少し前に読んだ本です。



デビュー作「元彼の遺言状」は興味を惹かれなかったので読まなかったのですが、本作は戸籍を調査するという内容に惹かれて読みました。

自分もある時家系図を作ろうと思い立ち古い戸籍を辿ったことがあるのが関心を持った理由です。


「探偵」とありますが、探偵業法に定められている探偵ではないということは作中(P147)で触れられています。

調べてみると探偵は戸籍を調べることもあるでしょうが特定の人(存命の人)に関する調査を行うものとされています。

この作品のヒロインは既にこの世にいない人の戸籍を調べます。


余談ですが故稲見一良さんに「猟犬探偵」という作品がありますが、それも正式の呼称でなくて通称であるということになります。












著者は東大法学部卒の現役の弁護士でいらっしゃるとのこと、さすが文章にもおかしなところはなくよく調べて書かれています。


ただ一箇所読んでいて引っかかったのはクライアントの言葉で

戸籍謄本もそのまま残っているようです

とある箇所(P9)ですが、戸籍謄本というのは戸籍の写しであって、役所から交付される文書です。


しかしその後のヒロインの言葉に

 「残念ですが、ひいおじい様はすでに他界されている可能性が高いように思います。死亡届が出されない限り、戸籍は残り続けます。(後略)」(P147)

とありますので、ここは多分素人が使いそうな表現として敢えて書いているのだろうと思います。


こういう職業があるのかどうか寡聞にして知らないのですが、顧問弁護士がいるという記述もあるのでそこそこ仕事があって利益も出ているという設定なのかなと思います。


キミンは戸籍を取れないが、キジならとれる(後略)」(P280)

 棄民の子供は戸籍を取れないが、棄民が捨てた子供なら戸籍をとれるのだ。(P281)

という箇所にはなるほどと思いました。


四話までが連載されたもので第五話は書き下ろしとのことですが、よく調べていろいろなテーマをよく盛り込んであると思います。


遡って過去の作品も読んでみようかなと思いました。


続編を望む声もあるようですが、ヒロインはこの仕事を始めた動機となった問題をすでに解決してしまいました。

前作のようなシリーズにするには何か新しい工夫が必要かもしれません。










さてこちらは今売れているようで、Amazon でも高く評価する声が多い本です。








タイトルに惹かれて手に取り、目次にも目を通して購入しました。

どのように論を進めるのか興味を持ったのですが、誌面のレイアウトや文章が独特で次第に読むのが苦痛になり、中断しました。








独特というのはまず小見出しを四角で囲って上下の中央に文字を配置していることです。

次にそれほど長くない文章をいくつか繋げて一つの塊とし、次の塊との間に一行空けていること。

まるでパワーポイントなどで作られたプレゼン資料のようで、ページを捲るスピードは速くなるのですが、これにはとても違和感があります。







そしてこの "「」" の多用。

やりがちですがこれは鬱陶しいです。


紙面のレイアウトなどは出版社と編集者の責任でしょう。

"「」" の多用もそうですが、受け手である読者にどのように受け取られるかという視点が欠けているのではないかと思ってしまいます。



音楽家で言えば優秀な演奏家が必ずしも優秀な教師あるとは限らないと言われますが、述べる内容が優れていることと文章が読みやすいか否かは必ずしも一致するとは限りません。


科学者の書く文章では例えば福岡伸一さんのものなどは内容の良さに読みやすさが伴っている例だと思います。



中断していますが、多分もう手に取らないだろうと思います。