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スターリングシルバーは純銀ではない [違うだろ]

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先日の発表会での印象が良かったので YANAGISAWA のサックスのカタログをもらってきました。
I さんの楽器は 9930 でなく 9030 ですね。たしかネック(吹込管)は銀製で管体は銀メッキとおっしゃっていました。キーがラッカーなのか金メッキなのかは訊きませんでした。

それにしてもフルートよりだいぶ材料が必要であろうこの楽器をスターリングシルバーで作ると吹込管二本付きですが 777千円(クリアラッカー仕上げ)というお値段になります。
あれ?フルートとあまり変わりませんね。
管体が通常のブラス製のものに比べるとほぼ二倍になりますのでソプラノサックスとしてはかなり高いのでしょうが、フルートの値段に馴れているこちらとしては全然驚きません。


驚いたのはカタログの記述です。
嘘を書いてはいけませんね。
"Sterling" に「正真正銘」という意味があるのは Wikipedia にもある(http://ja.wikipedia.org/wiki/スターリングシルバー)通りで間違いではないのですが、フルートでもおなじみの Sterling Silver は 純度 92.5% の銀の事であって、純銀ではありません。
フルートの場合「総銀」とは言っても「純銀」とは言いませんね。

カタログには "Sterling Silver(純銀)" とありますがこれは明らかに間違いですね。
また次の段で
 純度95%の "Sterling Silver"
という表記がありますが、更にいけませんね。

24k金が「純金(Pure Gold)」ではないのとはやや事情が異なります。

知らない人はこれを信じてしまいます。
メーカーが誤りを広めているとは困ったものです。
YANAGISAWA では本当にこう思っているのでしょうか。

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IWARIN

フルートの材質としての銀について調べたことがありますが、金と同様に銀も99.99%の本当の意味での純銀だと柔らかすぎて使いものにならない。そこで銅などの他の金属を混ぜて92.5%にしたところ、ある程度の硬度が得られた。これを最初に開発したのは確かティファニーだったと思います。
他には銀貨に使われた90%のコインシルバー、これは古いヘインズやムラマツなどが使っていたとか。
それから94.6%のアルタスシルバーを除いて94.3, 95.0, 95.8, などはひとまとめにブリタニアシルバーなどと呼ばれたり呼ばれなかったり、あとは97.0はマスターズ、そして何でも一度粉末にした銀に何かを微量混ぜて固めたという99.7,99.8のピュアシルバーとかメタライズドシルバーはパール、三響、アルタス。気がつくと金以上に銀はバラエティに富んでいるのでした。
いずれにせよ、間違っていたり曖昧な表記はいけませんよね。
by IWARIN (2010-11-25 00:16) 

nyankome

少量の不純物のお陰で金や銀は強くなりますね。
カルミニョーラの「四季」の旧盤は確かモダン楽器です。
新版の演奏の方が表現の幅が広がったように思います。
by nyankome (2010-11-25 01:26) 

センニン

IWARIN さん、こんばんは。
さすがお詳しいですね。

Ag925 の鋳造はティファニーが最初という説も流布しているようですが、実際はもう少し古いようです。
イギリスのウィリアム1世(在位1066~1087年)の時代にこれを本位としたのだそうで、呼び名の由来はヘンリー2世(在位1154~1189年)の時代に銀貨を鋳造していた『スターリング家』が源と言う説がありますがこれには異説もあります。

ティファニーの歴史をひもとくとブロードウェイに文房具、中国骨董、陶器の店が開かれたのが 1837年、銀製品の製造が始まったのが 1845年です。これがアメリカにおけるスターリングシルバーの初めだそうです。この部分が広く知られる元になったのでしょうね。

ルイロットのシルバーは長期間にわたって変色しないそうですが、現在広く利用されている Ag925 という品位も加工しやすさなどとともに比較的硫化しにくい事も優れている点だそうです。
by センニン (2010-11-25 20:58) 

センニン

nyankome さん、こんばんは。
フルートに使われる 24k はごく僅かチタンが混ぜられているそうです。その他の品位のものは大抵銅か銀、パラジウムで、銅が多いと赤っぽくなりピンクゴールド、パラジウムが多いと白っぽくなりホワイトゴールド、同じ割合で加えると黄色っぽいイエローゴールドになるそうです。

カルミニョーラの新録、今度聴いてみたいと思います。
by センニン (2010-11-25 21:04) 

IWARIN

いえいえ、到底センニンさんの足元にも及びません。
銀製品の硫化は銀そのものよりもむしろ含有している銅によるところが多いということで、AG925より銀の含有量がやや高いルイロットなどは変色しにくいということになるのでしょうか。
ヤナギサワのサックス、実は勤務する高校の生徒が楽器を買いたいということで、カタログを取り寄せていたので、見てみました。おそらく最新のものですが、スターリングシルバーや純銀といった表記は一切なく、すべてシルバーとなっていました。紛らわしいということで訂正したのかもしれませんね。
スターリング(正真正銘)=純銀という言い方はもちろん正しくはないのですが、少しだけ擁護すると、洋銀や洋白のことをジャーマンシルバーやニッケルシルバーと言ったりするものの、これらには銀が一切含まれていません。これらと区別するために、正真正銘(スターリング)=純粋な、という意味で純銀と呼んだのではないかと推測することもできるのですが、いかがでしょうか?ルイロットの時代は銀製品を他の材質によるものと区別するためにホールマークという印をつけることが義務付けられていたみたいですし。
by IWARIN (2010-11-26 05:34) 

センニン

IWARIN さん、こんばんは。
銅も銀も硫化する物質ですが、どちらがより硫化しやすいのかについては知識がありません。
Altus が ALモデルで使っているのは Ag946 のアルタスシルバーですからスターリングシルバーより銅は少ないですね。しかし正確な事は言えないのですが、本当にルイロットやその時代の銀製品が殆ど硫化しないのだとすれば、割合の問題ではなくて他に含まれている不純物によるものではないかと考える事はできないでしょうか。
硫黄イオンと結びついて Ag2S、Cu2S、CuS となるのが硫化ですが、硫化しにくいというのは多分硫黄イオンと結び付き易い部分に先に何かが結合してしまっているのではないでしょうか。

YANAGISAWA のカタログ、'09.04.01 現在のものでした。
最新のものではありませんね。
もし修正したのならどこからか指摘があったのでしょうね。

ジャーマンシルバーやニッケルシルバーという表記は今でも目にしますね。多分「銀色」という意味で使われるのでしょうね。

ホールマークは今でも使われていてクリストフルなどの銀製品には刻印されています。ルイロットの時代、ホールマークにも変化があってそのデザインが年代を特定する手がかりになります。
バカラのアシッドサイン、マイセンの双剣のマークのデザインも時代によって移り変わりがあって同様に手がかりとなります。
Akiyama フルートでは当時の銀製品を融かして作ったフルートにはバレルの部分にこのホールマークを付けていますね。

by センニン (2010-11-26 21:44) 

IWARIN

恐れ入りました。
センニンさんは本当に多方面にお詳しいですね。
銀の楽器が酸化もしくは硫化して黒くなるのは、味があるという人もいますが、やはり厄介なものではあります。
どうやら、私は変色させやすい汗質のようで、ステンレスのシャフトまで腐食させて交換してもらったことがあります。タンポの寿命も短くなる傾向のようでした。
その次の楽器は銀にプラチナメッキだったのでメンテナンスは楽でしたが、音は銀というよりはプラチナに近い傾向でした。
メッキ以外に変色や腐食を防ぐ方法はないものでしょうか。
by IWARIN (2010-11-27 00:06) 

センニン

IWARIN さん、おはようございます。
いただいたコメントをきっかけに曖昧な部分は調べながら書いていますのでみんな記憶にある事柄という訳ではありません (^^;)

私は黒くさせにくい体質のようで以前記事にしました FMCフルートマスターズのイニシャルモデル以外にははっきり変色と言えるような変化が認められた楽器はありません。マスターズの楽器についてはメーカーが調査してくれた結果ハードケースに使われた接着剤に原因があった事が判明しています。

私の先生は変色させやすい体質のようで遠目にも分かるほどでした。ある時店内でデモンストレーションがあったとき同じ型の楽器も使われたのですが、それは先生の楽器ではないとすぐ分かったのでした (^^)

Altus のプラチナメッキの楽器は以前試奏しまして記事としても取り上げましたが、傷が付かず鏡のようでした。同じコースで習っている人が一人それを購入しましたが、メンテナンスが楽というのが一番の理由だったそうです。音は確かに銀だけの楽器とは違いましたね。使う人によってかなり違うようですが。

黒変は鉄の赤錆と同じように科学変化ですから避ける事はできないでしょう。しかし例えばアルミは極めて酸化しやすい物質ですが酸化アルミニウムはアルミナと呼ばれていて白色なのでアルミニウムの表面に付着させてそれ以上の酸化を防ぐ目的で使用されます。
コメントに書きましたように銀や銅を硫黄イオンより先に何かと結合させてしまえば少なくとも硫化を抑制させる事はできるのではないでしょうか。楽器に使用するには加工性や音も考慮しなければなりませんが。
by センニン (2010-11-27 08:15) 

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