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モーツァルトとフルート [レッスン]

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先日図書館で「蜘蛛の糸」を調べていたときたまたま棚にあったこの本を開いてみました。

『モーツァルトの手紙』高橋 英郎 小学館 二〇〇七年一月一日 初版第一刷発行

 

たまたま開いたページに、非常に気になる記述がある事に気が付きました。

 

 

P. 223

マンハイム 1777・123 モーツァルトからレーオポルト

 

 「ああ! 僕らもクラリネットを持てたらなあ! ──シンフォニーが、フルートとオーボエとクラリネットを伴ったらどんなにすばらしい効果をあげるか、ご想像になれないでしょう。」

 

一般にモーツァルトはフルートが嫌いだったとされていて、その根拠となっているのは次の手紙です。

 

 

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『モーツァルト書簡全集Ⅲ』 海老沢 敏 高橋 英郎 編訳 白水社

1987年9月25日印刷 1987年10月15日発行

 

P. 523〜 マリーア・アンナ・モーツァルトよりザルツブルグの夫に

マンハイム、一七七八年二月十三日

P. 524〜 モーツァルトの追伸 一七七八年二月十四日

 

 ドジャン氏もあすはパリへ立ちますが、彼のために二つの協奏曲と三つの四重奏曲しか作曲しなかったので、ただ九十六フロリーンをくれただけです。(これが約束の半分だとすれば、彼は四フロリーン間違えています。)しかし、彼にはちゃんと勘定をしてもらわなくてはなりません。というのは、そのことについてすでにヴェンドリングと話をつけてあります。あとの作品はいずれ送るつもりです。

 ぼくがそれを完成できなかったのも、まったく当然です。ここでは静かな時間がぜんぜん持てません。夜だけしか作曲できないのです。したがって朝早く起きることもできません。それにここのひとたちは、いつでも仕事をしようという気がないのです。たしかに、なぐり書きをするんだったら一日じゅうだってできるでしょう。でもこの種の作品は世間に公表されます。そして僕の名前が表紙に出る以上、ほんとうにそれに恥じないだけのことをしたいと思います。それに、御存知の通り、ぼくはがまんできない楽器のために書かなくてはならないときは、いつもたちまち気が乗らなくなります。

後略

 

ここに書かれている「がまんのできない楽器」がフルートを指している事はほぼ確実で、それについては疑問の余地がありません。

そしてモーツァルトとフルートを愛する全ての人が悩んでいるというわけです。

 

以前の記事でもこの事については取り上げていますが、ランパルはそうでないはずだと言っています。

http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2007-02-19

 

 

そうした中でこの小学館の本の内容を目にしたので「これは!」と思ったわけです。

しかしその日付の手紙をこの書簡全集で探しても見つかりません。

岩波の文庫で探しても同じです。

 

困ってしまってネットで検索してみると、分かりました。

日付が一年違っているのです。

 

 

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『モーツァルト書簡全集』 

1990年3月15日印刷 1990年3月30日発行

 

P. 350 モーツァルトよりザルツブルクの父に

マンハイム、一七七八年十二月三日

P. 351〜 

 ファイナー氏も、イングリッシュ・ホルンを吹いていますか?──ああ!ぼくらもクラリネットを持てたらなあ!──シンフォニーが、フルートとオーボエとクラリネットを伴ったらどんなにすばらしい効果をあげるか、御想像になれないでしょう。──ぼくは大司教との最初の謁見で、たくさんの新情報を伝え、たぶんなんらかの提案もしてみるつもりです。──ああ、大司教が望みさえすれば、ぼくたちのところの楽団は見違えるほど洗練され、よりよくなるでしょうに。──なぜそれがそうならないか、主な原因はコンサートがあまりにもたくさんありすぎるからです。──ぼくは室内楽に対して反対しているわけではなくて、──ただ規模の大きいコンサートに対してです。

後略


ザルツブルクの楽団にはクラリネットもオーボエもフルートもなかったようです。

クラリネットやオーボエと共にフルートの音が欲しいと言っているのです。

フルートの音が嫌いではなかったと考えても良いでしょう。


ではなぜあんなことを書いたのかといいますと、ここで引用した一通目の手紙にあるようにドジャン氏が約束したお金をくれなかった事や、当時の演奏家の中に上手な人がいなくて音程が極めて悪い演奏が多かった事などが背景にあるのではないかと言われています。

 

モーツァルトはトランペットの音は確かに嫌いだったようで、小さな頃トランペットの音を聴くと泣き出したそうです。

トランペットに関わる人たちは嬉しくないでしょうね。

 

 

フルートに関わる者にとっては「がまんのならない楽器」という部分だけが広く知られて、モーツァルトはフルートが嫌いだったというイメージが定着しているという状況は困ったものだと思います。

手紙を丹念に読めば誰でも知る事ができるのですから。

 

 

 

 

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コメント 2

とし@黒猫

そういえば、大賀ハスを近くで見たことが
いちどもないです。
by とし@黒猫 (2014-08-27 22:28) 

センニン

とし@黒猫 さん、こんばんは。
千葉公園はモノレールの駅も近いですので、時期になったらぜひご覧になってみてください。
by センニン (2014-08-28 20:55) 

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