この作者のものは最初に二作読んで以降ご無沙汰していましたが最近新作が出たようで書店で見かけたので三作目以降をまとめて買いました。


三作目では新型コロナが登場します。

すると読んだのはそれよりだいぶ前だったのですね。

その時はそこまでしか出ていなくて次を読みたいと思ったことを憶えています。


宝島社のものは軽いものが多くてじっくり読むようなものは少ないという印象ですが、これもライトではないとは言えないものの結構好きです。


作者の塔山さんは千葉県のご出身のようです。

 

 


 

いつもながら薬と毒についての知識も得ることができて楽しく読み進めました。

写真は最新作ですが、四作目を読んでいて珍しく一箇所誤りと思われる点がある事に気づきました。


第三話 秘密の花園

 P 254

 中でも目を引いたのは温室の中央に広がる一群だった。大きな緑色の葉の間から黄色いラッパのような花が、垂れ下がるように咲いている。

「キダチチョウセンアサガオですね。別名デビルズトランペットと言って、摂取するとせん妄、幻聴、めまい、錯乱を引き起こして、最悪の場合は意識喪失、呼吸停止を起こすこともあります。アメリカでこの木の下にハンモックを吊り下げて寝ていた少年が、香気に当てられて、昏睡状態に陥った例もあるそうです」


描かれている様子からはキダチチョウセンアサガオであると思われますが、別名はエンゼルストランペットです。

デビルズトランペット呼ばれているのは「チョウセンアサガオ」で、こちらは花の形は似ていますが下から上に向いて咲きます。

丈もそんなには大きくはなりません。

マンダラゲ(曼陀羅華)、キチガイナスビの別名もあります。

チョウセンアサガオは華岡青洲が世界初の全身麻酔に用いたことでも知られています。


また、キダチチョウセンアサガオは木というよりは草でまっすぐ伸びるのでこの下にハンモックを吊るすことはできそうにありません。

別途支柱を立てれば可能だとは思いますが。






これがキダチチョウセンアサガオ(エンゼルストランペット)です。







白のものもややピンクのものあります。


チョウセンアサガオ(デビルズトランペット)は撮ったことはないのですが、花の形は似ていて下から上に向かって咲きます。





プロの薬剤師さんが読んだらどういう感想を持つのか興味があります。





想いを寄せる若いホテルマンとそれに全然気づかない毒島さんという関係がまだ続いています。

周囲はみんな知っているというお約束のような設定です。





以前書いたかもしれませんが附子はトリカブトから採れる物質で、毒として使うときは「ブス」、薬(主に漢方薬)として使う時は「ブシ」と読みます。

漢方薬では八味地黄丸などに使われているそうです。


二作目でトリカブトの毒(アコニチン)が使われた有名な事件に言及されています。

その時はフグ毒(テトロドトキシン)も使われて、両者の作用が拮抗したためにすぐ毒性が現れずアリバイ作りに利用されました。

テトロドトキシンの方が早く分解されてあこにチンの作用が現れて被害者は死亡した、という事件です。

検死に当たった医師が死因を不審に思って保存しておいた血液が決め手になりました。





次の作品が楽しみですが、同じ作者の他のシリーズには今のところ興味が湧きません。

元々の職業はホテルマンだそうです。