昨日に続いて「千の風になって」です。
まず原作者探しのノンフィクションが今日届きました。
あとでじっくり読む事にしますが、この本によれば 2009年7月、マリー・E・フライ が原作者として文化庁著作権課に登録されたそうです。

昨日ご紹介しましたサイトの他にこんなサイトもあります。
http://longtailworld.blogspot.com/2009/02/attribution-of-do-not-stand-at-my-grave.html
こちらによりますと Mary E. Frye の書いた詩はもともと 16行あったそうで、それを贈られた方のご両親が 12行に直して葉書に刷って配ったのが世に出た最初であるようです。

オリジナルの詩が書かれたのが 1932年だそうですが、それ以降広まる過程でいろいろ変化が生じたようです。
実際、昨日触れました新井氏と南風氏の訳の元になった英語詩も少し違いがあります。
英語詩は著作権が放棄(正確な表現ではありませんが)されているそうですので、引用します。

新井版
 a thousand winds

Do not stand at my grave and weep;
I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow.
I am the diamond glints on snow.
I am the sunlight on ripened grain.
I am the gentle autumn's rain.

When you awaken in the morning's hush,
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circled flight.
I am the soft stars that shine at night.

Do not stand at my grave and cry;
I am not there, I did not die.


南風版
 A THOUSAND WINDS

Do not stand at my grave and weep,
I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow;
I am the diamond glints on snow.
I am the sunlight on ripened grain;
I am the gentle autumn's rain.

When you awake in the morning hush,
I am the swift uplifting rush
Of quiet in circled flight.
I am the soft star that shines at night.

Do not stand at my grave and cry.
I am not there, I did not die.  




オリジナルの原詩
  
Do not stand at my grave and weep,
I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow,
I am the softly falling snow.
I am the gentle showers of rain,
I am the fields of ripening grain.

I am in the morning hush,
I am in the graceful rush
Of beautiful birds in circling flight,
I am the starshine of the night.

I am in the flowers that bloom,
I am in a quiet room,
I am the birds that sing,
I am in each lovely thing.

Do not stand at my grave and cry,
I am not there. I do not die.



短縮(ポストカード)版

Do not stand at my grave and weep.
I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow.
I am the diamond glints on snow.
I am the sunlight on ripened grain.
I am the gentle autumn rain.

When you awaken in the morning's hush,
I am the swift uplifting rush
of quiet birds in circled flight.
I am the soft stars that shine at night.

Do not stand at my grave and cry.
I am not there; I did not die.


昨日触れましたサイトの他にこちらもご覧になってみてください。

新井満氏へのインタビュー(原作者について)が掲載された週刊誌の記事を紹介したサイト。
http://a-gemini.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-be17.html

新井氏行為と南風氏の主張(新井氏を糾弾している)について。
こちらの内容には共感します。
http://www.celestial-spells.com/logs/2010/03/post_67.php


"A Thousand Winds"
をどう訳すかは迷うところですが、thousand には千という意味もありますし、a thousad 〜 でたくさんのという意味で使われる場合もあります。
日本語でも
 八:四方八方、八方美人、八岐大蛇
 十:十人十色
 百:百科事典、百貨店、百姓
 千:千変万化、千載一遇、
 万:波瀾万丈
など、それぞれに "全ての" とか "たくさんの" という意味で使われます。

なので「千の」と訳しても「たくさんの」と訳しても良いのでしょうが、そもそも風は水やコーヒーなどと同じで数える事ができません。
「千」という言葉の響きもたくさんという意味合いも活かしたいなら「千 "も" の」としたらどうでしょうか。
もちろん、詩として響きが良いかどうかは別の問題です。


このサイトでも言及されていますが、南風氏の訳はオリジナルの英語詩を詩としてそのまま訳し、新井氏は英語詩を元に歌える詩(詞)として再創造したものだろうと思います。
言葉を繰り返すことによって歌詞として自然なものになっていると思います。

以前メロディーが「哀しみのソレアード」の剽窃であると週刊文春に書かれた事がありましたが、それについて当時取り上げていますので、よろしかったらご覧になってみてください。

http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2007-04-23
http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2007-04-24
http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2007-04-25

私は最初に新井氏の詩を読んだのでその詩から受けるイメージが頭に定着しています。
歌のメロディーを聴いた時、少々違和感を憶えました。
詩の持つ雄大なイメージ、輪廻、永遠、優しさ、救い、慰めなどの混じりあったイメージと歌いやすい平易なメロディーとがどうにも一致しなかったのです。
メロディーと言葉のアクセントについての違和感などは以前の記事で触れました。

オリジナルの英語詩を自分で訳して自分でメロディーをつけられれば問題ないのでしょうが、いまのところうまく行きそうな見込はありません。


さてここでも問題になっている著作権ですが、特許や実用新案と違って著作権は登録を要しない権利で、著作物が生まれたと同時に発生します。
ご紹介しましたサイトで「登録」という言葉が使われていますが、例えば日本音楽著作権協会 (JASRC) に登録(正確には管理を「委託」)することと著作権を保持する事、利用料を払う/徴収する事とは別の事です。
仮に JASRAC に登録していない曲について著作権を有する人(著作権者)が楽曲を利用したい人に使用を許可するかどうかは著作権者次第ですし、使用にあたっての使用料を要求するかどうかは別だという事です。自分の作ったものを引き合いに出して恐縮ですが、「風太くんのうた」や「風太くんの子守唄」を演奏してみたいと言われた場合、承諾するかしないか、使用料をもらうか無料で承諾するかは私次第というわけです。

いろいろ blog などを読んでみますと、著作権が生きているために(blog で)使えなくてけしからんという意味の事を書いている方もいらっしゃいますが、それは認識が違っていると言わなければなりません。利用の許可を申請し許諾が得られれば使ってもいいのです。それに伴って使用料の支払いを求められるなら支払えば良いのです。無料で自由に使えないのがけしからんというのはそれこそけしからんというものでしょう。

なんだかまだ重要な事を書き漏らしているような気がしますが、今日はここまでにします。