NHK の土曜ドラマをいつも視ているのですが、先週からは 森 絵都 さん原作の『みかづき』です。


2017年の本屋大賞第二位


(一位は『蜜蜂と遠雷』(恩田 陸)。四位にはやはりドラマ化された『ツバキ文具店』(小川 糸))


となった他、


 王様のブランチブックアワード2016 大賞谷原賞


 第12回(2017年)中央公論文芸賞


ともなっています。








あまり期待しないで視始めたのですが、キャストも良くなかなかよくできていたので原作を読み始めましたが、昨日で読み終わってしまいました。








今日から二度目です。








八千代台や津田沼、稲毛といった身近な地名が出てきますので親しみが持てます。


物語はまだ塾という言葉を教員も知らなかった時代に塾を始めた二人に始まってその子と孫までの物語で、ヒロインの千明の母(シングルマザー)も登場して、時の流れをたどる事ができます。


千明もシングルマザーですが、この背景となっている時代には塾以上にシングルマザーは奇異な目で見られたに違いありません。


 


小学校には行けなかった(「国民学校」に変わってしまった)千明は公の教育というものに根深い不信感を持っています。


用務員室で子供たちに勉強を教えて教え方が上手と評判だった大島吾郎を取り込んで塾を始め(家族も始め)、やがて塾の規模を拡大して行きます。




この辺のエピソードもニヤリとしてしまうのですが、ドラマでは少し設定が変えられていますがそれもまた良かったです。








進学塾と補習塾に分化するなど塾を取り巻く環境と共に塾も変化して千明の考え方も少し変わっていくようですが、それが吾郎と袂を分かつ原因にもなります。


子供は三人姉妹でうち長女は千明の連れ子ですが、個性が際立っていて上手く書き分けられています。


 


やがて子達も家庭を持ちますがそれも当たり前の成り行きでないのが作家の力の見せ所であると思いますが、長女の子は男の子と女の子。


千明と吾郎の初孫である一郎はやがて自分では考えてもいなかった道に進むのですが、この辺の筆の運びも上手いですね。


 


恵まれない家庭の、塾に通うができない子供たちに教育の機会を与える事ができないか。


 


ラストが鮮やかで未来に希望が持てます。


 


塾同士の競争や引き抜き、誹謗中傷、待遇改善要求と独立、文部省との確執と協調など、教育をめぐる時代の変化も描かれていて門外漢には興味深く読む事ができます。








モデルは市川市真間で創業した市進学院とのことです。


 


歳を重ねてからの大島吾郎の姿には柴田恭兵のイメージがかぶりますが、ドラマで吾郎を演ずる高橋一生がどういう人物を見せてくれるのかも興味深いです。


千明を演ずる永作博美は吾郎を取り込んでゆくところなどぴったりという印象ですが、第一回で見せた病床の姿はいまひとつ(メイクのせいか)という印象でした。


 


 


勉強ができない子供たちは総じて落ち着きがなく一つのに集中する事ができない。


自分で問題を解く事ができて解ることの喜びを知れば伸びていくことができる。


 


 


子供の成績がどうして伸びないのか、その理由と解決策も述べられていて(全てがこうであるとはもちろん言えないでしょうが)教育に関心のある人には読んで損のない物語だと思います。