましょう。

 

 

 

明日は早く出るので朝の更新はお休みします。

 

※2016.5.5

 一部追記等を行いました。

 





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コメント 9

サンフランシスコ人

この記事を思い出しました.....

http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2013-06-11
by サンフランシスコ人 (2016-05-05 00:44) 

センニン

サンフランシスコ人 さん、おはようございます。
以前『新モーツァルト全集』のこの曲を手にしましたが、それは普通の印刷譜(自筆の部分とそうでない部分は明示されています)で、数ページ自筆の部分が掲載されているものでした。
この先もまたこの曲を取り上げることがあるかもしれません。

今手元にはヘレヴェッヘとシャンゼリゼ管弦楽団による DVD があります。
ショパンの遺言により葬儀で演奏されたその曲が生誕200年、没後161年の2010年10月17日に追悼ミサの一部として演奏されたものを収録しています。

今日はいつもの練習場所で鑑賞する予定です。
by センニン (2016-05-05 06:13) 

U3

持つ歓びが感じられますね。
by U3 (2016-05-05 09:47) 

てんてん

わぁ すごいですね♪
インクを付けて書いて行くうちに薄くなって
またインクを付けて・・・なんてことを想像してしまいました。
素敵ですね♪
by てんてん (2016-05-05 09:52) 

センニン

U3 さん、こんばんは。
そうなのですが、持っているだけでは宝の持ち腐れなのです。
印刷譜を参照しながら、ぼちぼち読み進めようと思います。
by センニン (2016-05-05 20:04) 

センニン

てんてん さん、こんばんは。
おっしゃる通りですね。
昔は万年筆というものはないのでつけペンですね。
羽根ペンかもしれません。
消耗品でしょうが、こういうことにも多分お金がかかったのですね。
モーツァルトは借金を重ね、晩年はたいそう貧しかったようです。
そのため最低ランクのお葬式しかできず、きちんとしたお墓がないのです。
by センニン (2016-05-05 20:10) 

サンフランシスコ人

自筆譜の実物はどこにありますか?
by サンフランシスコ人 (2016-05-11 00:54) 

センニン

サンフランシスコ人 さん、こんばんは。
サンフランシスコ人 さんはいろいろ資料を調べるのがお得意とお見受けしますので、その所在もすぐお分かりになると思いますが、オーストリア国立図書館が所蔵しています。
ネットで検索して情報が得られることについてはご自分で検索なさってみてください。
by センニン (2016-05-11 19:06) 

サンフランシスコ人

「オーストリア国立図書館が所蔵しています」

知らなかったです.....

「ネットで検索して情報が得られることについてはご自分で検索なさってみてください。 」

見つかりませんでした.....
by サンフランシスコ人 (2016-05-12 01:00) 

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