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良い訳はあるのか:CARUSO [好きな歌]

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日本語訳をいくつか見ているとどうもニュアンスの違いが気になって仕方がありません。

昨日取り上げましたサイト(http://www.geocities.jp/pppppppihyghhg/Paroles/lara-fabian/caruso/caruso.htm)ではサビの部分の後半を
 もう鎖で縛りつけられてしまったように
 血管の中を流れる血は沸き立ちそうだ、わかるだろう
としていますが、紹介されている小瀬村氏の訳では
 あなたはこうして鎖を
 その熱い血で解き放ってくれる
としています。
かなりニュアンスが違いますし、そもそも何を描写しているのかわかりません。

また新たに見つけたこちらのサイト(http://ameblo.jp/toranekoland/entry-10624566215.html)では
 鎖で縛り付けられるようだ
 血管の中の血が溶けてしまいそうだ
としていますし、最も正確と言われているらしい次のサイト(http://www.danceview.co.jp/blog/rinko/2009/06/post_702.html)の訳では
 この絆は体の中をめぐる熱い血さえ溶かしてしまうんだ
としています。
こちらの二つは「血を溶かす」としていますが、そもそも血液は液体なので、それが溶けるというのはイメージできないのです。


"鎖" はともかくとして、 "血管" とか "血" というのはちょと唐突な感じがします。
最後に引用したサイトでは "鎖" とせずに "絆" としています。

手元にある簡単な辞書を引いてみますと
 catena は "鎖" とか "束縛" "絆"
 sangue は "血液" "血筋、血統、家系"
 dentro は "中で" "内心で、ひそかに"
とされています。


歌詞で韻を踏んでいますから普通の文章に比べると意味よりも音が似ている単語を選んでいますので、解釈しにくくなっています。

昨日ご紹介しましたサイト(http://emilia.exblog.jp/4216508/)の内容によりますと
 ソプラノ歌手との秘めた関係が裁判沙汰になって破局を迎える
とのことですから、
 ((こうしていると))
 (許されない関係という)束縛を
 (私の中で)解き放ってくれる
と解釈することもできそうです。
 sangue をどうするかが問題ですが、もう少し詳しい辞書にあたってみようと思います。





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コメント 2

すとん

 お久しぶりです、すとんです。いつもROMで読み逃げしています。

>もう少し詳しい辞書にあたってみようと思います。

 たぶん、いくら辞書にあたっても解決しないと思いますよ。と言うのも、sangueは血液なんだけれど、オペラとか歌曲とかでは、そんな意味で使うことは、まずないですから。

 じゃあ、sangueは何なのかと言えば、感情とか熱情とか激しい気持ちとか願望とか嫉妬とか、まあそういうモノ。イタリア人は、全身を巡る血管の中を流れる血液に、自分たちの感情が載っていると考えるんですよ。だから、興奮すると、血液が煮立っちゃうし、目の前が真っ赤になってしまったり、頭に血が上ったりするんだけれど、それをモロにそのように感じて、表現しちゃう人たちなんです。

 だからsangueは血液なんだけれど、イタリア人にとっては、単なる血液ではなく、精神そのものだったりするんです。でも、そんな事は辞書には載っていないです。と言うのも、これって俗語というか、口語的な表現らしいんですね。ですから、インテリな人たちは絶対に使わない表現でもあるんです。なので、辞書には載らないんです。イタリア語には、このように、普通に使われているのに、辞書には載っていない言葉って、たくさんあって、歌曲とかオペラとかの翻訳では、辞書はあまり役にたたない雰囲気があります。

by すとん (2015-11-12 22:31) 

センニン

すとん さん、お久しぶりです。
いやこれはありがたいコメントです。
さすがの見解です。

日本語でも血が沸くとかはらわたが煮えくり返るなどという表現はありますものね。

例の部分、
 ma tanto tanto bene sai
と韻を踏んで
 che scioglie il sangue dint'e vene sai
とあるので静脈が出て来るし血液が出て来るのでしょうね。

最初の部分、訳によっては
 少女を抱いて
としていますが、ちょっとニュアンスが変わってしまうような気がします。
 恋人を抱きしめて
とした訳の方が適切ではないかと思います。
 「娘」
とするのも間違いではないでしょうが、自分の子かなとも思ってしまいます。


辞書は小学館の中辞典がもう届きました。
昨日は
 袋小路に迷い込んで
 壁にぶち当たって
 煮詰まって
 お手上げ
でしたが、コメントをいただいて
 目から鱗が落ち
ました。

上のような表現を外国語に訳そうとすると、確かに直訳では意味がわからなくなるでしょうね。
日本人の目には鱗があるのか、と。


なお、検索してみたら次のサイトで俗語を紹介していました。
http://www.geocities.co.jp/aromazzi/linguax.html


ある Tuba 奏者の名前は地域によっては日本でも放送禁止に当たる意味になるそうです。
http://www.rogerbobo.com

教えていただいたような表現をオペラ歌手が歌うというのも日本の歌手だったらあまりないのかもしれませんが、ナポリ民謡など、馴染んでいる日本語の歌詞のオリジナルにあたってみると違うニュアンスがあるのかもしれませんね。


なお、Lucio Dalla 自身は何も着ていない姿でピアノの前に座っている写真を使うなど、かなり変わった性癖がある人であったようです。

by センニン (2015-11-13 20:44) 

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