二枚の KPM とマイセンの陶板画

銀座の（株）創美さんでいつも素晴らしい陶板画を見せていただくのですが、今回も素晴らしいものがありました。

こちらはギリシャ神話を題材とした『運命』というタイトルの KPM の作品です。

老人の姿で描かれているのはアトロポス（Atropus）で、ハサミで運命（寿命）の糸を切ります。

右に描かれている母のような年代の女神はラケシス（Lachesis）で、糸の長さを測ります。

左腕に抱えた花束は誰もが死ぬ運命にあることを表し、右手に持つアポロンとダフネの物語にも登場する月桂樹は深い緑が永遠と不死を表します。

一番若く美しく描かれているのはクロト（Clotho, Klotho）で、腕に抱えた糸巻き（スピンドル）から糸を繰り出します。

KPM の技法の特徴の一つにハイライト（一番白く明るい部分）は顔料を使わず地の陶板の白で表現することがありますが、ここでも糸と薄衣の一番明るい部分は顔料を乗せずに板を見せています。

今回はたまたま同じ素材を描いたマイセンの絵皿が展示されていました。

Die Drei Parzen.

三つの運命。

糸は白の顔料で描かれているようです。

これはペインターの遊びなのか何かの意図があるのか、このマイセンの作品では糸はすでに切られてしまっています。

クロトの手の先にある糸はたるみ、アトロポスの顔の前にもラケシスの手にも糸はありません。

こちらが原画です。

画家は Friedrich Paul Thunmann (1834-1908) です。

こちらも KPM ですが、おそらく実在の人物の肖像です。

盛り上がっているので周囲が映り込んでいます。

帽子の表現も驚くほど精緻で、いつものことながら顔がまるで生きているかのような血の通った表現になっています。

多くの場合顔以外の服の部分などは少し写実度を敢えて下げるような描き方をしているのですが、これはかなり入念に描いていてヴェルヴェットの質感も見事です。

KPM の陶板画は以前も何点か取り上げています。

「酒場のレンブラントとサスキア」（「放蕩息子」）

"La Cigale”（セミ）

肖像画など

Rachel : Jules Joseph Lefebvre

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