予定通り伊藤ハープシコード工房さんでの演奏会を聴いてきました。
詳細は明日アップします。

今回は昨日の記事の続きです。





今回は珍しい事に YAMAHA の木製フルートが二本展示されていました。
Pearl のゴールド、YAMAHA のゴールドの Bijou もありました。

二本の木製のフルートは
 奥側:YFL874W(オフセットリングキー、C足部管、Eメカ付)
 手前:YFL894W(インラインリングキー、C足部管、Eメカ付)
です。
この他にオフセットカバードキーの 814W というモデルもあります。






上がオフセット、下がインラインです。




YAMAHA の木管はジョイントはメタルです。
メーカーによってはここも木製でコルクを巻いています。







胴部管と足部管とのジョイントも同じです。




YAMAHA によれば割れにくい厚さを試行錯誤の末決定したそうです。
たしかに思ったより薄いです。




トーンホールを内側から見ています。




リッププレートは削り出しです。






上が 874W の歌口、下が 894W の歌口です。
オフセットかインラインかという点以外に違いはありません。


このモデルは以前も試奏した事があります。
YAMAHA の木管は良い意味でも悪い意味でも金属製のフルートと比べて違和感がありません。
吹奏感に大きな違いがないのです。
それは持ち替えて演奏するのが容易であるという事ですし、楽器を買い替えようとしたときも障害が少ないという事です。
N響の神田さんは Powell の木管をお使いですが、木管をメインで使う演奏家は古楽の分野を除けば少数派です。

持ち替えて違和感がないだけでなく、音色も同様です。
前田綾子さんはアルバム "minuit" で 884BJ と 894W をお使いですが、うっかりすると違いに気付きません。

音色も際立った違いがないという事は木製らしい音色、トラヴェルソのような音色を求めている人にはもの足りない事になります。
YAMAHA のこのモデルは木製のフルートの中では人気が高いそうです。

二本を吹き比べたところ、違いはやはりありました。
インラインの 894W の方は際立ってスムーズで、すぐ本番で使えそうでした。
しかも高音も鋭さもありながらヒステリックな鳴り方になる事なく木という素材の持つ良さがメーカーの狙い通りに表れているという印象でした。
オフセットの 874W の方はスムーズさにはやや欠けるという印象でしたが、低音の鳴り方が太くボリュームもあり、ユーザーによってはこちらを選ぶだろうと思えました。

買えるものなら 894W を持って帰りたいところですが、この二本は試奏用の備品だそうで、基本的には木製は受注生産なのだそうです。
しかし YAMAHA の展示試奏会ではたしか気に入れば持ち帰れたように思います。
まあ、先立つものがないので持ち帰るのは無理なのですが、個体差が大きいであろうこうした楽器は相性が良いのならたくさんの人が試奏したものだろうが何だろうが手に入れたいと思うのが人情です。




手にした事のある人はご存知だろうと思いますが、素材はグラナディラです。
この素材はクラリネットなどにも使われますが、だんだん入手が困難になっています。
カタログでは分かりませんが、グラナディラには特有のにおいがあります。これが苦手な人もいるようで、もしそうだとするとこの素材の楽器を使うのは難しくなります。
YAMAHA のこれらのモデルは特にこのにおいが強いように思いますが、それは良い素材を使っている事の証なのかもしれません。