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年齢が加算されるタイミングはいつなのか [豆知識]

成人年齢の引き下げが話題になっていますね。

その是非についてはここでは触れませんが、そもそも成人とされる 20歳("才" は当て字です)になるのはいつなのでしょうか。
一般的には誕生日を迎えて一歳加わると認識されています。

誰でも疑問に思ったことがあるでしょう。
小学校に入学するのは4月2日から翌年の4月1日の間に7歳の誕生日を迎える子です。
なぜ4月1日から翌年の3月31日までではないのでしょう?

この疑問に答えるためには、まず人はいつ年をとるのかということから調べなくてはなりません。
今では検索エンジンを使えばいくつも資料に当たることができますが、ずいぶん昔に疑問を持ったとき六法全書をあちこちめくって答えに辿り着きました。

なお、法律の条文は引用が許されています。

■年をとるのはいつか?
 年齢計算ニ関スル法律
 (明治35年12月2日法律第50号)
  施行 明治35年12月22日
  (1) 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  (2) 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
  (3) 明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス

・生まれた日から年をとり始めると定められています。

□民法を参照します。
(暦による期間の計算)
 第143条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
    2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

ちょっと分かりにくいかもしれませんが、例えば平成19年3月から1年間と定めた場合は平成20年2月29日まで、平成20年3月から1年間と定めた場合は平成21年2月28日まで、ということになります。
ここまでは日常生活で特に疑問に思うことはありませんね。

ところで先に引用した 年齢計算ニ関スル法律 に
  (2) 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
とありますので、「生まれた日」すなわち「誕生日」の前日でその人の1年間(例えば0歳の期間が)終了することになります。

今年の2月29日にも赤ちゃんは生まれるでしょう。
その子は来年の2月28日で0歳の期間が終了することになります。
昨年の3月1日に生まれた子は今年の2月29日で、ということになります。

では平成14年4月1日生まれの子について考えてみましょう。
この子が6歳である期間が終了する、言い換えれば丸6年間生きたことになるのは
7歳の誕生日である
 平成21年4月1日 の前日の
 平成21年3月31日 が終了した時点
ということになります。
上記の法律では生まれた時間は考慮していないので、ある日の未明に生まれた子でもその日の深夜に生まれた子でも同じに扱われます。
 こうしてみると「前日」とあってもその日の午後11時59分から1分経過した時点で、つまり「応答日」が開始する直前で期間が満了すると考えなければなりません。
刑事事件の時効について話題になるときもそうです。
そうでないと実質1日少なくなってしまいますね。

ではこの子は満7歳を迎える平成21年の4月1日から小学校に通うことになるでしょうか?
この子が小学校にあがるのは
 平成20年4月1日
です。

この理由は次の法律にあたるとわかります。

 学校教育法
(昭和22年法律第26号)
 第二十二条 保護者〈中略〉は、子女の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校〈中略〉に就学させる義務を負う。〈後略〉

 第三十九条 保護者は、子女が小学校〈中略〉の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五才に達した日の属する学年の終わりまで、これを、中学校〈中略〉に就学させる義務を負う。

上の例に当てはめてみますと
 「満六歳に達した日」は「平成20年3月31日」ですから
その「翌日」は「平成20年4月1日」となり、
 「翌日以降における最初の学年の初め」

 「平成20年4月1日」から始まる新学期ということになります。


この子の家庭では「平成20年4月1日」にお友達を呼んで満6歳のお誕生会をするかもしれませんが、お友達のうちの何人かはもう一緒に小学校に通うことになりますが、何人かは次の年からで、一学年下ということになります。

上に書きました通り3月31日が終了する時点で満了すると考えるべきなのでしょうが、条文では「前日」とされ、時間は考慮しないのでこういうことになります。

水が凍る温度は0℃、氷が融ける温度も0℃と教わりました。
ある日の午後11時59分から1分を経過した時点と次の日の午前0時00分は日常生活では同じと認識しますが、オリンピックなどのように100分の1秒やもっと短い時間を問題にするとき、00分から00分00.01秒までの間には切り刻むことができない無限の小ささの時間が存在します。

法律でもどちらかに明確に分けなくてはなりません。
ある日が終了した瞬間、の次の瞬間にはもう年をとっているのです。

なお、ここで触れていない事柄については運用する側の解釈によって異なることがあります。
例えば婚姻届。女子は満16歳で婚姻できる年齢に達するとされていますが、実際に役所の窓口に16歳の誕生日の前日に婚姻届を提出しても受理されないでしょう。
選挙に関してはここで書きました通り誕生日が投票日の翌日であれば投票は可能なはずで、実際そのような例もあるようですが、不在者投票は多分できないでしょう。選挙人名簿に載るのか、また投票券が本当に送られて来るのかという事については実際に確かめていないので何とも言えません。

18歳の誕生日の前日に煙草を買いに行っても多分売ってくれないでしょうね。

法律上は一日早く年をとっているのですね。
何だか嬉しくありませんが、早く酒を飲みたい、煙草を吸いたいという人にとっては嬉しいのかもしれません。


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コメント 3

センニン

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(オリジナルコメント:2008-02-14 12:40)
by センニン (2010-04-03 07:58) 

ながぐつ

なるほど。しかしややこしいですね。
by ながぐつ (2011-04-01 23:11) 

センニン

ながぐつ さん、おはようございます。
実際にうまれた日と戸籍上の誕生日が異なる事もよくありますね。
4月1日にうまれても親が4月2日と届けるかもしれません。
小さな子供にとって一年の違いは大きいですからね。

ちなみに銀行などの定期預金は1年の定期預金なら預けた日の1年後の応答日が満期日です。
前日で期間が満了する事はこの記事に書いた通りですが、銀行の窓口で午後2時半に預けても朝9時に預けても満期日は同じです。
この場合の「満期日」は「払い出しが出来る日」です。
なので1年前の午後2時半に預けた場合でも満期日の朝9時には解約が可能です。
つまり満期日になった(満期日が始まった)時点で丸一年間預けたとしているわけです。

自動継続扱いにしているときは前営業日までに自動継続を止める手続きをしておかないとその満期日にまた新たに預けられたことになってしまいますね。
by センニン (2011-04-02 08:08) 

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