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NAGAHARA のハンドメイドとフルコンサート [楽器]

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Nagahara フルートには通常のモデル(ハンドメイド)とフルコンサートと呼ばれるモデルがある事は知られています。フルコンサートモデルの一見して分かる特徴は頭部管が長い事です。全体の長さは同じなので、その分胴部管が短い事になります。

現代のフルートはご存知のとおりテオバルト・ベームが開発したモデルを基本としています。
ベームが改良した点のうち最大のものは従来コニカル(円錐形)であった胴部管をシンドリカル(円筒形)に変更した事でしょう。
それに伴って円筒形であった頭部管が円錐形に変えられました。
リコーダーは現在でも本体が円錐形ですね。

スケール(音程の設計)はベームのものが基本ですが、改善すべきポイントがどうしてもあるので各社が独自に工夫をしています。
Nagahara の HP にも記載がありますが、一番低い音域(第1オクターブ)は計算で完璧なものを作る事ができますが、第二オクターブ以降の音程が合わないのです。
http://www.nagaharaflutes.com/index.html

土曜日に永原氏になぜフルコンサートモデルを作ったのかとお聞きしましたところ、この問題が解決できないからだとの事でした。たとえば第1オクターブの E と第二オクターブの E が完全に正しい音程を持つように作ると、例えば A が合わない。
こうした言わばジレンマを全てのフルートが抱えているのです。


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昨日、改めて 20k のハンドメイドモデルを試奏してきました。
上の写真はフルコンサートを含めて3本並べたところです。

シリアルは左(下)から 711, 750, 730 で、711 と 750 がハンドメイドです。

711 と 750 は同じモデルなのですが、ヘッドクラウンが異なります。


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750 はロッキングクラウンという機構を装着しています。
711 は従来型のクラウンです。

吹いてみますとまず音色が違います。
711 の方が丸みがあってふくよかでウォームな音色です。
750 が別に固くて冷たい音色だという訳ではありません。比較すると、という事です。

750 は吹奏感がスムーズで反応がよく、第3オクターブも無理な力が全く不要で pp も楽に表現できます。跳躍でもミスが少ないでしょう。
これも比較の問題で、711 でも使い込むことによって意のままになるはずです。
もし買えるとするなら私は 711 を選びます。

以前取り上げた記事はこちらです。
http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2009-08-11
http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2009-08-17


ところで並べてみて意外な事に気がつきました。


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足部管の位置を揃えて並べると、フルコンサートは歌口の位置が足部管に近くなっています。
これは大変意外でした。


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永原氏にこの点をお訊きしますと、
 ハンドメイドと FC はスケールが異なる。
 FC はボアを広げた事もあり、ハイピッチ(444Hz くらい)のモデルを基本にしている。
との説明をいただきました。
ボア(内径)を測ってみますと 19.24mm 程度と、確かに少し大きいようです。


フルートの設計は難しいのですね。
まだ発展途上という言い方もできるかもしれません。
モーツァルトが「我慢のならない楽器」と呼んだのも音程の悪さが理由だとの説もあります。


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最後に永原氏の写真を。
モニタで画像を確認していただき、ブログ掲載の許可はいただいています。
どういうわけか少々ブレが見られたので Photoshop で補正しています。

今回の来日は年ぶりとの事。
次にはいつお会いできるでしょうか。

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コメント 4

nyankome

美しい楽器ですね。
ため息が出そうです。
お値段もそれなりですね。
発展途上の楽器というとギターもそうです。
完成されたヴァイオリンなどとは違って、現在でもさまざまな改良がなされています。
by nyankome (2010-10-05 00:51) 

センニン

nyankome さん、こんばんは。
楽器には美しさの要素も重要ですね。
フルートは貴金属が使われる事もあって管楽器の中では他の楽器よりそうした要素が強いように思います。
円高なので値下がりの傾向が現れていますが、muramatsu の 24k やプラチナのモデルなどは 10百万円を超えます。

ヴァイオリンが完成された楽器である事は奇跡のようです。
フルートもギターも時代の要求に応えるという面もあるのでしょうね。
どちらも元々音量が小さい楽器でした。フルートとギターのデュエットが心にしみるのも理由のない事ではないのですね。
ヴァイオリンがあんなに小さいのに音量がギターより格段に大きいのは、ギターがピアノと同じように音が減衰する一方であるのに対し、ヴァイオリンは弓でずっとコントロールできるからでしょうね。
by センニン (2010-10-05 21:18) 

ながぐつ

フルートが音程の悪い楽器なんて、思いも寄りませんでした。
いろいろ苦労があるのですね。
それにしてもオーボエは(T_T)です。
by ながぐつ (2010-10-06 07:50) 

センニン

ながぐつ さん、こんばんは。
そういう訳でフルートのアンサンブルは難しいのです。
そういう意味ではたくさんのキーを使って音階を作るのでなく基本的には三つのピストンで音階を作れる(倍音を使う)金管楽器の方がきれいなハーモニーを作りやすいのです。

オーボエ、やはり音程で苦労するのでしょうか?
by センニン (2010-10-06 20:39) 

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