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小説と戯曲と歌劇:「アルルの女」 [レッスン]

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アルフォンス・ドーデーの『風車小屋だより』については以前も触れました。
フルート吹きにとって縁が深く、一般にも最も良く知られているのはドーデーがこの中の一遍を戯曲に仕立てた「アルルの女」にビゼーが音楽を付けた劇付随音楽からのビゼーの手による「第一組曲」とビゼーの死後 E.ギヨー(ギロー)が編んだ「第二組曲」です。

最も有名な「メヌエット」が劇付随音楽ではなく他の作品から取られている事も以前触れました。
http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2007-02-22


上の記事で原作と戯曲の違いについて書かれたサイトを紹介していますが、
http://www.provence.fm/litterature/litterature/l'arlesienne.html
この他にイタリアの作曲家フランチェスコ・チレア(Francesco Cilea 1866 - 1950)によってオペラが作曲されています。


今回は原作の小説について触れてみましょう。
と言いますのは先週先生と「メヌエット」についてお話ししたところ、先生は原作はご存じなくて悲劇である事もご存じなかったのです。


上の写真は以前触れました新学社文庫と旺文社文庫です。

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新学社文庫の方は背表紙がだいぶ傷んでいますが、中学生の頃これを何度も読んだものです。
旺文社文庫の方は以前古本を購入したものです。
訳者が違うのでどう違うかについて興味があったのです。


原作のあらすじはおよそこんなふうです。
 20歳になる農家の息子ジャンは今でいうイケメンであったので周囲の女性たちの関心の的であったが、ジャンの方はアルルの闘牛場で一度会った女しか眼中になかった。  評判の良くない女であったので両親は反対したが、ジャンはぞっこんであったのでしぶしぶ結婚を認める事にする。  ある日曜の夕方、祝宴のような夕食が済みかける頃、一人の男が父親を訊ねて来て、息子さんが結婚しようとしてる女は私の女だったが、心変わりしたようで気落ちしているとして女からもらった手紙を見せる。  父親は食事の後で息子を呼んで話をする。  その後息子はその話はしなくなったが、夕方になるとアルルの方角へ町外れまで行っては引き返すというふうであったので、両親は息子の心を慮って忘れられないなら一緒になっても良いと言うが、自尊心の強いジャンはもう望んではいないというふうである。  次の日からジャンはうってかわったように明るく若者らしくふるまうようになったので両親はすっかり安心するが、母親は一抹の不安を拭えず、ジャンと弟の寝室の脇で寝るようになる。  あるお祭りの日、の翌朝未明、母親は脇を誰かがすり抜けて屋根裏部屋に上がって行くのに気付いて必死に追いかけ息子の名を呼ぶが、鍵が掛けられた扉の向こうで聞こえたのは何かが落ちる音だった。


訳者による違いは読み比べてみると面白いのですが、櫻田訳の方が詩人の文章であることが感じられるように思います。
全部を読み比べたわけではありませんが、旺文社文庫の大久保訳を読んでいて意味が分からなかった箇所があります。

 「それは、中庭の朝露と血におおわれた石のテーブルの前で、死んだわが子を両腕に抱いて裸のまま嘆き悲しんでいる母親だったのだ。」

「裸のまま」という箇所、あれ?と思いますね。
裸で寝ていたのでしょうか?
入浴中ではなかったはず。


櫻田訳ではこうです。

 「それは庭の露と血とでぬれた石のテーブルの前で、死んだ子供を両腕で抱いて胸も露わに、嘆き悲しんでいる母親であった。」

「胸も露わに」なら意味が分かりますね。


新学社は今でもありますが、この新書サイズの「文庫」はもう出版されていないようです。
岩波文庫なら手に入ると思いますので、ご興味がおありの方はぜひお手に取ってみてください。

風車小屋だより (岩波文庫 赤 542-1)

風車小屋だより (岩波文庫 赤 542-1)

  • 作者: ドーデー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1958/01
  • メディア: 文庫


岩波文庫では戯曲版の「アルルの女」も出しています。

アルルの女 (岩波文庫)

アルルの女 (岩波文庫)

  • 作者: ドーデー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1958/11
  • メディア: 文庫



この他ドーデーは「最後の授業」がよく知られている『月曜物語』も書いています。

月曜物語 (1950年) (仏蘭西文庫〈第35〉)

月曜物語 (1950年) (仏蘭西文庫〈第35〉)

  • 作者: 永井 順
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1950
  • メディア: -



戯曲版は読んだ事がないので今度購入してみたいと思います。

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