ある程度の年齢の人でないとこの映画のことは知らないと思いますが、TV で放映されたこれはとても面白くて強く印象に残っています。








ずっと DVD 化されなくて観ることができなかったのですが、先日検索してみましたら何年か前に発売されていたようです。


待っていた人も多いはずです。








監督、撮影、音楽は『その男ゾルバ』のスタッフで、トム・コートネイは『ドクトル・ジバゴ』で知られています。


 


古いのでアスペクト比も 1.33:1 で、画質も良いとは言えませんが、そんなことは問題ではありません。







冒頭で触れられるのですが、この映画が制作される前年、「パロマレス米軍機墜落事故」と呼ばれる事故が起こっています。

スペイン上空で米軍機同士が衝突し、水爆四個が落下しています。







で、これに続いてこのような字幕が流れます。


(この映画はギリシャが舞台なのでギリシャ語の部分は英語の字幕が出ます)


 


 BUT ONE THING IS ABSOLUTELY PLAIN


 でも一つだけはっきりしてる


 


 THE NEXT TIME IT’S UNLIKELY TO BE SPAIN


 次はスペインではなさそうよ


 


これを見てすぐ連想するのは『マイ・フェア・レディ』です。


 The rain in Spain stays mainly in the plain.


 スペインの雨は主に平野に降る


plain は上の字幕にもあるように “明確である” という意味もあります。


 


『マイ・フェア・レディ』は説明の必要はないかもしれませんが、オードリー演じる田舎娘イライザが言語学者ヒギンズ教授(レックス・ハリスン)にレディに仕立てられるという物語で、まず彼女のコックニー訛りの矯正が行われます。


コックニー訛りというのはロンドンの下層階級の話す言葉の訛りを指していて、大きな特徴は二つあります。


一つ目は H が発音されないこと。


ヒギンズがイギンズになります。


 


フランス語の影響でしょうか。


 


もう一つは “エイ”と発音すべきところが ”アイ” となってしまうこと。


 


上の例文のレインがラインに、スペインがスパインに、ステイズがスタイズに、メインリィがマインリィに、プレインがプラインという具合です。





『マイ・フェア・レディ』が作られたのは 1964年ですから、この映画(1967年)もニヤリとさせる意図があったのかもしれませんね。






さて映画は墜落した(爆弾二つと謎の荷物はパラシュートで投下した)パイロットとナビゲーターが島にたどり着く(泳ぎ着く)のですが、なぜか二人ともパンツ(下着の方)一丁です。


この姿でこそこそと隠れたり食べ物を盗んだりする姿が可笑しくてたまらないのですが、そのパンツが時代を感じさせるだけでなく、パイロットの方はなぜか婦人ものではないかと思われる大きさしかありません。細部がはっきり見えないのでなんとも言えないのですが、ナビゲーターの方は当時の紳士物として普通なんですよねぇ。


 


エンディングでは魚が大量に浮いてきます。


指揮官は「防護服を?」と問われても「もう遅い」というほかありません。


 


フラックコメディですが、いろいろ笑えるポイントがありますし、あの事故を経験した日本ではただ笑ってだけはいられない怖さもあります。


 


表現としては今となってはちょっと古いと思われるところもありますが、オススメです。


 


 


出演者の多くは『黒いオルフェ』のように地元の素人ではないかと思います。