先日取りげた Isidor Lot のレヴァーについてさらに調べましたところ、T. ベームはこれを Bトリルキーとして作ったらしいということが判明しました。








これはベームの “The Flute And Flute-Playing In Acoustical, Technical, And Artistic Aspects” の英訳初版本のコピー(ファクシミリ)です。


Amazon で入手可能です。








Dayton C. Miller の英訳本は Dover から出ていますが、これは Forgotten Books というところから出ています。


体裁は復刻していませんが、内容はコピーで構成されています。








ハーヴァード大学の蔵書を元にしているようです。










ドイツ語のオリジナルは 1871年、英訳本は 1902年に出ています。




ベームの楽器は最初1831年、次が1832年、改良型が 1847年に作られています。


 







バスフルート in G に一章割かれていますが、今のバスフルート(オクターヴ低い)のことではなく、G. Holst が『惑星』で指定したバスフルート(現在のアルトフルート)です。


 







図が19枚使われていますが、これを憶えておいてください。


 


さてこの本の日本語版は昔 JFC で限定200部で出版されたそうですが、今では目にすることができません。


再版してくれないかなと思うのですが多分無理なのでやむをえず英語版を購入するわけですが、ネットでは独自に日本語訳を公開されている方がいらっしゃいます。


 


まず、日本語訳。


http://huesuki.web.fc2.com/index.html


 


そしてこちらは本の解説。


http://www.boehmflute.com/boehm/preface.html


この二番目のサイトに注目するのですが、「キー機構の説明」でブリチアルディキーについて触れているのですが、ここで Fig. 21 から Fig.25 までの図が使われています。


 


たしか図は19までだったはずです。


 






これが前日触れました Isidor Lot の問題のキー(レヴァー)ですが、押すと親指キーが閉じ、C の音が出ます。


現代の楽器では上にある音孔が一緒に一つ閉じて B♭(A#, Ais)の音が出るわけです。












さて件の本に挿入された図について見てみます。


不鮮明ですが、左手親指周りはブリチアルディキーでなく、ベームのシステム(B - B♭)になっていて、ここで問題にしているキー(レヴァー)はまだありません。


ベームは 1849年に発明されたブリチアルディキーを評価していなかったようなのです。


左から順に音が下がるのが理にかなっているという主張です。








別の図では、はっきりしませんがレヴァーがあるように見えます。








さてこの本では図の番号も異なっています。


ふうむ、ではあのサイトはどの本を下敷きにしているのでしょう?








確認のために Dover から出版されている英訳本を入手してみました。










ファクシミリではありませんが、底本は同じであるようです。


 


 



 


それでも執念で探しましたところ、出版はされていないようですがコーネル大学のライブラリに探している版がありました。


PDF で閲覧もダウロードもできますので、プリントしてみました。


240ページありますがコンビニで A3 に2ページづつプリントしました。


両面プリントにすると薄くなりますが、料金は二倍になってしまうのでこれで妥協です。


 


糊で製本するほかありませんね。


 







確かに載っています。


 


 






出版年は 1922年。


どうやら増補改訂版のようです。


 


 











図がかなり増やされています。











下がベームのシステムですが、 B tr と印刷されています。


上はブリチアルディキーを備えたシステムですが、やはり B tr キーになっています。


これが今回入手した Isidor Lot のシステムですね。


 


H-C と H-C# のトリルはできますが、現在の Cis トリルキーとは同じではありません。


C# トリルキーを使うシーンは次のサイトに詳しいです。


 


でもCis トリルキーをオプションでつける方は極めて少ないのではないでしょうか?


 


これを Ais レヴァー でなく Bトリルキーとして使うメリットはあると思います。


Ais レヴァーを三種類の指使い(B♭の)のうちのひとつとして常時使うという方は別ですが、使ったことがないとか何に使うのかわからないという方は Bトリルにしてもらう(楽器を注文するとき)とか改造してもらうという選択肢があると思います。


 


まず、Cis トリルキーというオプションをつけなくて良いので金額も重量も軽くなります。


右手の人差し指一本でできます。


 


ブリチアルディキーと Ais レヴァーとではキーの動きは全く同じです。


 


通常のポジションで右手人差し指を使う運指では塞がるトーンホールが多くなりますので、響きは上の二つとは異なります。


 


 


以前入手した金属管は Ais レヴァーになっていました。


 


 











 


雨雲は離れたようです。


明日の朝は更新できそうですが、朝になってみなければわかりません。