アテフ・ハリムさんというヴァイオリニストをご存知でしょうか。
 経歴はこちら(http://www.f3.dion.ne.jp/~aandaart/)にありますが、パリ音楽院のご出身でフランス国立管弦楽団のコンサートマスターをつとめられたそうです。
 エジプトのカイロのご出身、フランス国籍で日本(奈良)にお住まいです。

 何年か前、多分フルートを習い初めてからだったと思いますが YAMAHA 銀座店に行った時店頭でミニライヴがありました。その時はお名前は知らなかったのですが、時間があったので聴きました。
 ブラームスのヴァイオリンソナタ全集が '05.12 に発売されていますが、習い始めたのがその月ですのでその後の春頃だったかもしれません。


 昨年の弦楽器フェアで一本の楽器の音に耳を奪われました。弾き比べられた三本のうち飛び抜けて素晴らしい音色でしたが、安くはありません。悩んでいるうちにそのお店のフェアは終わり、楽器は他のお店に行ってしまいました。
 店長の Iさんにお話ししてみると、奈良のお店で開催されたイヴェントでいつもお手伝いしていただいているプロのヴァイオリニストの方がその楽器をとても気に入り、お弟子さんに勧めたいとおっしゃっていたそうだと言われました。その方というのがハリムさんだというのです。

 それではそのお弟子さんの手に渡るのだなと思いました。

 
 しばらくして何気なくその楽器の事を訊いてみると、フェアは終わったがそのお弟子さんは海外にいらして帰国した後の1月に話してみる事になっているそうだと言われました。そしてなんともう一度音を聴いてみたいならこちらに取り寄せるというのです。先約というわけではないようで、「早い者勝ち」とも言われました。

 半信半疑という心境でした。もう「ご約定済」であるはずの状況なのです。そのお弟子さんが海外にいらしたためでしょう。それにしてもハリムさんがいたく気に入り値段を訊いて「安すぎる」とまでおっしゃったそうで、その話を聞いた時点でもう買い手は決まったと思ったのです。

 以前読んだ「千住家にストラディヴァリウスが来た日」を思い出しました。

千住家にストラディヴァリウスが来た日

  • 作者: 千住 文子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/10/22
  • メディア: 単行本


 そこには、次の候補者のもとに渡るはずであったヴァイオリンが偶然の重なりで予定が遅れ、千住さんに時間ができたエピソードが紹介され、それは「まるでストラディヴァリウス自身が意志を持って千住家に突進してくるよう」だったと書かれています。

 千住さんやストラディヴァリウスと比べるのは大それた事ですが、そんなエピソードを思い出してしまったのです。

 
 予約した日に楽器はやって来ました。
 ヴァイオリンの N先生に弾いていただきました。弾き手も弓も肩当ても弾いた場所も違うのであのとき聴いた音と全く同じではありません。しかしあの楽器に間違いありません。

 この楽器は私のもとに留まる事になりました。




 この楽器は素晴らしい音がします。
 その音を引き出せるように練習に励まなければなりません。
 楽器を信じて頑張るつもりです。