発表会で使う楽譜をどれにするかをまず検討します。
フルート用編曲の「G線上のアリア」、ヴァイオリン用編曲の「G線上のアリア」を使うという手もありますが、今回はフルート二本にピアノという編成にする事にしましたので、オリジナルとほぼ同じの弦楽四重奏用編曲の楽譜を使う事にしました。

まずは先生と合わせたのですが、最後の小節が妙な感じなのです。




左から全音のスコア、 Schott のヴァイオリンとピアノ用の「G線上のアリア」、fcミュージックの弦楽四重奏用編曲の最後の部分です。
「G線上のアリア」は二度とオクターブ低く編曲されていますので、表面上はその違いはあります。
おやと思ったのはトリルです。

全音のスコアでは [ ] が付けられていますので、これは多分校訂者が付けたものだと思われますが、 [ ] がないものとしてこのままトリルをかけると上の音から始めるとして E-D-E-D という繰返しになってしまいます。これは変です。

聴き慣れた「G線上のアリア」では [ ] なしでトリルが付けられていますから C-H-C-H となります。
おや?半音違いますね。原調に直すと D-C#-D-C# ですが、全音版と全然違います。

弦楽四重奏版はオリジナルのスコアと同じはずですが、 [ ] がないだけで音は同じです。
しかし、この通り演奏すると変なのです。

そこでそもそもはどう書かれているのかを確認するためベーレンライターの「新バッハ全集」の『管弦楽組曲第三番』を取り寄せてみました。




それがこの画像ですが、全音版と弦楽四重奏版はトリルの付けられた位置が違うのです。
ベーレンライター版は D を伸ばしてその後で D-C#-D-C# と演奏します。
何でこんな間違いが出来てしまうのでしょうね。

「G線上のアリア」の方はトリルの付けられた位置は全音版や弦楽四重奏用編曲と同じですが、音は正しく書かれています。
「G線上のアリア」として編曲された時、トリルを一つ前の音符から始めるようにしたのですね。

なるほどと思われた方はぜひオリジナル(管弦楽)をお聴きになってみてください。


さて全音版(弦楽四重奏版も同じですが)には実はもう1つ誤りがあります。




左が全音版、右がベーレンライターの「新バッハ全集」のものです。
全音版は全く同じ事を繰り返すように書かれていますが、実際の演奏では右のようになっています。
何が違うかと言うと、一番下の Continuo のパートは繰り返した後の2回目には十六分音符の動きがなく、二分音符で伸ばしているのです。


一つ目の違いは実際に音にしてみればすぐ分かる誤りですが、二つ目の方は気が付かないかもしれませんね。
本当は自筆譜(ファクシミリ版)に当たるのが良いのでしょうが、音大の図書館にでも行かなければ見る事が出来ません。
私たち素人のレベルでは「新バッハ全集」や「新モーツァルト全集」に当たれば十分でしょう。
その他の演奏譜ではなるべく URTEXT(原典版)を購入すれば良いでしょう。原典版=自筆譜 というわけではないのですが。

ちなみに J.S.Bach のフルートソナタはベーレンライター版とクイケン版(ブライトコプフ版)を使っています。