練習で使い始めた Isidor Lot ですが、メカニズムの一つが現代のシステムと違うことに気づきました。
1. 通常右手の人差し指を置くキーを押して出す場合、
2. 上の写真の左寄りにに写っている、Ais レヴァーと呼ばれるものを押す(これも右手人差し指)場合、
3. キーの上に乗っているブリチアルディキーを押す(左手親指)場合です。
このうち 1 が通常よく使われる指使いで、 3 を使うこともあります。
2 は 3 と全く同じキーが動くので効果は同じなのですが、1 は塞がるキーが異なります。
2 を敢えて使うことはそう多くはなくて、中には使ったことがないとか何に使うのかという人までいます。
2 と 3 の場合は裏側のキーに加えて矢印のキーが閉じます。
1 の指使いの場合はそれに加えて左隣のキーも閉じます。
一番左で閉じているトーンホールとの間にいくつも開いているトーンホールがあるので音程はほとんど同じなのですが、わずかに違いがあります。
なのでよく使われる指使いである 1 と 3 では微妙に音程が違うことになります。
この三つの指使いについては先日取り上げました運指の本にも説明があります。
さてこれまでの説明は現代のベーム式フルートについてなのですが、先日入手しました Isidor Lot はAis レヴァーの位置にあるレヴァーを押しても B♭は鳴らず、半音高い H が鳴ります。
ブリチアルディキーを左手親指で押さえれば B♭が鳴りますが、このレヴァーを押すとこのトーンホールだけが閉じるので H の音が鳴るのです。
現代の楽器では上の矢印のキーが一緒に閉じますがこの楽器は閉じないのです。
現代のフルートはブリチアルディキーを押すと上側の棒がコルクの貼られたパーツを持ち上げるのでそれに繋がったキーが動く(閉じる)わけです。
Isidor Lot はブリチアルディキーは同じように働きますが、その下のトーンホールにつながる棒が右手で操作するレヴァー(現代の Ais レヴァー)が連動して持ち上げられるようになっています。それによってそのトーンホールだけが閉じるというわけです。
この点について販売店である大久保管楽器店に訊いてみましたところ、この楽器が作られた1900年前後にはこれが普通であったというのです。
それが時代が新しくなるにつれて現代のようなメカニズムに改造することが多くなり、やがてそれが普通になったというのです。
確かに同じ音を出すための仕組みが二つ備わっているというのは不思議なことですね。
まあ左手親指で操作するか右手親指で操作するかという違いはあるので操作性は異なります。
なのでもとは違うメカニズムであったというのは説得力があります。
それに、右手人差し指で H を出すことができるなら H-C、H-C# のトリルが苦労なくできます。
Cis トリルと呼ばれるオプションメカが必要ないのです。
これは便利ではありませんか。
この年代の楽器を見ることがあったらこの点を真っ先に確認することにしましょう。