古い本ですが、長らく読まれ続けた米川正夫訳の『カラマーゾフの兄弟』です。




初版は昭和44年8月25日、これは昭和47年8月30日の8版です。



先日芥川の「蜘蛛の糸」を取り上げましたが、底本の一つではないかとされていた「一本のねぎ」がこの小説の第7編 "アリョーシャ" の 第三 です。


その中で語られる物語のあらすじはこうです。

 ある意地悪なおばあさんが死んだとき、何も良い行いをして来なかったので「火の湖」に投げ込まれました。

 おばあさんの守護天使はそのおばあさんが昔畑からねぎを抜いて哀れな女に恵んだ事があったと神様に申しあげると、神様はねぎを抜いてきて投げ込まれた場所に差し出して掴まらせよと言います。


あとは「蜘蛛の糸」と同じような展開でねぎに掴まったおばあさんが「私のねぎだ」と他の者たちに言うとねぎは切れてしまうというものです。


この小説が単行本として出版されたのは 1880年(明治13年)。

『赤い鳥』創刊号が出たのは 1918年です。


「蜘蛛の糸」の底本は今では鈴木大拙訳の「因果の小車」であるという事がほぼ定説であると先日書きましたが、芥川はこの小説も多分読んでいると思います。

先日手にした宝島者の文庫には「歯車」も収められていますが、その中に『罪と罰』やこの小説の名前が出て来るのです。

タイトルや主人公の名前が同じである事や道具がねぎではなくて蜘蛛の糸である点など確かにそうだろうと思えますが、「因果の小車」の大部分を占める説教的な部分を除いて童話として再構成するにあたって参考にした可能性もあるかもしれません。




鈴木大拙訳の「因果の小車」はまた改めて取り上げます。



 


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