ワーグナーの洗礼を受けたのは高校時代でしたね。


序曲を演奏しました。オケではありませんが。


 


レコードは確かカラヤンの廉価盤(セラフィム。EMI の廉価レーベル)でしたね。


フィルハーモニア管だったと思います。


序曲集でしたが、主要な曲は収録されていて、当時はそれらにどっぷりと漬かっていたものでした。


 


しかし後年カラヤンとベルリン・フィルの録音(EMI)を聴きますとこのタンホイザーだけが聴き慣れたものと違うのでした。


 





ワーグナー:管弦楽曲集 I



  • アーティスト: カラヤン(ヘルベルト・フォン),ワーグナー,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン

  • 発売日: 2014/07/23

  • メディア: CD









ワーグナー:管弦楽曲集 II



  • アーティスト: カラヤン(ヘルベルト・フォン),ワーグナー,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン

  • 発売日: 2014/07/23

  • メディア: CD





今はこの録音はワーナーレーベルになっているようですが、先日の新聞記事によりますと SONY が EMI を傘下に収めたそうですので現在 EMI レーベルで発売されているものは SONY レーベルから販売されるかもしれません。










正式な名称は『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』(Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg)ですが、その違和感は版の違いによるものであることが解説を読んでわかったのでした。


 


フィルハーモニア管での録音はドレスデン盤、ベルリン・フィルによるものはパリ版と呼ばれます。


カラヤンはパリ版を好んだようです。


 


Wikipedia から引用しますと


 


1845年のドレスデン初演では


 不評を買った


ので


 上演後早速改訂に取りかかり、1847年に書き直した。


この第2稿が今日「ドレスデン版」として上演されるものである。


 


1859年にパリを再訪した際、ナポレオン3世から『タンホイザー』上演の勅命が降りた


ので


 台本をフランス語に訳


し、


 音楽にも改訂を施した。


 


 主な改訂内容は、第1幕冒頭のヴェーヌスベルクの部分を改訂して「バッカナール」と称するバレエ音楽をつけ加えたこと、および第2幕の歌合戦の場面からヴァルターのアリアを削除したことである。


(中略)


 この際に使用された版が狭義の意味での「パリ版」であるが、これは今日ではほとんど演奏されない。


 


1875年のウィーン上演に際しては、序曲から切れ目なしに第1幕のバッカナールへ移行する形(序曲の289小節からバッカナールに入る)をとるようにした。


 これが今日、いわゆる「パリ版」として定着しているものである。厳密にはこれは「ウィーン版」と称されるべきで、実際に新全集版では「ウィーン版」として先の「パリ版」と区別が行われている。




という経緯があります。




カラヤンとベルリン・フィル盤ではこのパリ版は


 Tannhäuser And The Contest Of Song On The Wartburg:


 歌劇《タンホイザー》: バッカナールとヴェヌスベルクの音楽


と表記されています。










 




しかしカラヤンの “ドレスデン版” を聴きたいという人は多いようで、ネットでもそれがないかと探している人を見かけます。


 


私もそうなのですが、いろいろ探してみてようやく見つけたのが今回の CD でした。


 


レーベルは EMI で、カラヤンが EMI に残した録音全曲をまとめた(リマスターも施された) CD 全集の中の一枚でした。


ブックレットはワンセットに一冊しか付属しないはずですからこれにはないので録音時期などのデータはわからないのですが、少し古い時期かなと思われます。マスターテープのものと思われるヒスノイズも目立ちます。




よく知られた曲が収録されていますが、「ワルキューレ」がないですね。








懐かしいスコアを引っ張り出します。








 

ドレスデン版です。



ご存知の方には説明の必要はありませんが、この曲はトロンボーン奏者にとっては晴れ舞台ですね。


執拗な弦の音型の上に鳴り響くトロンボーンは吹きやすい音域で聴く人にも演奏する人にも精神を浄化するとでも言いたい爽快感(カタルシス)、達成感とでもいうようなものがあります。


ドレスデン版の最後の盛り上がりが一層そうした印象をもたらします。


だからドレスデン版を聴きたいのです。


 


楽器編成はそれほど複雑ではなく和声も同様ですが、スコアを読みながら聴くとオーケストレーションやシンプルな音の組み合わせがもたらす響きがどうしてこんなにも素晴らしいのか畏敬の念に打たれるといっても良いほどです。


 


ワーグナーが30歳で作曲に取り掛かり、32歳で完成されたこの曲。


ヒットラーがワーグナーを好んだことはよく知られていてそれゆえに今でもワーグナーの音楽を嫌悪する人たちも存在します。


「ワルキューレの騎行」は映画『地獄の黙示録』に使われましたのでご存知の方は多いはずですが、実に効果的な使い方でした。


『タンホイザー』のこの高揚感や戦闘をイメージさせる「ワルキューレ」は確かにヒットラーが好みそうかなとは思えます。