三種を聴く:Bolero [CD]
ラヴェル:管弦楽曲集 第2集 ボレロ ラ・ヴァルス スペイン狂詩曲
- アーティスト: クリュイタンス(アンドレ),ラヴェル,パリ音楽院管弦楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2012/02/15
- メディア: CD
しばらく聴いていないので久しぶりに聴いてみようと思い、再発盤3枚を買ってみました。
1枚目は言わずと知れた名盤の SACD ハイブリッド盤です。
最新のリマスターが行われ、50年以上前の '61年の録音とは思えない音質で聴く事ができます。
パリ音楽院管弦楽団は名前の通りパリ音楽院の教授陣や OB 達によるオーケストラで、クリュイタンスの死とともに '67年に解散してしまい、同年にパリ管弦楽団として改めて組織されるのですが、音はすっかり変わってしまっています。
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
- 発売日: 2010/09/22
- メディア: CD
ミュンシュが初代指揮者に就任し、この録音などを残すのですが、ミュンシュはこの録音の年に亡くなってしまいます。この二枚の録音を比べると、クリュイタンスの盤は名盤と言われるだけあって安定感のある演奏で音色にも色気があって言わばフランスのエスプリが感じられると言いたい演奏です。演奏時間はクリュイタンス盤が 15'39"、ミュンシュ盤は 17'04" です。実際に聴いた感じでもクリュイタンス盤はテンポはほぼ 66〜67であるのに対し、ミュンシュ盤は 59くらいのかなり遅く感じられるテンポで始まります。それがチェレスタとピッコロとホルンの部分が終った(165小節)あたりで 62〜63 程度にテンポアップし、273小節目あたりで少し早くなり 309小節目から一段と速くなり、最後は 69程度で終っています。この録音ではトロンボーンがかなり張り切っていて、それは最後近くの 309小節目からが顕著で 319小節目になるとトランペットがトロンボーンを圧するように響き渡ります。トロンボーンもトランペットもメロディーの合間の伸ばす部分ではクレッシェンドまでかけていて、ちょっとやり過ぎの感があります。執拗なリズムと一定のテンポと壮大なクレッシェンドというラヴェルの意図が生かされているとは言いがたいと感じます。この二枚を比べると迷う事なくクリュイタンス盤に軍配をあげます。まず楽器の音色が個性的で、管楽器があのリズムを刻む箇所など1番と2番が交互に担当する箇所など、交替したのがはっきりわかります。スコアではファゴットが指定されていますが、ブックレットには記載がありませんがことによるバソンを使っているのかもしれません。ミュンシュ盤にもフルートとトランペットのユニゾンやチェレスタとピッコロなどの複調の部分の楽器のバランスなど良い所もあるのですが、これはプロデューサーの手柄でしょうね。もっとも、マスタリングも違うので公平に比較するならミュンシュ盤も SACD ハイブリッド版を買わなければなりませんが、改めて買おうという気持にはなりません。
さてこちらのカラヤン盤はまことにお手本のような演奏です。
演奏時間は 15'49" で、ほぼ 66くらいのテンポを保っています。
ここで聴かれるトロンボーンは上手い事は言うまでもないのですが、上記の2枚の演奏がいかにもクラシック奏者が演奏したという感じであるのに対し、こちらの方が上手く揺らした感じでラヴェルが意図したであろうジャズの雰囲気が少しは感じられてさすがと思わせます。
クリュイタンスのビゼーを SACD 盤で聴いてみたくなりました。
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