普段フルートを使っている者にとっては特に珍しいことはないのですが、馴染みのない方のために説明させていただこうと思います。


 


まずトーンホールですが、この楽器はソルダードなのでハンダ付けで作られています。


円筒の管体の上に突き出た煙突のような部分が別のパーツとして作られてハンダ付けされているわけです。


きれいにできるものですね。








 


 


足部管です。


から右に向かって C#、C、H のキー(レバー)です。








C# のレバーを押さえると C# のトーンホールが、C のレバーを押さえると C# のレバーも連動して下がり、 C# と C のトーンホールが塞がります。








反対側から見るとこうなっています。








下側に見えるパイプは H のトーンホールと連動させる機構で、この奥に上記の連動を実現させる同様の機構があります。


 


 



 


これがそうです。


このパイプの両端に繋がっている上のパイプそれぞれが連動します。


 


間の部分をバイパスするための機構です。








手前の算盤珠のような部分の上の玉のような部分でパイプが左右に分かれています。


右のパイプと左のパイプは別々に動きます。


算盤珠はパイプに固定されていてレバーなどの動きをキーに伝える働きをします。








キーの背中側です。


左がキーを押さえていない状態、右が押さえた状態です。


この言わばストッパーを調整することによってキーの開き具合などを調節します。


 







座金です。


これに支柱が立てられます。


 








支柱のネジのすぐ下に見えるのは針状のバネ(一般的なものは縫い針)です。


バネがキーを押し戻します。


 


複雑に見えるフルートもこうした構造を組み合わせて作られています。


トーンホールが一列に揃った “インライン” なら構造はシンプルですが、一部のキーを少しずらして取り付ける “オフセット” や “ハーフオフセット” になるとそのためのパイプや支柱が増え、構造は複雑になり重量は増します。


 


トリルキーなどのオプションを付けるとさらに複雑になり、お値段も増します。


 








キーの造形の美しさも大事な要素です。


 


例えばこのレバーも別に直線的でもいいわけです。


 










この “バッタ” と呼ばれるシーソーのような動きをする “サムキー”(左手親指で操作する)はガタが出やすいので各社が工夫を凝らす部分です。





フルートを横に置いた時、下に見える球状の部分が接地して安定します。








この雫のようなレバーをほとんど常に右手の小指で押さえています。


押さえている間は反対側にある D のトーンホールが開いています。


 


 C#、C、H のレバーを操作するときは小指を使うので D のトーンホールは閉じます。


名器 “Louis Lot” はこのレバーが涙(ティアドロップ)型で、代が変わると変化しますが、憧れのような思いを抱かせます。





 




こちらは以前ご紹介しました初代 Louis Lot の甥、Isidor Lot が初代と同時期に作った楽器です。


 


Louis Lot の楽器が正式にパリ・コンセルヴァトワールで採用されたのが 1860年で、Isidor Lot はこの年に工房を設立しています。


 


この楽器はリングキーですが、見慣れたものとは違います。


クラリネットのキーと同じでかなりの部分を指で塞がなければなりません。


 


これが本来のリングキーです。