古い記事を検索してみるとこの増永式頭部管が作られたのがもう9年も前のことでした。


その後改良型を経て今に至っていますが、初期型の中古を2年前の四月に入手しています。


 


 


初期型は二本分の材料を使って中間に太い部分を設けていますが、改良型はその部分を膨らませるように作っています。








今日他の頭部管と一緒に改めて比較してみたのですが、最初の印象のままで、とても優れていると感じられました。








2001年にお亡くなりになった増永弘昭さんのアイデアを実現したもので、増永さんの奥様が一手に販売を手掛けられているそうです。








クラウンは多分水牛の角です。








クラウンは真鍮で埋められていて少し重くなっています。








実は久しぶりに手に取ったところ、何かパッとしない感じだったのでどうしたのかと思っていましたら、中で何か音がします。


コルクなどは緩みがないはずなのですし不思議でしたが、クラウンを外して確認しますと、コルクの後ろのこの押さえが緩んでいます。


手元にあったもので緩みがない程度に締めてみますと音はしなくなりました。


そのうえで再度試してみますと、本来の響きが蘇りました。


こんなところの緩みでそんなにも影響があるというのは驚きで、相原さんにお話ししても初耳だとのことでした。


緩んでいるときは何か焦点がボケたような音で響きにも張りがなかったのです。


 


この頭部管の特長は高音域です。


息がスムーズに入り、誇張して言うなら必死に鳴らしているという力みのような感じがなくなって自然なしっかりとした響きが得られ、演奏に良い影響があります。






数字は挙げられませんが相原さんが製作した頭部管の中では単一のモデルでは最も多く売れているそうです。


増永さんの奥様は HP などはお持ちではないようですので検索してお弟子さんたちの線から辿る他ないようですが、この頭部管は手にしてみる価値はあると思います。


 


ただ、若干の物足りなさを覚えるのは(フルートはどれもそうなのですが)特に第二オクターブの C# の響きが頼りないことです。


第三オクターブが良いだけに気になります。


もう一つは好みの問題か或いはこの個体の問題かもしれませんが音色面で特別惹かれるものがないことです。






今回香木リップの頭部管黒珊瑚リップの頭部管も使いました。


https://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2015-04-29-1


香木リップの頭部管は音色はまろやかで反応が良く、やろうとしていることが良く表現できるという印象です。


黒珊瑚リップの頭部管は甘い音色が非常に良く、現代以前の曲ならうってつけではないかと思えます。


象牙リップの頭部管ですと古典やバロックが最適と思えますが、黒珊瑚リップはもう少し新しい時代まで、という感じです。


反応も香木リップに次ぐ良さです。


 


 



 

 



 


この黒珊瑚、今大変評価が高く、特に海外からの引き合いが多いそうなのですが、「珊瑚」という名称がネックになって輸出が難しそうなのです。


 


 


しかしこの通称「黒珊瑚」実はあの赤い珊瑚とは別物で、正式には「深海松(フカミル)」と言います。




なので正式名称の方を前面に出しておけば何とかなりそうだとは相原さんのお話です。