初代柿右衛門が赤い柿の色を定着した事に成功した逸話は小学校の教科書(「尋常小学 國語讀本 巻十」)に掲載されてある年代以上の方には普く親しまれています。




学年は尋常小学校五年です。

現在の小学校と同じ6年制の時代です。




手元に三冊集まったのですが、一冊は大正15年、




他の二冊は昭和4年に発行されたものです。




この挿絵には色が付けられていますが、これは使っていた当時の生徒が塗ったものと思われます。




この絵柄と同じ場面を描いたものが今でも柿右衛門さんの作品にあります。




絵柄は二種類あって、ひとつはこの成功以前のもの、もう一つが教科書と同じ成功した後のものです。



エピソードは九番目の題材として登場します。


当時は喜三右衛門という名前でしたが、庭の柿の木に鈴なりに成った柿の実に夕日が当たった様を見てその色に感動し、なんとかその色を出したいと作品作りにのめり込み、年月が経つうちに暮らしに困るようになり弟子も皆離れ、しまいには狂人と嘲れるようになります。


五、六年も経った頃ようやく納得のいく色を出す事に成功し、名を柿右衛門と改めます。



この教科書は復刻版なら今でも Amazon で手に入りますが、手元にあるのは "当時もの" の現物です。



昭和4年のもの



大正15年のもの


三冊のうち二冊には名前が書かれていました。

小学生とは思えない文字ですね。


教科書なので書かれる事が普通でしょう。


この教科書をお使いになった方は今でもお元気でいらっしゃるのでしょうか。

私の父は昭和二年生まれです。

多分この後の「柿の色」とタイトルが改められて内容も簡潔になった版を使ったのだろうと思います。


先頃お亡くなりになった十四代柿右衛門さんも著書『余白の美』の中でこの教科書で勉強した事をお書きになっていらっしゃいます。




余白の美 酒井田柿右衛門 (集英社新書)

  • 作者: 十四代酒井田 柿右衛門
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 新書

 


感慨深いものがありますね。



 


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