以前取り上げた事がありますが、その時購入した楽譜がこれです。
以前は伴奏をアレンジし直してオカリナで演奏したのですが、またやってみようかと考えています。
しかしその時の楽譜が見つからないのでまた新しく編曲しようかと思います。
元はアイルランド民謡ですが、ノーベル賞作家の詩人イェイツ(イエーツ。William Butler Yeats.1865-1939) が収集して編集し、詩集 “The Wanderings of Oisin and Other Poems” (1889年)に収録されたそうです。
演奏は波多野睦美さんがお気に入りです。
詩を収めた素敵な絵本もあります。
どちらも日本語訳が収録されていますが、それぞれ異なります。
多分 CD は波多野さん、本は望月さんが訳しているのでしょう。
訳は波多野さんの方が気持に合います。
楽譜は BOOSEY & HAWKES のもので、今でも Amazon で入手できます。
民謡なので著作権は気にする必要がなさそうなので今回ここに掲載します。
収録するものによって微妙に違いがありますが、楽譜のものを採用します。
当時のアイルランドでは有用な木である柳を植えた園を郊外に持つ事が一般的であったそうです。
柳は英語では普通 willow が使われるようですが、アイルランドの古い歌ということで salley が使われているようです。
英国出身のビートルズの「のっぽのサリー」(long tall Sally)、漫画「小さな恋のものがたり」のサリー、どちらも背が高いわけですが、柳だからでしょう。
Down by the Salley Gardens
Down by the Salley Gardens
my love and I did meet;
She passed the Salley Gardens
with little snow-white feet.
She bid me take love easy,
as the leaves grow on the tree;
But I being young and foolish,
with her would not agree.
In a field by a river
my love and I did stand,
And on my leaning shoulder
She laid her snow-white hand,
She bid me take life easy,
As the grass grows on the weirs;
But I was young and foolish,
and now am full of tears.
転載する訳にはいきませんので、自分なりに訳してみます。
down by the 〜
は道を下って◯◯に行く、というように訳しがちですが、「あそこの、」というように方向を提示してその後で具体的な場所を示すというようなニュアンスがあります。
garden
は "庭" とすると日本では一戸建ての庭をイメージしていますし、先に説明しましたように離れた場所にまとまって柳が植えられているスペースなので "園" でなければならないと思います。
下り坂の途中の庭、ではなくて先に説明しましたように郊外の柳を植えた一角を想定しますので、木の生い茂ったその中で恋人と会う、というシチュエーションが似合うと思います。
pass
は通り抜けた事を表しますので、恋人がその柳の園の向こうからやってくるようなイメージです。
field
は草原とは限りませんが、続くフレーズに草が茂るとありますので草原をイメージします。
前段の little snow-white feet と後段の snow-white hand が呼応しています。
hands でなく hand なので片方の手ですね。
後段は彼の "なで肩" に彼女が手を置くわけですが、柳(white willow)のような(細くて白い)腕としてみました。
ここは少しニュアンスが変わってしまいました。
を生かしきれませんでした。
「肩に手を置く」より積極的なイメージになります。
※2016.9.17 追記(2)
訳を変更しました。
肩を引き寄せる とした箇所を少し元のイメージに近づけるように変更しました。
前段:But I being young and foolish,
後段:But I was young and foolish,
前段はその時に身を置いている現在形、後段は今過去を思い出しているので過去形なのですね。
young と foolish が二回出てきますが、それぞれ 若くて愚か と訳す手もありますが、日本語は文字数が多いので前段の訳に "若い" 、後段の訳に "馬鹿" という言葉を使いました。
「馬鹿」より「愚か」の方が良いのですが、「若かった」「馬鹿だった」で少し韻を踏むようにしました。
「立つばかり」と「泣くばかり」も近い響きを選びました。
agree のイメージが生かしきれませんでした。
強く拒否もできず、さりとてその言葉には従えないという心情を「立つばかり」としました。
だめ押しのように「柳」を使いました。
前回の変更と合わせて
柳の園
川のそばの field
という場所の違いが一層明確になったと思います。
weirs
は井堰(川の流れをせき止めたところ)ですが、これは多分前段と合わせて選んでいるためで、せき止めた場所以外の川の周囲にも草は生えるでしょうから、水辺としました。
梢と韻を踏めれば良いですし、梢以外の言葉もありそうですが、ひとまずこれで。
※2016.9.17 追記
訳を変更しました。
the tree とあるので柳にしました。
"茂る" と "繁る" を使い分けてみました。
男が若くてウブだった昔を回想して、恋人の誘いに乗れなかったことを悔やんでいる内容です。
恋人は去ってしまったのでしょう。
なんだか心に響くのです。
2016-09-16 21:09
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素敵な歌詞ですね。情景思い浮かべて聴いてみたいものです。
by yamatonosuke (2016-09-17 01:24)
yamatonosuke さん、おはようございます。
ああしておけばよかった、あんなこと言わなければよかったと思うことは誰しもあることでしょう。
原詩を忠実に訳すと田舎らしい、もう少しあからさまなイメージが浮かんでくるのですが、 CD でも絵本でもその辺はうまく訳してあるなあと思います。
波多野さんの声は美しく、伴奏のつのださんの演奏も素晴らしいのでおすすめです。
CD に使われた望月さんの絵と絵本も素晴らしい(布に染色)のでおすすめです。
by センニン (2016-09-17 08:16)