真珠の養殖にはまず良質の母貝(真珠を育む貝)となるアコヤガイを確保しなければなりません。



その方法として昔は海女さんが海に潜って貝を採取していたのですが、今は海中で生まれて浮遊(生後20日くらいまで)している稚貝を集めているそうです。



集める方法として昨日の記事で触れた杉の葉が適しているのだそうです。

天然の貝をただ採るだけでなく、健康で優良な貝を得るための研究(交配など)も行われているようです。

アコヤガイは生まれた時は雌雄の区別はなく成長するに従って分かれるのだそうですが、養殖にはどちらも使うそうです。

アコヤガイの成長に適しているのは水温10℃を下回らない環境(あまり暑くてもダメ)だそうで、その点英虞湾などは内部の水深も深く波も穏やかで養殖には最適の環境であるそうです。



先に核、続いて切片を挿入しますが、核に切片が密着しないと真珠ができませんので、核を挿入した位置がわかりやすいように色を着けます。

 

 

 

核を挿入するにあたっては貝殻を開かせ、器具で固定して開口部からメスを挿入し、内臓(生殖巣)に切れ目を入れます。これだけでもアコヤガイにとっては大変なストレスです。

口を開かせるのも最小限にしますが、これも死んでしまう原因になってしまいます。

 

核と切片の挿入は上記のようにデリケートな作業で、最終的に得られる真珠の品質に影響します。

このデリケートな作業は日本人の手先の器用さが適しているそうです。

 

白蝶貝などを含めた母貝が採れる位置が地図で説明されていましたが、赤道の北側では殆ど日本と同じ緯度、南側は数は少ないですがオーストラリアの横あたりで赤道からの距離がほぼ同じです。

これが生育に適した水温である位置なのでしょう。




核と外套膜の切片を入れた母貝は筏の下に吊るし、あとは付着物(中には貝に穴を開けてしまうものもある)を除去するなどのお世話をします。

 

湾の中は波が穏やかで水の動きが少ないのですが、この穏やかな環境に置くことによって貝の運動量を低く保ち(水の流れが早いと運動量が増す)、貝の成長とそれに伴う真珠を作らせる生殖巣の発達を抑制します。発達してしまうと生殖細胞が多く作られ、良い真珠を得る(生殖巣で作らせる) ためには好ましくないのだそうです。

籠に入れて穏やかな環境に置くのは、核と外套膜の切片の挿入という大手術によって傷ついた貝を養生する目的もあります。

以後の記事で触れますが、養殖に使う貝の50%は死んでしまうそうですし、核を吐き出してしまうものもあるそうです。

 

 

海に戻したあとは貝の健康状態を監視する事が重要ですが、最新のシステムは「カリインガル」といって、貝の外側に磁石とセンサーを取り付け、貝の開閉運動を遠隔でモニターすることによって赤潮など貝の健康を害する事象をいち早く発見できるようになっています。センサーの電源にはソーラーシステムが使われています。

 

 


天然真珠は外套膜のある開口部に近い位置にできますが、これですと複数作ることも可能ですが、大きいものはできません。

生殖巣を利用して大きなもの作らせる事ができるようになったのが養殖の大きな成果です。

 

 

ヒレイケチョウガイなどで作る淡水真珠は以前はきれいな丸いものはできなかったそうですが、今では技術も進みちょっと見には区別がつかないものができます。大きくはありませんが。

淡水真珠がなぜ安いかと言いますと、一つには以前は形が整っていなくて、大きなものも採れなかった事もありますが、たくさん採れ、核も入れないので手間がかからないのだそうです。

 

淡水真珠を使った製品の一つの写真をご覧ください。

 

 

 

これは訪れた真珠島の販売コーナーで「これを」と言った時スタッフの方がわざわざ「淡水真珠でメッキですがよろしいですか?」と確認されたくらいで、とてもお安いのです。

後でクレームを申し出られてはいけないという配慮でしょうが、C国製ではあるまいし千円でお釣りがくる値段でアコヤ真珠が買えると思う人はいないでしょう。



真珠は鉱物ではありませんが、宝石として認められています。
真珠層の生み出す輝きは他の宝石では決して得られないものですが、一番素晴らしいのはカットなどの加工を施さなくてもそのままで完成しているという点です。
ダイヤモンドやルビーの輝きはカットあってこそですし、カットが施されていてもルースは驚くほど高いものではありませんし、原石なら鉱石の愛好家でなければ欲しがらないでしょう。


養殖真珠が誕生した時、当初は「偽物」「まがい物」「まやかし」などとして排斥されたそうです。
しかしできるきっかけは人の手によるものですが組成は自然のものであって、科学的に天然真珠と変わらないと証明されてからは正当に評価されるようになり、今では日本の養殖真珠はその品質において世界一とされています。

昨年の伊勢志摩サミットでは "配偶者プログラム" として各国首脳の配偶者(主催者である安倍総理の昭恵夫人、EUの事実上の元首であるトゥスク議長のマウゴジャータ夫人、カナダ・トルドー首相のソフィー夫人、ドイツのメルケル首相の夫君のヨアヒム・ザウアー氏)が真珠島を訪れました。それぞれのサインが残されています。




 

 

仕込まれた母貝からたった5%(それに次ぐ良質なものが23%)しか採れないという花球真珠は希少で高価です。




不良なものは商品にはなりません。


続いては真珠の輝きを生み出す仕組みです。



 


真珠の表面の顕微鏡写真です。




 


薄い層が幾重にも重なっています。


この層の重なりを「巻き」と言います。




層の模型です。



 


瓦を積み上げた塀みたいですね。

 

 


色の違いです。



 


輝きは光の干渉によって生まれます。



 

 

 

 

 

 


良品と不良品。




選別します。



 

 

 

 

 

 

 

 


大きさでも分けます。




ネックレスの糸を通す穴を開ける機械です。


トンネルのように両側から開けます。

 


 

 

ネックレスやリングに加工されるとしても、真珠自体の美しさが最も生きるように配慮されます。
ネックレスに加工されるものは少し(ほんの少しですが)傷のあるようなものが使われます。
傷のある箇所に穴を開けるのです。

最良のものは後でご紹介します王冠などに使われるようです。



 

 

 


ネクレスを組むための選別作業の様子がビデオで流されていましたが、もの凄いスピードです。

1秒で二個くらい見分けているようです。


 


 

明日はコレクションなどをアップします。






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