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人間なのです:DVD を視て:ベルリン・フィル [DVD]

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Amazon の評を見ると実にいろいろで興味深いです。

 

実際に視てみると、まずこれは映画であるということを改めて認識させられます。

流れるような映像は一種の音楽であるように思えます。

 

 

オープニングは衝撃的で、オーディションの場面で始まります。

しんと静まり返った会場の客席にはベルリン・フィルのメンバー。

舞台で演奏するのは打楽器奏者一人。

 

無表情に見える審査員に見下されているように思えてしまうそのプレッシャーが強く伝わります。

 

 

 

演奏ツアーは二度目の北京と東京を別にすれば皆初めての土地です。

二日演奏して飛行機で移動。

機内ではアイマスクをして仮眠を取る団員の姿が映し出されます。

 

演奏される曲はベートーヴェンの「英雄」と R. シュトラウスの「英雄の生涯」。

どちらもカラヤンが得意とした曲で、カラヤン自身が自分をそう見立てていたと言われています。

そしてラトルが力を入れているトーマス・アデスの現代曲「アサイラ」。

 

 

試用中の比較的若い団員などのインタヴューが挟まれます。

試用期間は2年間。

これは厳しいですね。

 

演奏技術があれば良いというものではないことは人間の集団であるからには当然と言えば当然です。

ブックレットにはザビーネ・マイヤー事件のことも書かれていますが、指揮者さえ団員が選ぶこのオーケストラでは団員がノーと言えばノーであるということは動かせないのですが、カラヤンがそれに抗ったことが「事件」となり、カラヤンとオーケストラは決別します。

 

 

楽器が他者とのコミュニケーションの手段だったという多くの団員達。

いや、楽器でしかコミュニケーションできなかったと言った方がよさそうな、意外な素顔。

 

ツアーの合間には子供のような幼稚さを見せる団員。

 

オフのときにはジョギングする団員。

 

劣等感の塊だったという団員。

吃音があったという団員。

オーケストラの音楽なんて退屈以外の何物ではなかったけれど、ユースオーケストラに参加して世界が変わったという団員。

 

ソリストとして演奏したいという願望を隠せない団員。

日本人のヴィオラ奏者は旦那様に「どうせお前の音など聞こえないのに」と言われると話す。

オーケーストラの一員として演奏するということはそういうこと。

 

伝統があるのだと言う団員。

伝統は引き継がれなければならない。

 

 

ある団員は

「ここで一緒に演奏すれば誰だって上手くなる。

 上手くならなけりゃ人間じゃない」

と言うけれど、それはこのオーケストラに入団を許されたレヴェルであるからでしょう。

 

 

カラヤンの時代に徹底的に鍛えられたこのオーケストラでさえ現代音楽だけではお客が呼べない。

幸運にも演奏会で取り上げられても次があるかどうかはわからない。

CD を売るにも戦略があります。

 

ツアーの合間にはマスタークラスも開催されます。

 

東京ではアークヒルズのカラヤン広場のカットが挟まれます。

 

 

ラストではオーディションの結果が述べられます。

合格する人も去る人もいます。

 

 

けっして神様の集団ではないのですが、生み出される音楽は完璧で、弱さや劣等感もある奏者達からこのような音楽が生み出されるということ自体が感動的です。

 

特典ディスクはまだ視ていないのですが、時間を置かず視てみたいと思います。

 

 

 

 

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