荒木紅さん@伊藤ハープシコード工房 [演奏会]
伊藤ハープシコード工房さんでの演奏会は二度目です。
本当は三度目になるはずでしたが、前回はアンサンブルの合わせと重なったため聴けませんでした。
前回の記事はこちらです。
http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2009-11-24
http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2009-11-23-1
看板も何もないので初めて行ったときは戸惑いました。
今回使われた楽器は二台で向かって右がフレンチ、左がジャーマンの各タイプです。
今回の演奏は荒木紅さん。プロフィールはプログラムから引用します。
東京生まれ、桐朋学園音楽科、オランダアムステルダム市立スヴェーリンク音楽院、ベルギーアントワープ王立音楽院卒業。
オルガン、チェンバロ、フォルテピアノを専攻。
ベルリン古楽アカデミー、トリオ・マルゴーのメンバーとしても活動。
現在ベルリン芸術大学講師。
プログラムはオール J.S.Bach で
『音楽の衣替え』
〜J.S.バッハの編曲をめぐって〜
と題されています。
曲目は
1. リュート又はチェンバロのための前奏曲、フーガとアレグロ 変ホ長調 BWV998
2. 幻想曲とフーガ イ短調 BWV904
3. ソナタ ニ短調
バッハ自身の編曲、ヴァイオリン・ソナタ イ短調 BWV964
アダージョ、テーマ(アレグロ)、アンダンテ、アレグロ
〜休憩〜
4. 組曲 ト短調 BWV995
プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、ガヴォット(1, 2)、ジーグ
5. 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903
アンコール
クープラン:神秘のバリケード
Duphly:小品
お話によりますと一曲目はオリジナルがどちらなのか分からないそうですが、リュート奏者はチェンバロ用がオリジナルだといい、チェンバロ奏者はリュート用がオリジナルというのだそうです。
どちらでもやりにくいのだそうです。
二曲目の「幻想曲」についてもお話がありました。幻想曲に二種類あって、構成が緊密なかっちりとした曲と発想のおもむくままに書かれた曲で、二曲目は前者、後半緒「半音階的幻想曲〜」が後者だそうです。
三曲目は無伴奏ヴァイオリンのための曲ですが、チェンバロ用の編曲の方が和声も豊かで素晴らしい。
休憩をはさんだ四曲目はオリジナルは無伴奏チェロ組曲の五番です。
アンコールのクープランは妙に現代的な印象のある曲で、特にバスの進行はベースランニングと言われるポピュラー曲のベースのようで興味深かったです。
演奏終了後はコーヒーか紅茶をいただけ、お菓子もあります。
荒木さんとお話しする事もできました。
お茶もそこそこに今回使われた楽器の写真を撮らせてもらいました。
フレンチモデルの鍵盤です。
今回使われたどちらの楽器にも蓋の内側には絵は描かれていませんが、響板には描かれています。
こちらはジャーマンモデルです。
その鍵盤です。
フレンチモデルは白黒が見慣れたものと逆です。
白鍵は象牙製でしょうか、模様が見えます。
周囲の装飾にも手がかかっています。
ジャーマンモデルを少し高い位置から撮影します。
重厚な脚部です。
反対側から見ます。
フレンチモデルも反対側から見ます。
鍵盤に近い位置に作者のマークのようなものがあります。
フレンチモデルの方が箱は角張っていますが、全体のサイズも鍵盤のサイズも大きく、響きは豊かで芳醇です。脚は猫足のようです。
私の前に座っていらした方は日本画家でいらっしゃるようで、頼まれたときは箱だけ預かって絵を描くというようなお話をなさっていました。
CD が販売されていました。
全部で3枚ありました。
1枚はロドリーゴの作品集。ロドリーゴは「アランフェス〜」ばかりが有名なようですが、それだけではありません。
もう1枚はホフマンの作品集。ホフマンは作家として有名なためにその他の才能はその陰に隠れていましたが、最近その音楽にも光が当てられているようです。
購入したのは『ルイーゼのために』と題された、ルイ・フェルディナンド・プロイセン王子の作品集です。フリードリヒ大王の甥にあたる人物で、ベートーヴェンにピアノを習い、演奏と作曲はプロ並みで、作品のピアノパートは高度な技巧が要求され相当の名手であったと思われるそうです。
プロイセン王フリードリッヒ・ヴィルヘルム3世(1770 - 1840)の妃ルイーゼは楽器の演奏に長け、美しく芸術を愛し皆を魅了していたとか。
このディスクは彼女の没後 200年を記念して当時のベルリン宮廷での宴を想定して作られたとあります。
ベルリン国立図書館所蔵の初版譜(スコアなし、パート譜のみ)が使用され、当時のオリジナル楽器又はその忠実なレプリカが使用されているとの事です。
ハンマーフリューゲル(フォルテピアノ)、二鍵のフラウト・トラヴェルソ、ナチュラルホルン、弦楽器もピリオド楽器でガット弦を張り、現代とは形状の異なる弓(バロック弓?)で弾かれているそうです。
チェンバロは装飾的にも美しい楽器ですね。
Bachのプレリュードとフーガ、アレグロですが、リュートではもちろんチェンバロでもよく弾かれる曲ですね。
リュートの音がする鍵盤楽器ラウテンヴェルクのために書いたのではという説もありますね。
by nyankome (2010-11-02 01:09)
綺麗ですね~!うっとりと眺めております。
演奏された方の経歴、すばらしいですね。きっと素敵な演奏だったと思います。
私は「神秘のバリケード」が大好きで、殆ど毎日のように弾いています。
その日の気持ちで凄く表情が変わるので楽しいです。
by Halumi (2010-11-02 09:49)
nyankome さん、こんばんは。
ラウテンヴェルクは武久源造さんの録音で使われていますね。
「アンサンブル音楽の領域 vol.1」「ヴァイオリン音楽の領域 Vol.1」「四季」などで聴く事ができます。
「四季」はトッパンホールで実演を聴きました。
BMW996 は筆写譜にこの楽器で弾くためのものという意味の書き込みがあるようですね。
バッハはこの楽器が好きだったようですから、BWV998 もそうであった可能性はありますね。
by センニン (2010-11-02 21:04)
Halumi さん、こんばんは。
前回聴いた演奏会では蓋の裏にも絵が描かれた楽器が使われました。
演奏は大きな声では言えませんが前回より良かったです。
演奏には説得力がありました。
「神秘のバリケード」、面白い曲ですね。楽譜が欲しくなりました。
お話も面白く、この曲に関しては「クープランの曲はタイトルが神秘的」だとか。
多分また春にも演奏会があると思いますのでチェックしてみてください。結構遠方からいらっしゃる方があるようです。
「素晴らしい楽器」と評されていました。「二台も使って演奏できるとはチェンバリスト冥利に尽きる」とも。
by センニン (2010-11-02 21:17)